『Juice』- iri

 ネオ・シティポップの歌姫的な存在というか一つのアイコンを担っているシンガーの一人である、iri。R&B的なトラックにピッタリとハマるスモーキーで色気のあるハスキーボイスと洋楽シーンにリンクした新鮮かつクオリティの高い楽曲は、コンスタントにリリースされる新譜を聴くたびに「ハズさないミュージシャン」である事を再認識させてくれます。iriの2ndアルバム『Juice』の紹介です。


 いやー。いいよね。ほんとに。語彙力が欠如していますが、これはツラツラと何かを語るようにもとりあえず聴いて欲しい。

 はいじゃあもう一聴したという事で本題に入っていきます。

 まずこのアルバム、トラック提供や共同制作という形で様々なミュージシャンやプロデューサーが参加しています。また参加しているミュージシャンがどれも豪華。というか、同世代の、現在のシーンで活躍する個性の強いメンツが揃っています。

 このアルバム制作に携わったメンバーというのが、水曜日のカンパネラで楽曲制作を担当する変態・ケンモチヒデフミ、そしてWONK、小袋成彬、yahyel、5lack、TOSHIKI HAYASHI(%C)、高橋海(LUCKY TAPES)、などなどです。どうです? 最強でしょ?


 水曜日のカンパネラにて楽曲制作を担当するケンモチヒデフミ氏は、これは言わずもがな天才的なトラックメイカーです。いずれ水曜日のカンパネラ枠としてレビューしたいので多くは言いませんが、今作では四つ打つのダンスナンバー「For Life」などを担当しています。均整の取れたミュータント的な楽曲を得意とする同氏ですが(なんだろうこの表現)、今作では割と真面目にストレートな楽曲です。しかし、やはりいい仕事しています。上手い。

 前々回紹介したWONKも「Dramatic Love」という曲を共同制作しているようで、こちらもだいぶ極上のソウル・ミュージックに仕上がっています。というかこの組み合わせで良くない筈がない。最高です。

 そして、今作の目玉の楽曲となるのが小袋成彬を擁するTokyo Recordingsが手掛けた「Corner」です。いやね、まじでこの曲は最高。MVで池袋のランブルプラザから出てくるところも最高。

 この楽曲が発表された頃はまだ小袋成彬がソロ名義でのフルアルバムをリリースする前で、「宇多田ヒカルが認めた天才シンガーらしい」とか「N.O.R.K.という名義で和製・Frank Oceanしてた人らしい」みたいな情報が飛び交っていました。

 2018年6月当時、同氏の渋谷WWWでのワンマンが決定しており日程を確認するとピックアップ・アーティスト的な感じでサイト内でも目立つところに表示されていたのを覚えています。奇しくもFUJI ROCKに出演しWWWでの単独ワンマン公演が決定したJon Hopkinsと並ぶ形で表示されており、おんなじようなスカした仏頂面が横並びになるというオモシロ事件が発生しておりました。そのため当時の僕は「あー小袋成彬ってエレクトロニカの人なんだ?」みたいな勘違いをしていたとかなんとか。

 

 改めて考えてみると、本作は「ネオ・シティポップが集結した作品」という側面を持っている事に気がつくと思います。勿論、一つの音楽作品として優れた名盤であることは疑いようがないのですが、同時にネオ・シティポップシーンというムーブメントを形成したミュージシャンが寄り集まって作り出した結晶のようなアルバムでもあります。

 ネオ・シティポップが終息しさらに時間がたった時、この時代を象徴するアルバムとして、このような切り口から解説される瞬間が来るんじゃないかなと思ってます。つまり歴史に名を残す名作です。iriの作品はどれも素晴らしいので本アルバムを足掛かりにカタログを制覇してみるのもいいですよー。


 * * *


■一曲選ぶならコレ 【Corner】

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