FFKT2022 #5【長谷川白紙】

 愛しています。









































 冗談で







 す。



 結

  婚

   したい

  

 だけです。










 

 というわけで長谷川白紙について語っていきたいと思います。

 まず初めに、僕が今回のFFKTに行くことを決めた最大の理由は、長谷川白紙が来るからでした。昨年の10月ごろにリリースされたシングル曲『ユニ』に心を撃ち抜かれた僕の中で、長谷川白紙のライブに行きたい!という欲求が急激に高まり、チャンスを伺っていました。そこに舞い込んだのがFFKT。見れば、他にも観たアクトが目白押し。行くしかねぇと決心したのです。


 さて、長谷川白紙ですが、その音楽性は、何と例えるのがいいでしょうか。坂本龍一とAphex Twinが平沢進をテーマに共作したみたいな感じ、でしょうか。この例えは、同氏の音楽性をまだ知らない人に説明する上では有効な表現だと思いますが、その音楽の奥深さを知ると、少し素っ気ない感じがします。

 坂本龍一氏との比較と言うのは、長谷川白紙のキーボードプレイヤーという点と、音楽性におけるアカデミックなアプローチを例えたものです。Aphex Twinとの比較という点では、これは長谷川白紙の音楽を端的に表現した場合に、メディアなどで「ブレイクコア」という説明がなされる事が多いことによります。同じくコーンウォール一派のSquarepusherと言い換えていいかもしれません。Squarepusherと言えば、IDM・エレクトロニカのミュージシャンという側面だけでなく、Jaco Pastoriusを敬愛する卓越したベーシストの側面を持ち合わせています。勿論、楽曲の中に、Jaco Pastoriusばりのぶっとい超絶ベースをぶち込んでみたりもするわけで、そう言った意味ではキーボードとボーカルを行う長谷川白紙により近いのはこっちかも知れません。平沢進という表現は、作り出される楽曲の、歪ながらにもきらりと光るポップセンスを持ち合わせていることを言い表したものです。また、長谷川白紙の表現の中には、ネットスラング的な色を帯びるもの、そういったところからの影響を感じさせるものがあります。平沢進氏は、ネット世代の裏番長の存在でもあります。特異で歪、けれどポップで中毒的。そんな色合いは、平沢進氏と共通するポイントだと思います。


 さて、楽曲について紹介していきましょう。まずね、全部好きだ。一曲も嫌いな曲が無い。嘘じゃない(知らんがな)。と言っても、僕が知っているのはApple Music上で公開されている2018年リリースのEP『草木萌動』からそれ以降の作品に限られており、それ以前の作品までは追えていません。

 しかし、なんという才能でしょうか。これを書くにあたり、また作品を聴き直しているのですが、いや好きすぎる。長谷川白紙の音楽の特徴は、前述のブレイクコアと引き合いに出されるように、ジャングル/ドラムンベースの流れを組むジャズ系のドラムブレイクのチョップを用いて作成された複雑なベースライン、的なダンスミュージックですが、それだけでは説明できない「アカデミックさ」が見え隠れしています。「はみ出す指」という曲は、どことなくFrank Zappaの匂いを感じさせます。

 また、個人的に着目して欲しい点は歌詞表現にあります。特異なサウンドという点に目が行きがちですが、その上で展開される詞の世界も、これもかなり面白くて魅了があります。音に対しての執着と言うか、歌詞の内容もさることながらリズムへの乗せ方や言葉選びも秀逸です。去年リリースされたシングル「ユニ」とか、なんか聴いてると泣きそうになる。

 また、更に素晴らしいのが、新曲がリリースされるたびに音楽性の変化が見えるところです。EP『草木萌動』はダンスミュージック的な色合いが強いですが、2019年にリリースされた1stアルバム『エアにに』では音に横の幅が広がり、2020年にリリースされた「音がする」から新たなフェーズに入り、2021年には前述の「ユニ」を含む「巣食いの手」、「わたしをみて」など、すんごい楽曲ばかりをリリースしていました。それらの楽曲がそれまでの作品と大きく違う点は、それまでの毒気の強いサウンドをそのままに、というかより強烈で鋭利に研ぎ澄まさせている一方で「ポップス」という方向性の神髄を提示してみせた点にあります。破壊的で狂暴なのに、びっくりするほどポップで美しい。まじでカッコイイよね。あとドラムが容赦してくれなくなった。いいぞもっとやれ。「わたしをみて」では4:03~4:08ごろのドラムブレイク?と、4:47~4:50のドラムがマジでカッコイイ。横に並べたドラムが次々とダイナマイトで爆発されていくような感じでしょうか。あれをポップスにぶち込むとかクレイジーすぎる。その発想がカッコよすぎるんだわ。また「ユニ」では4:58から終わりにかけてのドラムソロがしびれるくらいカッコイイ。そして流れが自然と言うか、ドラムへの導線、それが必然性の塊なのです。化け物か、お前。

 と、好きなとこを上げるとキリがないので一旦打ち止めをしますが、こんな感じです。一言で言うと「僕の好きな音楽」なのです。

 最後に、長谷川白紙は2020年に『夢の骨が襲いかかる!』というカバーアルバムをリリースしました。そこでサカナクションからも一曲カバーしていたのですが、選ばれたのが「セントレイ」という曲でした。サカナクションには様々な人気曲があり「セントレイ」も初期を代表する楽曲なのですが、その後のヒット曲と比べるとあまり存在感がありません。けれど僕はこの曲がとても好きで、そのむかし、自作のMVを作っていたりもしました。とても思い出深い曲です。それをカバーしてくれた事がとても嬉しくて。


 本当に、心の底から大好きなミュージシャンです。もっとうまく良さを伝えたいのに、僕の文章力ではこれぐらいが限界のようです。彼の今まででとこれからを含めて、僕はファンであり続けます。俺、お前の全部が好きだ。

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