数か月後

第12話 十匹目

 叔父が捕まえた九匹目の猫は地域のボス猫だったらしく、しばらくは糞尿被害、特にマーキングは無かったようだ。だが平和な日々は長く続かなかったようで、猫捨て日記には再び捕獲器をセットして猫を捕まえては捨てるを繰り返す叔父の様子が記録されていた。


―――○○さんは相変わらず野良猫に餌を与えている。再び新しい子猫が生まれたのか、それとも余所から来たのか我が家の家庭菜園は荒らされ、物置の柱はひっかき傷がつき始めた―――


 春になり雌猫を探してうろつく雄猫がテリトリーを広げたのだろう、叔父の家庭菜園やガレージに再び猫が悪さをし始めたようだ。


―――猫が居るのは間違いないのだが、どうも今までと別のところを通っている様だ。捕獲器を置くポイントを変えてみる―――


 何回か捕獲器を置く場所を変えた結果、家庭菜園ではなくて農機具を置いてある物置とガレージの間へ仕掛けることにしたらしい。ポイントを変えた数日後、十匹目の猫が捕獲器にかかったようだ。


―――今回は体中に怪我をした白猫を捕まえた。なかなか悪そうな面構えをしている。恐らく数か月前に捕まえた凶暴な黒猫と縄張り争いをしていた猫に違いない。怪我をしているので―――


 怪我をした猫は保護するのかな?


―――市内の漁港へ捨ててきた―――


 結局捨てるんかい、捨てへんと思ったら捨てるんかい、おい。


―――今回は猫の十匹目、イタチやタヌキ、そしてハクビシンを含めると通算十五匹目。この捕獲器は五千円くらいだったから完璧に元は取れたと思う―――


「捕まえも捕まえたり十五匹か、なんまんだぶなんまんだぶ」


 イタチは臭いから近所にある橋の上から川に捨て、ハクビシンは山に捨てるのが叔父の定番だったらしい。


―――縄張り争いで疲れていたのだろう、よろよろとした足取りで逃げていった。漁港には多くの猫がいる。余所者が生き残れるだろうか―――


 何が叔父をそこまで猫捨てに駆り立てたのか、俺にはわからない。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る