FFKT2022で見てきたアクトについて感想を書いてみる。③

⑦D.A.N.

 満を辞して、ONGAKUDOステージ深夜の最終アクト・D.A.N.。フェス、ソロ問わず何度もライブを見て来たバンドですが、そのスタイルは毎回変わるためオーディエンスを飽きさせません。今回は、サポートメンバーの小林うてなを入れた四人編成でした。

 比較的最近のライブ映像ではドラムが打ち込みになっている事が多く、今回もその編成で来るかと思ってたら、しっかりとドラムセットが用意されており「お」となりました。

 会場に向かう坂で、この日二度目の遭遇となるGEZANのマヒトゥ・ザ・ピーポーの背中を追いながら、到着すると想像以上の大満員。長めにライブ前のチェックを行なってから、いざライブスタート。案の定、とても盛り上がりました。

 最新作となる3rdアルバム『NO MOON』では、今まで以上にダンスミュージックに接近して見せた同バンドですが、今回はダンス系フェスという事もあり、その能力を遺憾無く発揮していました。2018年に行われたフェス・VIVA LA ROCK 2018では、邦ロックのフェス(とは言え、同日はディープでアングラ寄りのラインナップでしたが)という事もあり、その音楽性が他の出演者と否応なしに差別化されていましたが、FFKTではそういう訳にはいきません。既に、同日中に優れたダンスミュージックを何度も耳にした状態ではどのように聴こえるのか、どのように僕を音楽で楽しませてくれるのか、そう言った期待もありライブに臨んだのですが、やはり期待を裏切りませんでした。

 3rdアルバムの収録曲は極端なアレンジを行わず、収録された通りに演奏している印象がありました。対するそれまでの楽曲については、もはや別の曲と言ってもいいくらいのアレンジが施されたライブパフォーマンスが行われていました。ライブアレンジというか、セルフリミックスをライブで演奏しているような感じでしょうか。こちらも音源が欲しいくらいです。

 本当にあっという間にライブが終わり、もっと聴いていたかったと心底思いました。久しぶりのD.A.N.でしたが、やっぱりこのバンド、面白い。


⑧Djrum

 本当はSTEELステージのDJ NOBUを見るつもりでしたが、どうにも眠くなってしまい、STEELステージに向かうDJ NOBU氏とすれ違った事で「よし」としてしまい(なんでや)、一旦休憩に入りました。また、夜はとにかく寒い。フリースジャケットと言った防寒着を着ていましたが、対するパンツは夏物のバギーパンツだったために頭熱足寒状態となり、なんだか死にそうになりました。そんなキツい数時間を超え、やっと日が出て来た頃、僕らのテントに入り込んできたのは、ドラムンベース。そう、ドラムンベース。圧倒的、ドラムンベース。ドドッドドドドドドッドラムンベース。あ、Djrum始まったじゃんと気づき、すぐさまSTEELステージに向かいました。

 いやー、まじでよかった。Andy Stottの興奮も凄かったけど、個人的にベストアクトはDjrumでした。Djrumとの出会いは2019年に名門R&Sレコーズからリリースされた12インチ『Hard to Say/Tournesol - EP』で、同シングルは所有しています。アンビエント・ガバとも称された作品で、ガバ・ハウス/ロッテムダム・テクノとも呼ばれるハードコア系の高BPMに、アンビエント・テクノ的なサウンドスケープが合体したユニークな楽曲でしたね。B面の「Tournesol」は後半の鬼ドリルンベース展開がカッコよく、一発で気に入ったのを覚えています。

 さて実際のDJプレイですが、これがバチくそかっこいい。何がカッコいいって、まずアナログターンテーブルを使用したヴァイナルD Jだったところ。それでいてめちゃくちゃ躍動感があり、テクニックも豊富。所々にスクラッチを多用し、技を見せ付けて来ます。また選曲がすごく僕好みでした。ドラムンベースを主軸にジューク/フットワークなどの高速ステップ系で構築されたスタイルで、思わず暴れ出したくなるような衝動を覚えたとかなんとか。

 また、時間帯的にもオーディエンスの数が少なく、かなり自由に踊っていられたのも個人的にはかなり良かったです。まじで最高だった。帰宅してからドラムンベースを買い漁ったとかなんとか。


⑨Fumiya Tanaka

 Djrumの次のアクトは、ジャパニーズ・テクノの顔、Fumiya Tanakaのアクト。PAのブース前で待機していた僕の眼前に同アクトを見に来たD.A.N.のメンバーが集まって来たりと、なんだか色々複合して期待に胸が膨らみつつ、遂に始まったアクト。Fumiya Tanaka氏もアナログレコードをメインしたDJプレイで、アクトも充実の3時間。とても面白かったです。

 参加者が疲れ気味なのか、Djrumから人並みはあまり変わらず、かなり自由に踊る事ができました。Djrumの変則的なビートとは異なり、テクノの規則正しい四つ打ちがメインとなるダンスフロアは、僕が体験したかった「レイヴ」の姿をしており、なんだか夢が叶ったような気分でした。

 個人的にかなり「おおっ」となったのが、デトロイト・テクノの魔術師・Jeff Milsの伝説の楽曲「The Bells」を使ってきたところ。あの瞬間に「これがテクノかっ!」と鳥肌が立ちました。


⑩naomi Paris tokyo

 最後のライブアクトとなったのがONGAKUDOステージのnaomi paris tokyoのアクト。naomiと言えば、日本のスーパーディープな二人組ロックバンド・jan and naomiとしても活動するスーパーかっこいいミュージシャンです。

 jan and Naomiとしては、過去にD.A.N.との2マンイベント・TIMELESS#3にて一度見た事があります。そのスタイルはなんと例えるのがいいでしょうか。「狂気的に静かな音楽」という触れ込みもありますが、とにかくムードが圧倒的にかっこいい。というかめちゃくちゃオシャレ。本当にヨウジ・ヤマモトのファッションがそのまま音楽になったかのような世界観とサウンドイメージ。

 FFKTの終わりの時間という事もあり、ダウナーな時間帯に綺麗に収まるようにアンビエントかつオルタナティブなバンドサウンドを鳴らし、しっとりと僕らを癒してくれました。なんだかnaomi Paris tokyoのライブを見終わった時に「ああ、終わったなぁ」としみじみ思いました。そして来年もまたここに来ようと思ったとか何とか。


 そんこんなで、めちゃくちゃ面白かったFFKT2022。惜しくも出演キャンセルとなってしまったTelefon Tel AvivやLaurel Halo、そしてDJ PYTHONといったアクトも、もし次回見れる機会があれば是非とも見にいきたいと思いました。

 FFKT、最高です。

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