第26話 弱肉強食 〇

 第26話 弱肉強食 〇

 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 ー女勇者ー


「やっと来たわね、地竜の目撃証言」


「この前のは、ガセネタだったがな」


「明らかにテンション下げちゃって、来たくなければ来なくてもいいのよ」


「そういうわけにはいかんさ、任務だからな」


「任務ね。そんなものに命を懸けるなんて、理解できないわ」


「承認欲求のためだけに命を懸ける、お前の方が理解できん」


「あら、私には勇者としての使命があるもの。人の害となる地竜を倒して、人類の繁栄のために」


「立派なことだ。酔っぱらって店主に襲い掛かった女とは思えん」


「あれは店主が悪いのよ。媚薬なんて入れるから」


「お前には効かんだろ」


「いや、誘ってるって分かったらねぇ」


「はぁ……」


「それにしても、いないわねぇ」


「やっぱまたがセだったんじゃねぇか? そもそも、純魔石が落ちてた時点で、最近はこの縄張りには来てないって証拠だし。力づくで地中をひっくり返してでも魔石を求める地竜が、あの純度の魔石を見逃すとは思えん」


「ねぇ、あっち……」


「ん? どうした。……これはまた、今回の情報は本物か」


「地面がえぐれてるわね。何かと戦ったのかしら?」


「ちょっと待て、もっと慎重に」


「え? ただの痕跡に何を」


「あれは……多分まだあそこにいる」


「え??」


 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


「……グゥルルル」


 ……ちょい待て


 ……なんだ、ただの寝言かよ。

 驚かせやがって。

 穴にまで、戻っちゃったじゃないか。


「……」


 !?

 人の声が聞こえる。

 なんて言ってるのかはわからないけど、とにかく声が聞こえる。


 これ、地上か。

 普通なら聞こえない距離だが、反響してこっちまで届いてるのか。


 もしかしなくてもこれ……


「グゥオォォ!!」


 やっぱり、起きやがった!!


 眠り妨げたの、別に俺じゃないっすからね。

 あの人間の仕業であって、俺に責任なんてないですからね。

 だから怒るならあの人間に……


 ドゴォォッ!!


 地面が激しく揺れる。


「やっぱりっすか!?」


 一目散に……ってあれ?


 気配が近づいていない。

 ……地面が削れてない?


 ドゴォォッ!!


 地面が激しく揺れるが、揺れるだけだ。

 もしかしてこいつ、これ以上掘り進めないのでは?


 まぁだからと言って、俺からできることは何もないんだが。

 安全圏があると知れたのはありがたい。

 もちろんこいつが無理なだけで、ほかの個体なら突破してくる可能性もあるが。

 それでもいい収穫だ。


 ひとまず帰って、家の場所でも移そうか。

 ……いや、こいつがずっと追ってくるなら、結局帰れないじゃん。


 どうしよう。


 キィィーーン!!!!


 突然甲高い金属音が当たりに響き渡り、視界が真っ白になった。


 今度はなんだ!?

 地竜が魔法でも使ったのか?


 スキルが発動したのだろう、真っ白の中でも視界が戻った。

 穴の入り口、地竜のいる方向から強烈な光が入ってきているらしい。


「こんなものかしらね?」


 人の声?

 恐る恐る穴から顔を出すと、そこには……


 首から上が消滅したかのようになくなったドラゴン。

 そして、まばゆいばかりに光り輝く剣を片手に笑う少女。


 あの、強大な気配を持つドラゴンが一瞬で……

 というか、あいつ。

 あの時の人間!!


 ひとまず、俺のことを追いかけまわす迷惑な存在はいなくなったし、あの人間も俺には気づいてないし。

 家に帰りますか。


 ……異世界、怖いとこだな。


 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 ー女勇者ー


「グゥオォォ!!」


「ほら、お前のせいで起きてしまったみたいだぞ」


「すごい声、空気が震えてるわね」


「聞いてます?」


「はいはい。でも地竜なんであんな穴の底に」


「よくあることだ。ここまで深いのは珍しいが、これは……地壁にまで届いてるかもしれないな」


 ドゴォォッ!!


「あれ、地壁に頭ぶつけて何やってるのかしら?」


「さぁ。もしかしたら、地壁下の魔石でも感知したのかもな」


 ドゴォォッ!!


「なにはともあれ、隙あり。答えて『エクスカリバー』」


「眩し!! それ使うときは事前に言えと……」


「とうっ!」


 キィィーーン!!!!


 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 少しでも続きが気になる、面白いと思っていただけましたら『ブックマーク』『評価』よろしくお願いします。


 ーー次話予告ーー

『第27話 お引越し? 〇』

 明日更新

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る