30.「アルテミス」は王子様だからだ。by テンジ

 こんにちは、蘇我そがテンジです。

 オレが敬語が苦手です。でも今、敬語で話しています。敬語で話している理由は、今からとても苦手なことを話すからです。恋バナを話すからです。

 オレの大好きなユウリのことを話すからです。

 恋しく愛しい、あっちの地球にいる遊梨ゆうりユウリのことを話すからです。


 あと、話がちょとややこしくなるので、今からしばらく自分の事をワタシと言わせてください。自分の事を一時的にオレワタシに替えさせてください。


 なぜなら今から話すのは、ワタシがあっちの地球にいた頃の話だからです。

 今から話すのは、女の子と、女の子の話だからです。


 ワタシは、ユウリと幼なじみです。ユウリの家は代々続く卜術ぼくじゅつの名家で、ワタシはユウリと私立の幼稚舎で出会いました。

 幼稚舎から大学まで一貫教育が信条の、お坊ちゃま、お嬢さまだらけの学校の幼稚舎で出会いました。

 ワタシがそんな学校に通っていたのは、ワタシのパパが世界的に有名な秘術物理ひじゅつぶつり学者だったからです。


 ユウリはちょっと変わっていて、ワタシもに変わっていたから、すぐに仲良しになりました。家はお互い、結構遠いんだけど、よくお互いの家に行って遊んでいました。


 ワタシとユウリは、性格は変わっていたけど、学校の成績はでした。ウソついた。ユウリはで、ワタシは「永遠の0」でした。


 ユウリは中学に上がる頃、突然じゃなくなりました。突然、卜術ぼくじゅつの才能に目覚めました。バストが……おっぱいが大きくなると、突然、卜術ぼくじゅつの才能に目覚めました。


 ワタシは、学校のお勉強は、占術せんじゅつ意外「永遠の0」なんだけど、運動はめっちゃ得意でした。背はめっちゃ低かったけど、足はクラスで一番早かったし、大抵の運動はクラスで一番でした。負ける事なんて絶対にありませんでした。


 ワタシは、運動で唯一挫折したのは、バスケでした。ワタシは背がとってもちぃくて、クラスで一番背がちぃちゃくて、バストサイズもずーっと「永遠の0」でした。

 ……傷ついた。今ワタシは、自分で言って自分をガッツリ傷つけてしまいました。言わなきゃよかった。


 そんなことは、まあ、どうでもいいとして、ワタシはクラスで背が一番ちぃちゃくて、中学になったら、その差が他の子たちといっそう大きくなりました。

 バスケ部に入部して、それを痛感しました。


 届かない。


 ワタシのちぃちゃい手は、バスケットボールに届きませんでした。

 首を「くいっ」とあげて、ちぃちゃい手をどんだけ伸ばしても、ワタシのちぃちゃい手は、バスケットボールに届きませんでいた。


 ワタシは初めて挫折を味わいました。ガッツリ挫折を味わいました。


 そんなワタシを救ってくれたのが、ユウリです。

 ワタシにバストを……「たゆんたゆん」のおっぱいを触らせながら、両手で揉ませながら「ずばり」と行ってきました。


「そもそもバスケは5人おらんとできん!」


と、ワタシが全く気付いていなかった「盲点」を教えてくれました。


 盲点に気づいたワタシは、ポジションをPG《ポイントガード》に変更しました。本当は桜木花道さくらぎはなみちになりたかったけど、宮城リョータになりました。つまりゲームメイクとフェイクを極めました。

 つまり、目立つのを諦めて、縁の下の力持ちになりました。

 結果、ワタシは中学三年生の時に全国大会で優勝してMVPになりました。


 ユウリは恩人です。毎日いっぱい、ワタシにおっぱいを触らせてくれて、「たゆんのたゆん」と触らせてくれて、ワタシの灰汁あくを取り除いてくれて、本当のワタシの才覚を気づかせてくれた恩人です。

 ワタシの本当の才覚が、他人がはできないことを、ワタシが代わりにやることなんだと教えてくてました。

 まるでロボットみたいに、忠実に実行することだと教えてくれました。


 理由はワタシが全く動揺しないからです。

 理由はワタシが全く混乱しないからです。

 理由はワタシが全く狼狽ろうばいしないからです。

 理由はワタシが全く緊張しないからです。


 それが、ユウリが教えてくれた、ワタシのたったひとつだけの才覚だからと気づかせてくれたからです。


 ユウリとは幼稚園からの幼なじみです。そして、大恩人です。


 ユウリとは幼稚園のことからずっと親友です。ユウリは、悩めるワタシにおっぱいを触らせてくてて、ワタシに足らない「ひのと」を貸してくれた恩人です。

 バスケが上手にできなかったのは、ワタシの背がちぃちゃいからだとしょーもない理由をつけて、クサクサ腐ってワタシの心に大量に溜まってしまっていた灰汁あくをスッカリ取り除いて、ワタシの心をスッキリさせてくれた大恩人です。


 だからユウリは、ワタシの一番大事な人で、ワタシが……ス、スキで、あ、愛している人なんです。

 ワタシは、いつもニコニココロコロ笑っていた、ユウリは可愛くて愛おしくて仕方が無いんです。


 ワタシは会いたい!

 ユウリに会いたい!


 あっちの地球に行けるようになるのは30年後らしいけど……本当は、本当は今すぐにでもユウリに会いたい!

 今すぐにでもユウリと会って「ぎゅ!」としたい。「ぎゅ!」って抱きしめたい。


 そう思っています。


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 オレの全く要領を得ない、とめどもない恋バナを、キーボードを一切触らずに、オレの目を見て真剣に、無言で一切喋らずに、ちょっとカッコよく聞いていたトルく↑は、一言だけ言った。


「……悪く無いだろう」


 オレは言った。

 ちょっとカッコいいトルクを見ながら言った。


「ちょっとなにいってるか、わからない」

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