もはやイギリスでもないけど紹介しときたいやつ

『French Kiwi Juice』- FKJ

『サウスロンドン系の同い年ミュージシャン』というテーマだった筈が『サウスロンドンじゃないけど同い年』、『同い年じゃないけどサウスロンドン』ときて次は『同い年でなければイギリスでもない』という無軌道さ。しかしサウスロンドン系のインディーR&Bに呼応するミュージシャンとして同時期に話題を集めたフランスのエレクトニックミュージシャン・FKJは、Tom Mischとも親交を結ぶメロウ・チルマスターです。そんな訳で今回はFKJの紹介です。


 さてFKJですが、彼は所謂マルチプレイヤーというやつで、ギターをはじめキーボード・シンセ、サックス、ベース、DAWといった実にたくさんの楽器を一人で使いこなしつつ演奏を行います。基本的にはDAWで組まれたヒップホップライクなビートの上に上音を適宜乗せていく感じのスタイルでライブを行なっているようですね。

 ジャズ、R&B・ソウル、ヒップホップをエレトロニックというワードによって横断しつつ程よいフレンチ感を持ったチルウェイヴを演奏している訳ですが、そんな彼の演奏風景を見れる動画として有名な『Fkj & Masego - Tadow』は驚異の3億回再生。またウユニ塩湖で行われたソロライブ映像『FKJ live at Salar de Uyuni in Bolivia for Cercle』では、空と大地が繋がったかのような塩湖の幻想的なステージの上でメロウ・リズムマシンと化したFKJが鼻につくほど気取ったアクトを見せつけています。DAWで組まれたリズムの上でシンセやピアノ、ギターやサックスを自在に持ち替えながら音楽を作っていく様はカッコいいの一言に尽きるのですが、同時にそのプレイスタイルは「現代的」の塊とも言えるものです。

 FKJやTom Mischらの音楽性は言うなればヒップホップを経由したスムースジャズの新解釈であり、ダンスミュージック的な視点からジャズを再構築したアシッド・ジャズとは趣こそ似通っていますがアプローチとしては異なります。ですがポップで聴きやすいボーカルジャズという点では非常に近い存在と言え、SuchmosやNulbarich、WONKらとも呼応する音楽です。


 さて、マルチプレイヤーという点では前回のMura Masaと同じスタイルで演奏していますね。またUKアンダーグラウンドシーンのスピリットを持つダンスミュージックデュオ・Disclousreも生演奏スタイルでライブを行う際はこのような編成です。ソロという点から離れればUKのエレクトロニックトリオ・The XXも、マルチプレイヤーであるJamie XXがこの立ち位置にいます。更に言えば、EDMシーン、とりわけフューチャートラップ/フューチャーベースの顔の一人として知られるオランダのDJ・San Holoも、最近ではターンテーブル(正確にはCDJ)ではなくDAWで組まれた音楽の上でギターを弾くというスタイルでライブを行っています。


 生ドラムを用いないメロウミュージック。ヒップホップやダンスミュージック的な手法が現在のシーンに多大な影響を与えていることは言うまでもありません。面白いことになっています。


 * * *


■一曲選ぶならコレ 【Skyline】


 

 

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る