第15話 実力
私は今どこに向かっているのか分からないけど、とりあえず明神さんから離れないように歩いてる。
「っ、ここ?」
「みたいだな、目的地」
大きな襖の前で明神さんが足を止めた。ここが、今回の目的地?
廊下にはいくつもの襖があったけど、私と頭三つ分以上も大きな襖は無かったなぁ。三人横に並んでも余裕で中に入れるくらいの大きさだ。
「この中で六人が待ってるはず」
「え、あの一瞬でここまで来たんですか?」
瞬きをした一瞬で、ここまでみんな来たってこと? 歩いて五分程度で近いっちゃ近いけど、まさか目にも止まらぬ早さでここまで来るなんて、さすが妖裁級の皆様。私は確実に無理です。
「とりあえず、中に入って」
あ、心の準備すらさせてくれないのですね。遠慮なく襖を開けられた。
中には言っていた通り、六人が待機してる。
「おせぇよてめぇら。俺を待たせるなんていい度胸じゃねぇの。ニシシ」
あ、中は妖雲堂の訓練場くらいの広さだ。でも、訓練場ではなさそう。道具とか何もないし。広いだけの部屋。
壁や床は木製で、広い空間の割には無駄なものは一切ない。ここは一体なんの部屋なのだろうか。
「おい! 俺を無視してんじゃねぇぞ!!」
小さい体でぴょんぴょんと飛び跳ねながら、幡羅さんが自分に興味を持たせそうとしてきた。
なんか、小さいだけで可愛いな。言葉使いは別にして。本当にこの人は強いのだろうか。
「おい、そこの女。俺が強いかどうか疑ってるだろ」
────ギクッ!!
幡羅さんが持っていた竹刀の
なんでわかったんだろう、読心術?
妖裁級の人って読心術も使えるの──ってそんなこと思ってるってバレたら私殺されるじゃん!!
「……まぁ、別にいいけどな。どう思ってようと。ニシシ」
「あれ、いいんですか?」
殺されるかもしれないと思ったから拍子抜け。
正直、何されてもいいように動けるよう待機していたんだけど。意味ないだろうけど、念の為。
「そんな話は良いからぁ〜、さっさと始めなさいよぉ〜」
幡羅さんの後ろに立っていた茉李さんが、不機嫌そうな顔を浮かべてる。
他の人達も苛立ちを見せていてとてつもなく怖い。
一人だけ笑顔の人もいるけど──いや、あれは殺意の籠った笑顔だな。関わらないでおこ。
「それでは失礼します。僕は拳銃を使ってもよろしいのですか?」
私の心中など一切気にせず、彰一は一歩前に出て確認した。
肝が据わってるというか、心臓に毛が生えているというか。この状況でよく冷静でいられるな。私なら絶対に無理。今も手が震えてるし。
「別に構わねぇよ、どーせ当たらねぇし。ニシシ」
「それは、やってみないと分からないと思います」
あ、ちょっと怒った。
今、私が立っている位置は彰一の真後ろ。だから表情を確認することは出来ないけど、冷静そうな口調で拳銃を二丁構え始めたのはわかる。
うん、普通に怒ってる。
「二丁拳銃か、悪くないな。相手が俺じゃなかったら結構強いんじゃねぇの?」
「誰が相手でも関係ありません」
そういえば、幡羅さんが腰に差していた刀がない。その代わりに竹刀を持っているな。それに対して彰一は本物の拳銃か。
流石の妖裁級でも、竹刀で本物の拳銃を相手にするなんて難しいと思うけど。それに、彰一は上級、結構経験も豊富だ。どんな勝負になるんだろうか。
「ルールを簡単に説明するとねぇ、相手を行動不能にした方の勝ち。気絶、拘束、降参。やり方はなんでもいいよ。ただし、殺しはダメだし無駄な怪我を作らせるのもダメだからね、京夜」
「ちっ、分かってんよ」
簡単に説明してくれたのは海偉さんだ。話し方がおっとりしてるから優しく暖かい感じがする。他の人も海偉さんを見習えばいいのに。
「それじゃ、始めますねぇ〜。お互い準備はOK?」
「あぁ」
「いつでも、ニシシ」
海偉さんの言葉に、彰一と幡羅さんは同時に頷いた。
二人の様子を見たあと、海偉さんは片手を上げて笑顔で気合いの入った掛け声をかける。
「よーい、ドン!!」
パンッパンッ!!
掛け声と共に銃声が鳴り響いた。
それはもちろん、彰一が二丁拳銃の引き金を引いたのだ。
「ちっ」
始まりの声と共に引き金を引いたはずだったのに、掠りもしなかったんだ。彰一は苛立ちの表情を浮かべている。
幡羅さんは彰一の拳銃をジャンプで躱し、そのまま竹刀を構え彰一を立て回転しながら上から叩きつけた。けど、さすがに体が小さいので力がないのか、拳銃で受け止められ、簡単に押し返され壁側まで飛ばされた。
「よしっ!」
思わずガッツポーズをしちゃったけどいいや。幡羅さんの飛んで行った方を見たんだけど……あれ?
「あ、あれ?」
幡羅さんがいつの間にか姿を消していた。というか、壁にぶつかった形跡もないし。ぶつかる音もそういえばしていなかった。
一体どこに行ったんだろう。
周りを見回していると、後ろからまた発砲音。彰一?
「えっ──」
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