第27話 お引越し? 〇

 第27話 お引越し? 〇

 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 ー女勇者ー


「地竜を一撃か……相変わらず、すさまじいな」


「……ねぇ、これ見て」


「ん? これは!! 地壁に穴が……『エクスカリバー』そこまでの力をもう……」


「私じゃないわ」


「え!? じゃあ、この穴は何が……」


「わからない。でも地壁の下ってものすごい資源が埋まってるんでしょ?」


「ああ」


「この前見つけた純魔石……それに、この地竜が何度も地壁に突撃してたのって……」


「何者かが、地竜を罠にはめた可能性があると?」


「ただの妄想だけどね」


 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


 軽い気持ちで始めた探検だが、ひどい目に遭った。

 ドラゴンに吹き飛ばされて、追いかけまわされて、本当に死ぬかと思った。

 でも、やってよかったと思う。


 圧倒的な力、そしてその力の終わりを見れたのだから。

 この世界に絶対はないと、強制的に理解させてくれたから。


「キュウ!!」


「ロティス、ただいま」


 結局は予定通り日帰りの探索だったのに、めちゃくちゃ久しぶりに帰ってきたような気がする。

 それだけ濃密な時間だった。


 すぐにでも休みたいのはやまやまだが、お引越しの準備をしなくては。

 地竜が掘れていたなかった深度、ひとまずはそれより下に住居を移したい。

 というわけで、


「引っ越しだーー!!」


「キュウ?」


 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


 結果から言えば、引っ越しは失敗した。

 確かにあそこは安全なのだが、俺以外のモグラが穴を掘れない。

 それに、全くと言っていいほど餌がない。


 俺以外のモグラが穴を掘れないのは、百歩譲っていいとしよう。

 だが、餌がないのはいただけない。


 モグラは結構大食漢だ。

 ここからミミズをはじめとした餌の生息域までは、かなりの距離がある。

 餌を食べに上に上り、帰ってきたらすぐまた上に上り……


 これじゃ意味がないどころか、余計な負担をかけているだけだ。


 というわけで、結局家は元の場所に戻ってしまった。


 まぁ、ドラゴンは死んだし直近の危機は去ったからいいが。

 とはいえ何か対策を考えないと、まずい気がする。


 あのドラゴンを殺した人間もそうだが、ドラゴンが死んだということは、ここが縄張りじゃなくなったということでもある。

 すぐに魔物が来ることはないだろうが、それでも徐々に移り住んでくることは明らかだ。


 となれば、今までのように地下世界の支配者でいることも難しくなるだろう。


「キュウ!」


「どうしたロティス?」


「キュウ、キュウ」


 どうやらロティスはお怒りのご様子。

 無駄骨を折らせやがってということらしい。

 ロティスの堕落が進んでる……


 いつかほんとに由来通り429になるのではなかろうか。

 ちょっと心配だ。


 ……そういえば、ドラゴンの死体あの後どうなった?

 貴重で高価な素材の山だ。

 多分持って帰ったとは思うが……かなり巨大だった。


 もしかして、放置されていたりしないだろうか?


 あれだけ巨大な死体、しかもドラゴンだ魔力もたっぷり含んでいるのだろう。

 強力な魔物をおびき寄せたりしないだろうか?


 もしかしたら、ドラゴンゾンビになって甦る可能性もある。


 ……念のため見に行こう。


 魔物がいずれ移り住んでくるのは仕方がないが、できれば来てほしくないというのが本音だ。

 一分一秒でも遅らせられるなら、それに越したことはない。


 ……やっぱり、放置されてる。


 正確には放置じゃないのか?

 前足と後ろ足の爪と、しっぽの先がなくなっている。

 そこが、ドラゴンの中でもとびっきり高い素材ということだろうか?


 人が後から来て回収するという可能性もあるが、魔物のことを考えると一刻も早く片付けた方がいい気がする。


 ザク、


 よし、掘れる。

 問題なく掘れるし、急いで処分してしまおう。

 強力な存在が寄ってくる前に。


 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 少しでも続きが気になる、面白いと思っていただけましたら『ブックマーク』『評価』よろしくお願いします。


 ーー次話予告ーー

『第28話 土竜、土竜、進化 ※』

 明日更新

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る