第2話 捕獲器
『ネコ捨て』と書かれたノートには叔父がネコを捕まえては遠くへ捨てに行った様子や捨てた場所、放したときの様子が事細かに書かれていた。そういえば叔父が元気だったころ、猫に家庭菜園や庭へ糞をされたり壁や軽トラックにマーキングをされて困っていると相談されたことが有る。ところが、しばらくして何も言わなくなった。
―――もう我慢の限界。捕獲器を買ってきた―――
野良猫は病気や怪我で短命な個体が多い。猫エイズや白血病が流行れば防ぐ手立てはない。死んだかどこかへ行ったのだろうと思っていたのだが、叔父が捕まえては捨てに行っていたのも理由だろう。
「なるほど、この捕獲器で捕まえてたのか」
遺品の中にフックに取り付けたエサへ食いつくと蓋が閉まって出られなくなるタイプの害獣捕獲器が有った。錆びて曲がっていたのは放置してあったのが原因ではないのだろう。閉じ込められた猫が出ようと必死になって噛み付き爪を立てて傷をつけたのが錆びの原因ではないかと思う。
「叔父さんはキレると怖かったからなぁ」
叔父は怒ると怖い人だった。静かに怒り狂い行動する男だった。騒がずに淡々と行動する人だったから、家族に知られず猫を捕まえては捨てていたのだろう。記録には猫以外にイタチやタヌキ、ハクビシンを捨てに行った記録もある。
――平成〇年、我が家の家庭菜園を掘り起こして糞をする害獣が居る。せっかくできた白菜に小便をかけられてしまった。軽トラのタイヤにも小便のあとが有る。役所に言っても何ともならないなら仕方がない。仕方が無いのでホームセンターで害獣捕獲器を買ってきた。早速今夜から仕掛けようと思う。餌は何が良いだろう、猫は魚が好きだから竹輪でも吊っておこうか――
ここから数年間、叔父と猫との戦いが続くのだった。
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