八 阿鼻地獄

 そして、次はいよいよ最後の第八階層、〝阿鼻あび地獄〟だ……。


「――阿鼻地獄はここからさらに地の底深くにあってな。訪れるには人間界でいうところの〝スカイダイビング〟ってやつをしなくちゃならねえ」


「どうだ? 見学に行くか?」


 真っ暗で底の見えぬ切り立った断崖絶壁の上に立ち、牛頭馬頭さんがそう説明をする。


 今までの罪+父母・聖者殺しという最低最悪の罪人が落とされる地獄に反して、そこへの交通手段はそんなアトラクションであるらしい。


「え、スカイダイビングですか!? なんか楽しそう!」


 以前より、一生に一度はやってみたいなあ…なんて思っていたわたしは、興味を惹かれて声を弾ませるのであったが……。


「ただし、下に着くまで自由落下速度で2000年かかるけどな。それでもいいって言うんならだけど、やってみるか?」


「誰がやるかいっ!」


 それ聞いたら〝スカイダイビング〟とぜんぜんちゃうその補足説明に、わたしは思わずツッコミの叫びを底なしの渓谷に響き渡らせた。


                          (冥界の服役所 了)

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冥界の服役所 平中なごん @HiranakaNagon

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