第25話 楽園の答え

 第25話 楽園の答え

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「ふぅ、ここまでくれば大丈夫だろうか?」


 真下に掘り続けることしばらく、ドラゴンの声も聞こえなくなり振動も感じなくなった。


 あのドラゴンは、何度もしつこく地面に激突しては雄たけびを上げていた。

 間違いなく、かなりの地面がえぐれたことだろう。


 まさか、本当に俺を狙っていたのだろうか?

 仮に俺がターゲットだったとして、なぜそうなったのか全く心当たりがない。

 本当になんでだ?


 もしくはまぐれ?

 まぐれで俺のいた木を突き飛ばし、俺の潜った地面に何度も突進し……

 んーー、どっちもなぁ。

 まぁ、とりあえず逃げきれたしいったん良しとしよう。


 それにしても、そうか……

 ここドラゴンの縄張りだったのか。


 人がめったに現れないのにも納得だ。

 あんな化け物の縄張り、自ら入ろうとするのなんて自殺願望のあるものぐらいだろう。


 奇しくも、転生直後の直感は当たってたのか。

 この場所は、人の立ち入ることのできない竜の縄張り。

 違ったことといえば、俺が竜じゃなかったことぐらいだ。


 地中でモグラが幅を利かせてた時点で、考察しておくべきだったか。

 ここが、強力な魔物の縄張りである可能性を。

 異世界なら、地中性の魔物も定番だしな。


 ……ちょっと待て。

 地中ですら魔物がいないのは、おかしくないか?

 それじゃまるで、あのドラゴンが地中を……


 でも、もう音も振動もないし……


 危険だ。

 危険だが、これは調べないとまずいことになる可能性がある。


 もしあのドラゴンが地中に潜ることが可能で、俺を狙っているのだとしたら……


 最大限神経をとがらせ、ゆっくりと掘ってきた道を戻る。


 かなり戻ったところで、遠くにうっすらとしかし一度感じたら忘れられない強烈な気配を感じた。

 間違いない、あのドラゴンだ。


 場所は地上よりかなり低い。

 ……間違いない、あのドラゴンかなり地下まで潜れるんだ!!

 俺より掘るスピードは確実に遅いが、もしかしたらロティスぐらいのスピードはあるかもしれない。

 かなり低い場所に、普段ロティスやモグラたちがいる深度ぐらいにいる。

 ……地下だからと言って、安心できるわけじゃないらしい。


 今は動きがない。

 疲れて眠ったのだろうか?


 これはかなりの危機だ。

 少し様子を見に行こう。

 大丈夫掘るスピードは確実に俺の方が早い、いざとなったら逃げられる。


 少し上に、ドラゴンがいる。


 動いてはいない、だがそのオーラに圧倒される。

 これがドラゴン、魔物たちの頂点に君臨する存在か。

 落ち着いて観察できるのは、これが初めてだ。


 そーと、顔を出す。


 鎧のような皮膚を身にまとい、かなりがっしりとした体格だ。

 茶色いし、ここまで潜ってきたことを考えると、もしかしてこいつも土竜だったりする?


 上を見上げる。


 こんな地下深くなのに、空が見える。

 掘ってきたというより、何度もぶつかり力づくで大地に穴をあけたということだろうか?

 巨大な穴だ。

 それが、ボーリングの後のようにまっすぐ伸びている。


 なんて力任せで、効率の悪い潜り方だ。


 だが、その方法でここまでくるというのが、ドラゴンという種族の異次元さをそのまま表しているといえる。

 本当に、なんでこんな巨体で俺のことなんか狙ったんだろうか?

 腹の足しにもならないだろうに。


 でも、そうか。

 これまで俺が勘違いしていただけで、地下も決して安全な場所じゃなかったんだな。


 このドラゴンが狙ったのが俺だったから、しかも一人でいた時だったからよかったものの。

 もしロティスたちと一緒にいるときに襲われでもしたら……


 しかし、縄張りの外もどうせ危険だろうし。

 八方ふさがりか。


「……グゥルルル」


 ……ちょい待て


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 ーー次話予告ーー

『第26話 弱肉強食 〇』

 明日更新

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