月面戦争:Round??

35.Round3 Side「アルテミス」

 現在の年月日及び時刻は、2027年8月1日。USAフロリダ時間、午前9時05分。

 月面戦争:Round3が終了して1時間と5分が経過していた。


 さて、月面戦争:Round3は大変恐縮だが、ダイジェストによる紹介となる。

 理由は、特に見どころのないからだ。誠に退屈な展開だったからだ。


 月面戦争:Round2で戦力が拮抗したことにより、両サイドの戦いは「開発エリア」を地道に広げる、誠に地味な展開となった。


 月面戦争:Round3では、両軍、一切交戦を行なわず、「開発エリア」拡大に費やされた。


 Side「かぐや姫」は、月面基地を取り囲む様に、周囲3キロ地点にビット機関をばらまいて、「開発エリア」を獲得した。


 対するSide「アルテミス」は、大量の四足歩行ロボットを投入し「開発エリア」に飛地が発生しない様、面のように範囲を押し広げた。


 獲得した「開発エリア」は、今後一ヶ月をかけて、路面整備を行う予定だ。


 重力を操ることができない、つまりは「浮く」ことができないSide「アルテミス」の兵器は、機動力でSide「かぐや姫」に大きく劣る。

 路面を整備することで、中距離ロケット砲、ならびに、核弾頭を搭載した長距離ミサイルを自由に配備可能な状況を作り上げること。

 つまりは、車両型兵器をスムーズに配置可能にするための、路面整備がなによりも優先順位が高いミッションだった。


 機動力に大きく劣るSide「アルテミス」は、間接攻撃による火力で、戦局に活路を見出す算段なのだ。


 ガシャコン。


 蘇我そがテンジと十流九とるく↑トルクは、自動販売機でジュースを買っていた。


 退屈で退屈で仕方がない、四足歩行型兵器による「開発エリア」拡張任務を終了し、退屈で退屈で退屈で仕方がない、ミッション終了後のブリーフィングが終了して、蘇我そがテンジは自然派ナチュラルドリンクを飲みながら、十流九とるくトルクは、あまっあまっのミルクコーヒーを飲みながら、のんび〜りと談笑を楽しんでいた。


「トルく↑、本当にもう、あっちの地球のハッキングは無理なの?」


「あぁ、前回であっちの地球にいった蘇我そがにバレてもうたからな。

 さすがに「ぼーっ」としとるあいつにも、ガッツリバレとった。

 でもって、さすがにバレたらしまいや。

 アリンコ一匹入れんくらい、完璧に穴塞ぐにきまっとる。あいつは、予想外のトラブルを一番嫌うからな。

 パニックになると、あたふたしてワタワタしてめっちゃポンコツになるの、あいつ自身が一番よう知っとるから」


 自然派ナチュラルドリンクを飲みながら、十流九とるくトルクの説明をだまって聞いていた蘇我そがテンジは、務めて冷静に回答した。


「さすがストーカー。大好きな娘のことをよーー〜ーく見ている」


 十流九とるくトルクは、ハッとした顔をして瞬く間に顔が真っ赤になった。耳まで真っ赤になった。

 そして、しばらく無口になると、一言だけつぶやいた。


「……うっさいわ」


 十流九とるくトルクは、まるで照れ隠しの様にあまっあまっのミルクコーヒーを一気に飲み干すと、空き缶を持ってダストボックスに行き「ポイッ」と投げ入れた。


 ガシャコン。


 空き缶にダンクシュートを決めた十流九とるくトルクは、おもむろに頭を抱えた。そして、アホみたいにわしゃわしゃと頭をかきむしった。

 そして、「はぁ」とため息をついて、蘇我そがテンジの方をふりむいた。


 まあ、まあまあなイケメンは、蘇我そがテンジに向かった話し始めた。


「めっちゃオモロイ思うとったから、今までずっとだまっとったんやけど、多分、これ以上だまっとっても、これ以上オモロイこと起こらん思うから、正直にしゃべるわ」


「ちょっとなにいってるか、わからない」


 蘇我そがテンジの冷静なツッコミをスルーして、十流九とるくトルクは、務めて真剣に語り始めた。


「ユウリちゃんの卜術ぼくじゅつがめっちゃ当たるのは、蘇我そが、そして多分僕が、この場所におるせいや。

 NASAのフィールドセンターのひとつ、アメリカのフロリダ州の「ケネディ宇宙センター」で、月面パイロットをやっとるせいや」


「ちょっとなにいってるか、わからない」


 蘇我そがテンジの冷静なツッコミをスルーして、十流九とるくトルクは、務めて真剣に語り続けた。


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 十流九とるくトルクの話を務めて真剣を聞き終えた蘇我そがテンジは、その日のうちに「ケネディ宇宙センター」に退所願いをだした。

 十流九とるくトルクも後を追う様に「ケネディ宇宙センター」に退所願いをだした。

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