第二章 ゴールデンウィーク

第10話 練習試合 VS海原高校 

 



 ゴールデンウィーク初日はいつもの通り、量より質のハードな練習だった。


 そして2日目。


 俺は今、駅にいる。


 現在時刻は6:57。集合時間は7:10である。


 海原うなばら高校と、泉浦いずみうら高校との練習試合に向かうためだ。

 会場は海原高校。電車で20分程度かけて行く。


 駅には俺の他に、河田主将と筒井先輩が到着している。


「おいーっす」

「おはようございます」


 たった今、植原先輩と谷口先輩が到着した。


「おはようございます」


「あ、切符買わないと」


 切符は各自で事前に買え、が暗黙のルールだ。

 チームメイトを待たせるわけにはいかないしな。

 そういうわけで、切符を買うか、ICカードを用意するか、定期券を使うか、という選択肢がある。

 植原先輩は切符を買うようだ。


「海原高校前までって何円?」

 植原先輩が河田先輩に聞いている。


「240円」

「往復で買った方がいい?」

「できればICカードがいい」

「いや、今から買う切符の話」

「定期券ー」

「聞いてるか?」

「回数券でも」

「質問に答えるんだ河田」

 ぐりぐりぐりぐり

「いででででででで!!!」

「こーたーえーろー」

「お、往復、の、方がいい」

「よし」


 先輩たちがそんなことをしている間に他の先輩たちや同級生、マネージャー、監督、顧問の先生が続々と到着し、全員が揃ったところで俺たちは改札を通り、ホームへ向かった。


「間違っても特急や快速には乗るなよー」

 顧問の先生が言っている。


「電車来た!伊織、乗るぞ!」

 武田が言っているんだが、

「バカヤロー。それ特急!」

「え?」

「はあー。言ってたそばから」


 そんな会話を繰り広げながら、俺たちが乗る急行電車を待つ。急行なら海原高校前に止まるが、特急や快速は止まらないのだ。なのに……。


「だから、乗るなって!!」

「え?」


 武田は全く理解しようとせず、来ている特急に乗ろうとするのだった。

 止めるのが大変だ。


 走行しているうちに、急行が来たので、素早く乗り込む。


 ここからは20分間ほど急行に乗るのだが、


「伊織、降りる?」

「違う!!」


「伊織、この駅?」

「だから、違うって。海原高校前って駅だ!」


「今度こそ!ここ?」

「はぁー」


 途中で停車するたびに、降りようとするので、ホームの時と同じように止めるのに必死だった。


『まもなくー、海原高校前ー。海原高校前ー』


「ここだな?この駅だな伊織?」

「そーだよ」


「降りるぞー」

 監督が呼びかける。


 素早く電車から降り、駅から出て、しばらく歩き海原高校に着いた。


「こんにちはー」


「「「こんにちは!」」」


 海原高校のキャプテンが迎えてくれた。


「俺は輪島わじま 陽輔ようすけって言います。本日はよろしくお願いします」


「「「よろしくお願いします!」」」


 うぇー。背高いなぁー。何食べたらそんなになるんだ?


 190は超えてると思う。


 すごいなぁ。


「控え室に案内します」


 俺たちは、体育館の2階の控え室に通された。


「荷物置いたらさっさと用意してアップするぞー」


「「「はい」」」


 河田先輩が指示し、俺たちはテキパキと準備を進めていく。


 バッシュを履いたり、水分補給をしておいたりして、準備を済ませ、1階に降りる。


 そして、アップが始まった。


 ***


 一回戦は、海原高校とだ。

 海原高校は綺麗な青のラインが入った白のユニフォーム。

 対してうちのチームは黒地に水色といった結構珍しい(?)ユニフォーム。

 俺は34番をもらった。人数が多いからだ。なんせ先輩たちで33人いるからな。まあ、それは置いといて。

 ちなみにこのユニフォームは正式なものではない。色は同じだが、学校からの貸し出しの上に、番号は入部順となっている。




 最初に三年の試合だ。

 今、試合が始まった。

 俺たち一、二年も声を出して応援する。


 ジャンプボールは相手の輪島が捕った。

 やはり身長は大きかったようだ。


 そのまま海原高校側が流れに乗り、第1Qは川島15ー23海原で終わった。


 第2Qは、川島高校の方がいつもの調子を取り戻し、江川先輩のスリーがよく決まったこともあって、逆転し、川島36ー31海原で終わった。


 この辺からみんな声が枯れてきた。


 第3Qもそのまま流れに乗り、控えである他の三年や二年も出て、どんどん点差を開けていく。結局、川島52ー43海原となった。


 第4Qでは、相手のシューティングガード久保が入り出し、点差が縮まった。

 すると、


「伊織、いくぞ」


 俺が起用された。

 まじか!やったぜ!


「うす」

 なるべく落ち着いた感じで返事。


 いくぞっ!!


 俺は積極的に動き回って、ボールを受け取る。そのままスリーポイントシュートを打つ。


 スパンッ!


「いよっしゃ!!」


「ナイッシュー!!」


 俺は出してもらえた5分で、計4本のスリーポイントシュートと、1本のミドルシュート、1本のフリースローを決め、15得点をあげ、最終スコアは川島75ー55海原となった。


「「「ありがとうございました」」」

 挨拶を済ませ、ベンチへ。


 次は二年の試合だ。


 こちらは終始流れを掴んでおり、第1〜4Qまで得点を重ね続け川島65ー48海原となって、勝利した。


 そして、ついに一年の試合だ。

 スタメンは俺(SG)、武田(SF)、小林(C)、小山(PG)、村山(PF)だ。


 ジャンプボールは小林が担当する。


 小林は見事ボールを取ってくれた。小山にボールを回し、攻め始める。


 素早くパスを回していく。


 ローポストにいた小林にボールが回る。


 小林は力強く相手のディフェンスを押し込み、ゴール下のシュートを打った。

 しっかりゴールに入った。


「よしっ!」


 次はディフェンスだ。


 45度にいた、俺のマークマンにボールが渡った。


 シュッ


「え?!」


 スリーを打たれた。

 モーションが速かった。


「やべ」


 シュパッ


「取り返そうぜ」


 武田が言ってくれる。


「おう」


 なんか武田、コート入ったらしっかりした感じになるよな。

 事あるごとに俺の方にやって来るのを除けば。


 再び攻めていく。


「武田ッ」


「おう!」


 武田と、ディフェンダーの1対1。


 バンッ!


 この勝負を制したのは、武田だった。

 鋭いドライブでディフェンダーをあっという間に置き去りにしていく。


「いかせるかッ」


 ゴール下にいた相手のセンターがカバーに出たが、


 ひょいっ


 武田は軽々と躱して、そのままレイバックシュートを打った。


「おおおおお!!!!」


「次ー!!」


 木下先輩が声をかけてくれている。


 よし、ディフェンス!!


 また俺のマークマンにボールが渡った。


 うりゃっ


 俺はスティールを成功させ、再びゴールを目指す。

 そのままレイアップシュートを打った。


 川島6ー3海原


「この調子でいくぜ!!」


 村山が喝を入れてくれた。


「「「いくぜぇ!!」」」


 やる気に満ち溢れた俺たちは、その勢いで点を決め続け、守り続け、川島20ー9海原という結果になった。


 第2Qも同様で、俺のスリーも入り、武田も活躍して、点差をどんどん開けていく。

 第2Qのスコアは川島36ー21海原となった。


 第3Qでは、スタメンは交代し、メンバーが佐々木(PG)、渡辺(SG)、石田(SF)、後藤(PF)、夏川(C)となった。


「頑張れぇーーーー!!」


 声を思いっきり張り上げて、応援する。


 そのおかげかどうかはわからないが、第3Qの最後では川島54ー43海原となった。


 第4Qは、俺と武田がもう一度出してもらえるようだ。


 渡辺と石田と交代し、ゲームが再開された。


 俺は絶好調で、第4Qだけでも20点ほどをあげている。


 スパンッ


 たった今、23点目になった。


「やったっ!」


 そして、


 ビーーーーーー!


「整列」


「「「ありがとうございました」」」



 川島81ー59海原。


 全学年において、それぞれ勝利できた。


「やった!」


「勝てたっ!」


「そうやって喜ぶの後な。控室戻るぞー」


 主将のその一声で、控室へ。


 控室で軽食を取り、監督のアドバイス・お話を聞き、再び1階のフロアへ。


 さぁ、次は泉浦高校だ。

 がんばるぞ!


____________________________________


読んでくださりありがとうございます。


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