第15話 十三匹目
○○さん宅が取り壊されて以降、叔父の家庭菜園だけでなく他のご家庭にも猫が出入りして悪さをするようになったらしい。住民の中には猫を保護して去勢や避妊手術をして家猫にするご家庭やTNRと呼ばれる地域猫にする人もいたらしい。叔父は相変わらず捕まえては捨てるを繰り返していたようだ。
※Trap(捕獲)、Neuter(不妊手術)、Return(元の場所に戻す)の頭文字を取ってTNRだそうです。地域猫活動とも呼ばれています。去勢・避妊の目印に耳をカットすることが多く、カットされた耳の形が桜の花びらに似ているので『サクラ猫』とも呼ばれます。
―――隣組で猫の扱いについて話になった。飼うなら家の中で、避妊と去勢は必ずするとルールが決められた。野良猫についてはどうしようもないので自然と数が減るのを待つことになった。自然に減る訳なんか無いのに―――
○○さんは餌やりを止めたが(餌を買う金を金融業者が巻き上げたらしい)野良猫はまだまだ数多くいた。
―――猫は十三匹目、最近は若い猫が多くかかる様になった。栄養状態が良くないのは○○さんが餌やりを止めたからだろう。全体的に猫の寿命が短くなっている様に思う。全体的に小柄な猫が増えて長毛の猫が減った。今回捕まえた猫は耳に切欠きが無い。間違いなく野良猫だ―――
○○さんが居なくなって栄養状態が悪くなったからか小柄な猫が多くなったようだ。長毛種は皮膚病のリスクが大きいから減ったのだろう。
―――ご近所の奥さんたちは「野良猫が減ったみたいね」と言っている。確かにこの辺りの野良猫は減った―――
去勢や避妊をした猫は耳に切欠きがある。猫を捕まえては捨てる叔父だが切欠きのある猫は「どうせすぐに死ぬから」と遠くへ捨てに行く事は無かったらしい。多分だが隣組の誰かがウッカリ脱走させてしまった可能性を否定できないからだと思う。
―――今回は○○浜まで捨てに行った。砂浜だから思う存分トイレ代わりにするがよい。生きて岸にたどり着いたならな―――
叔父は猫の首根っこをつかんでハンマー投げの如く振り回し、気合と共に○○浜から猫を投げて捨てた。猫のその後は記されていなかった。
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