第14話 自由な人達
海偉さんの後ろに居る四人は、殺気含んだ鋭い目向けてくる。だから、怖いですって。やめてくださいよぉ。
と、とりあえず。逃げたい気持ちを抑え、妖裁級の人達を確認しないと。有名人で名前だけは聞いたことあると思うんだけど、人の名前覚えるの苦手なんなだよなぁ。頑張って覚えないと。
えっと、庭には両目を紫色の前髪で隠している小さい人や、背が大きくてガタイの良い、片目を怪我してしまっている人。
女性のような顔の──いや、あの人は女性か! 筋肉質だから男の人かと思った。胸が結構……、羨ましい。
最後は、微笑みながら周りの人達を観察しているような人。
何となくわかるし、見たこと──多分ないと思う。そもそも、妖裁級の人達と面識ある人の方が少ないんじゃないかな。いや、それはないか。有名人だもん。
あぁ、もう無理。この人達が少しでも動いたら私は殺される。はは、良い人生だったなぁ。欲を言えば、彼氏が欲しかった。
軽く現実逃避していると、体が小さく前髪で両目を隠している男性が話し出した。
「ニシシ、俺はいいぜ。どうせ見学程度でここにいるだけだし、間違えて殺しても俺が都合のいいように証拠隠滅してやるわ」
まだ子供なのか、声が男性にしては少し高い気がする。中性的なのかな。
その人の軍服は大きいのか、袖が長く手が見えない。下は袴みたいになっていて、長さは丁度よく革靴はしっかりと見えている。身長は140〜150ぐらいかな。本当に小さい。腰に差している刀が大きく見えるよ。
「私もどちらでも構わない。だが、殺しはやめろ。隊員同士の戦闘すら私は認めていない。それに、あのお方がなんというか分からない。この素敵な屋敷を汚してしまうのも考えものだ。それに、ほかにもっといい案が───」
「はいはい、あねっさん。これ以上は俺が耐えらんねぇー」
「なにっ?!」
あねっさんと呼ばれた人は先程、男と間違えてしまった筋肉質な女性だ。
女性なのに、なぜか軍服はスカートではなくズボン。武器は刀ではなく背中に背負っている両手剣だろうな。
ちなみに、途中で言葉を遮ったのは小さい人だ。耳に指を突っ込みながら面倒くさそうに言い放っている。仲良し??
「私は認めたくないねぇ。今すぐにでも血を抜いて浄化したいくらいだよ。そうだ!! 今すぐその女性を浄化して私達は解散しようか。それが一番いいと思うよ。ねぇ、そうしよう? 私が綺麗に血を抜いて浄化をするよ?」
目を輝かしながら言ってきたのは微笑みを絶やさない男性──って、聞き捨てならない言葉が聞こえたのですが!?
血を抜かないで浄化しないでください。一番優しく微笑んでいるのに言葉が鋭利な刃物のように鋭いです。心が傷つきました。
口元に右手を持っていき、ふふっと笑っている人の隊服は他の人達みたいにアレンジはしていない。彰一みたいにキチッと着こなしている。ボタンも上までしっかりと止めて、生真面目な人に見えてしまうなぁ。言葉は全然そんなことないけど。
隊服の上には黒い外套が羽織られており、その外套はお腹辺りまで長く、上半身を隠しているように見える。
顔は笑っているのに、この人が一番怖いかも。
というか、その男性の隣に居るすごく体の大きい人からの圧がすごすぎて、視線が自然とそちらにいってしまう。
何を言われてしまうのか。もう、何を言われてもショック受けないようにしないと。よし、来いよこらぁぁああ。
「…………」
────いや、何も言わないんかい!!
大きい人は何も口にしないで黙っている。なぜ。
その人の軍服には袖は無く、ズボンはボンタン? のようになっている。
靴は草履?? を履いており昔みたいな格好だ。
「自己紹介しないのですか?」
海偉さんが四人に聞いてくれたけど、誰も名前を名乗ろうとしてくれない。なんでですか。
「今回で関わるの最後だろうから、名乗る意味はないだろ。俺達のことは空気とでも思って戦っていいぞ。ニシシ」
小さい人が近くの大きな石に座り、何気なく言ってる。いや、自己紹介くらいしていただいても……。
────はぃ? 戦う?
私は戦うなど言っていませんが!? いや、確かに最初茉李さんがそんなこと言っていた気がするけど……。私は認めませんが!?!?
「確かにそうねぇ〜。それじゃ、まず彰一は……京夜。相手してあげてぇ〜」
茉李さんの言葉にいち早く反応したのは、大きな石に座っている小さな人。え、さっきの言葉はなんだったの? 見学とか言ってなかったっけ?
「はぁ?! なんでだよ!! 俺は見学するためだけに来たって今さっき言っただろ!! 相手をするのは違う人でいいじゃん!!」
やっぱり、茉李さんはあの小さい人を指名したらしいな。京夜と呼ばれた人が慌てて全否定してる。
「この人は基本拳銃タイプらしいわよぉ〜? 貴方と相性ぴったりじゃなぁ〜い」
人差し指を頬に持っていき、舌を少し出して可愛こぶっているよこの人……。
あの、茉李さん。そのような事しない方が可愛いかと思いますよ。
「気持ちわりぃなお前。はぁ、まぁ。拳銃使いか……。なら、いいか。ニシシッ。俺が相手してやるよ」
ピョンッっと石から飛び降りて、ゆっくりと彰一に近付いていく。
おぅ、身長差が大人と子供や。
「すいません、僕の名前は──」
「
手が見えていないから、なんだか萌え袖みたくなっている。それを口元に置いているから、普通に可愛く見えてしまったよ。
いくつなんだろうか。私より年下っぽい。
「ヒッ!?」
え、なんで今睨まれたの!? 私口に出してしまったとか!? 嘘嘘嘘嘘!!!!
「まぁまぁ。決まったわけだし、もう少し広い所に行きましょぉ〜?」
「それもそうだな」
あ、海偉さんのおかげで鋭い視線が離れてくれた。良かった……。
ん? 広いところって? って、うわ!! いきなり風。突風!? 何が起きたの!?
咄嗟に目を閉じちゃったから何が起きたのかわからない。開けるの怖いな。
おそるおそる開けてみると……え?
「えっ?! どどどどこに?!」
前にいたはずの六人がいなくなった!? どこに行ったの? 左右を見ても明神さんと彰一しかいないし……。まじで、どこ?
「────あ、あそこか」
明神さんは顎に手を当て少し考えたあと、何かを思い出したのか呟き、ゆっくりと歩き始めた。
いや、どこですか。
彰一と顔を見合せながらも、よく分からないため後ろを付いて行く。それしか今はできないし。
「妖裁級の人達って怖い人というより、変わった人達の集まりだね」
「天才とバカは紙一重」
私達の言葉はそのまま宙に舞って、消えてしまいました。
そういえば、結局は戦わないといけないんですね。はい。
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