自分を構成する9枚のアルバムについて考えてみる【洋楽編】

 前回の【邦楽編】を終えて、改めて自分の選んだ楽曲を見てみると、あるとても重要な事に気が付きました。それは、

「あれ、俺全然ギター好きじゃない」

 ということ。これは盲点でした。

 はい、では早速【洋楽編】に入っていきます。



①『The Black Parade』- My Chemical Romance

■僕がティーンエイジャーだった頃、ロックという音楽で一番ハマったのはこのバンドでした。エモくてポップで中二病丸出しの音楽性と世界観は、恐らく今後もずっとティーンエイジャーたちに影響を与え続けていくと思います。あのThe 1975のフロントマン・Matthew Healyをして「エモ界のゴッドファーザー」と言われた、ボーカルでありイラストレーターでもあるGerard Wayは、未だに僕のヒーローだったりします。懐かしい。


②『Oracular Spectacular』- MGMT

■一目惚れしてしまったミュージシャンやバンドって、音楽好きなら誰でも一人くらいいるものだと思います。僕の場合、このMGMTがまさしくそれでした。YouTubeにて、同アルバムに収録されている「Time to Pretend」という曲のMVを見た瞬間に「素敵」という言葉が脳から発信され全身を駆け巡ったのです。サイケデリックなエレクトロ・ポップで、ディスコ的な装いもあり、かなりポップで楽しい楽曲ですが、歌っている内容は割とシニカルで自傷的です。「これ以外に何をやれって言うの?」「俺たちは偽物の運命だ」と高らかに歌い上げる様は、自暴自棄になりドラッグと音楽に興じることしかできない世界最後の宴感があって泣けます。


③『Dig Your Own Hole』- The Chemical Brothers

■ダンスミュージックが大好物な僕ですが、実をいうと最初はThe Chemical Brothersがそんなに好きじゃありませんでした。というか「嫌い」の分類に入りました。というのも、EDM直撃世代だったために「David Guettaこそ最高」という今では黒歴史直行のマインドに支配されていた当時の僕には、The Chemical Brothersは旧態然としたかび臭いダンスミュージックの典型例という捉え方をされてしまったのです。しかし段々とEDMに飽き始めた頃、やっと本当の意味でダンスミュージックの味わい方を知り、この感性がぶち壊されていくのでした。正直、The Chemical Brothersは好きなアルバムがありすぎるので一つに選ぶのは難しいのですが、【Dig Your Own Hole】を推させてもらいました。今聴くと「Black Rockin' Beats」のベースラインは唯一無二感がすごくて唸ります。


④『Mezzanine』- Massive Attack

■ヘヴィーでダークでダウナーでディープな音楽。僕にとってMassive Attackは、そう言った音楽の扉を開いてくれたミュージシャンです。このバンドを知ったのはイギリスの医療ドラマ「Dr.HOUSE」を見たことに由来しますが、そう言った一種の思い出補正を抜きにして「かっこいい」と素直に思えたミュージシャンでした。特に傑作として名高いアルバムですが、この重厚感は本当に素晴らしい。レゲエのカバーである「Man Next Door」ではLed Zeppelinの楽曲「When the Leeve Breaks」からJohn Bonhamのドラムがサンプリングされており、それを知った時は震えました。


⑤『2001』- Dr.Dre

■ヒップホップのアルバムの中で、最も重要なアルバムはこれだと思っています。ヒップホップという音楽は既存の音楽からの模倣によってなっています。それこそ、R&B/ソウル、ファンク、ロック、テクノポップ、レゲエ、ダブ…… キリがありません。しかしながら、そう言った手法の中で、真似しきれない部分だったり、手癖だったり、そう言った要素がピジン言語のように一種の方法論と文化を獲得し、おぼろげに本当の意味での「オリジナリティ」が見え始めた90年代後半に、遂にこのアルバムで「ヒップホップとしか言いようのない音楽」が獲得されたのだと思っています。シンプルで野太い。これは冷静に考えると、すごい。


⑥『You're Dead!』- Flying Louts

■僕がこの世界で多分一番か二番目くらい尊敬しているミュージシャン・Flying Louts御大。Flying Loutsのアルバムはどれもクソやばいのですが、ここはやはり一番の名盤と名高い『You're Dead!』を推したいです。電子音楽界におけるターニングポイントの一つというか、マイルストーンと位置付けられるこのアルバムですが、まぁ本当にやばいですよね。美しくて、グロテスクで、パワフル。この超絶妙なパワーバランスと、叔父であるJohn Coltraneの世界さえ感じさせてしまうような圧倒的な音像。『2001』と並ぶ、現代のブラックミュージックを代表する名盤です。


⑦『Electric Ladyland』- The Jimi Hendrix Experience

■始めに言います。僕はこれよりかっこいいロックはまだこの世には存在していないと思っています。結構ガチ目にそう思っています。Jimi Hendrixは卓越したギタープレイヤーですが、それ以上に、彼はロックミュージシャンという看板だけでなく、ブルース、ソウル、ジャズと言ったブラックミュージックを背負って立っていた人物だと思います。また、現代の感覚で聴くとヒップホップのようでもあり、一言でいうと「クソかっこいい」。あとドラマーのMitch Mitchellがすごく好きです。最高です。


⑧『Remain In Light』- Talking Heads

■所謂ポスト・パンクですが、その手法は実にユニーク。アフロとファンクを巧みに混ぜ合わせたスーパー・インテリ・サウンド。ブリストル系の潮流の元祖的なThe Pop Groupと並びアヴァン・ファンクの名盤という印象がありますが、サウンドメイキングにおいてはTalking Headsの方が一枚上手だと思います。オリジナリティもさることながら、シンプルに好みです。


⑨『The Drums』- The Drums

■めちゃくちゃ悩んだ挙句、今のテンションで考えたらThe Drumsは外せないなと思いセレクトしました。The Drumsはかなり脱力したサーフロック・サウンドですが、この力加減が絶妙すぎてやばい。超シンプルな編成に爽やかでキラキラとしたギターサウンド、キャッチーで能天気なボーカル。夕暮れの浜辺、もしくは海に行こうと思ったけどやっぱり止めた日の朝、みたいなテンション感が最高です。



 かなり駆け足になりましたが、これが今のテンションで考えられる9つのアルバムです。ただこれ、日によって変動しますね。これが大体目安なのですが再考の余地ありです。

 ともあれ、一つでも共感してもらえたならば幸いです。

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