☆5R》対話

 ここは、ヒスイ村の空き家の中。あれからタツキとグロウディスは、しばらく村の中を探索した。その後、一晩すごすのにちょうどいい空き家を見つける。


 なんとか座れるようなボロボロの椅子に腰掛け、ニ人は向かい合わせで話をしていた。


「それにしても、ここまでひどくなってたとはな。確かに昔も、のどかで自然が豊かだった。だが、こんなに荒れてはいなかったはずだ」


「そうか。……昨日ここに来た時に、この村に何があったのかと不思議に思った。見た感じ、魔獣や盗賊の類いに荒らされたようでもない」


「ああ。確かに変だ。それにどの家も、キレイに片付いていて何もない」


 そう言うとタツキは、外のほうに視線を向ける。


「なあ、タツキ。この村の事も気になる。だがその前に、これからどう行動するか決めないか」


「そうだな。俺は、北の辺境の地にあるオパールに行こうと思っている」


 タツキがそう言うと、グロウディスは驚き身を乗りだした。


「おい! 何を考えている? 下手に近づけば、ただじゃすまない」


「ああ、そうだろうな。さすがに、それぞれの国のヤツらが黙っているわけがねぇ。だが、どうしてもオパールに行き確認したいことがあるんだ」


「それに、それだけじゃすまないだろう。……ん? ちょっと待て! 王の許可が降りれば、立ち入る事が出来るかもしれん」


「それは本当か? もしそれが可能ならありがたい。だが、どうやって許可をもらうつもりだ?」


 タツキがそう聞き返すとグロウディスは、すこし考えたあと再び話し始める。


「王か上層部に掛け合い許可をもらう。ただこれはあくまでも、俺の肩書がまだ通用した場合だがな」


「それっておまえが王と直接、話せるぐらいの役職についてたって事なのか?」


「ああ。つい最近までは、王直属の聖騎士たちの頂点にいた。だから直接とまではいかないが。上を通せば、王と拝謁することが出来る」


「それが可能なら、許可がもらえる。だが、今のグロウディスの立場だと五分五分かそれ以下かもしれねぇってわけか」


「ああ、そうなる。……話の途中だが。そろそろ、何か食べないか?」


 そう言いながらグロウディスは、持って来ていた携帯用の加工済みの食べ物と飲み物をバッグから出し並べる。


「確かに、腹が減ってきたな」


 そしてタツキとグロウディスは、テーブルに並べられた食べ物を均等に分けると、食べながら今後の行動について話し始めた。

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