同い年じゃないけど紹介したいやつ

『Mura Masa』- Mura Masa

 サウスロンドンのチルウェイヴマスター・Mura Masa。若くして才能溢れる天才ですが、実のことを言うと僕よりも年下なのです。「同い年」という枕言葉はどこ行ったんだという話ですが、僕がサウスロンドンというワードを知るきっかけになったミュージシャンの一人なのでスルーする事は出来ませんでした。という訳、プロデューサー/トラックメイカーであるMura Masaの1stアルバム『Mura Masa』についてお話ししていきたと思います。


 さてMura Masa。この1stアルバムに限っては「チルウェイヴ」と呼ばれる音楽をやっていました。チルウェイヴは、ザックリ言うとシンセポップに属する音楽で、その中でも特にリラックス感があってコジャレたサウンドが特徴です。

「チル」という単語自体が音楽シーンの中に初めて登場したのは90年代前半、イギリスのハウスデュオ・The KLFがリリースしたアンビエントアルバム『Chill Out』が発祥とされています。その後、チルアウトという概念がダンスミュージックシーンに浸透し、10年代初頭にはWashed OutやToro Y Moiらを筆頭にチルウェイヴシーンが誕生しました。The KLFの『Chill Out』とチルウェイヴの直接的な接点はなく、あくまでも「チル」という概念を共有しているくらいの関係性です(間違ってたらすいません)。

 チルウェイヴは、ミドルテンポくらいのリズムにレイドバック感の強いメロディが乗っかった何とも夢心地で緩い音楽です。大枠としては「シンセポップ」に置いておくのが最も当たり障りがない表現ですが、実態としてはハウスミュージックやヒップポップの影響が色濃く、よりダンスミュージックに近い(あるいはそのシマの)音楽であると言えます。


 さてMura Masaですが、Washed OutやToro Y Moiと大きく違う点は彼がイギリスのミュージシャンであるという点です。1stアルバム『Mura Masa』で展開される音楽はまさしくチルウェイヴなサウンドですがアメリカ出身のWashed OutやToro Y Moiと比べてUKガラージ的な味付けを感じます。またアルバムの最後に収録されている「Blu(feat.Damon Albarn)」は、曲名の通り、90年代のUKで巻き起こった一大ムーブメント・ブリットポップにてOasisと並び顔役となったロックバンド・Blur、そのフロントマンでGorillazを主宰するDamon Albarnが楽曲に参加しています。

 それにしてもDamon Albran。彼は本当にすごいミュージシャンです。日本ではブリットポップの覇者はOasisとされていますが、ぶっちゃけると2ndアルバム以降のOasisはパッとしません。それぞれがソロキャリアをスタートさせた近年、しかしやはりパッとしません。対するBlurのDamon Albarnはブリットポップにさっさと見切りをつけると98年にはGorillazをスタートさせ、アメリカでの成功もあり瞬く間にOasisとの人気の差を広げていきました。また近年、Gorillazでは前回紹介したSlowthaiをはじめフィメールラッパーのLittle Simz、グライムの大御所・Skepta、果ては日本のガールズロックバンド・Chaiともコラボしたりと若手に機会を与えています。クリエイティビティに溢れ、新しい音楽にも挑戦し続けています。そして人気もあるのだから文句のつけようがありません。そんなDamon AlbarnがMura Masaに目を付けるのは必然と言えるかもしれませんね。


 Mura Masaは2020年に2ndアルバム『R.Y.C』をリリースしますが、こちらは本アルバムのイメージとはかなり趣きが異なるパンクな作品に仕上がっています。前回紹介したSlowthaiとも頻繁にコラボを行なっており、チルからパンクという流れを体現しているミュージシャンと言っても過言じゃないでしょう。今後のリリースにも期待大です。


 * * *


■一曲選ぶならコレ 【Firefly(feat.Nao)】


  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る