『POLY LIFE MULTI SOUL』- cero

 ネオ・シティポップの始発点とされるcero。2018年にリリースされた本作『POLY LIFE MULTI SOUL』は、現在のネオ・シティポップシーンを彩る様々なバンドやミュージシャンが出揃ったところで「真打ち登場」と言わんばかりに投下されそして話題を掻っ攫った名盤中の名盤です。

 実を言うと僕がceroと出会ったのはこのアルバムで、今でこそ大好きな作品なのですかリリースされた当初はあんまり興味がありませんでした。というのも、当時の僕はD.A.N.というバンドにどハマりしており(こちらは後々紹介します)、ceroのブラスバンドっぽいようなアコースティックなサウンドスケープにはあまり食指が動かなかったのです。


 このアルバムを本格的に聴き始めたのは同年の12月末で、丁度アナログ盤がリリースされるタイミングでした。

 その日は会社の忘年会があり、家を出たのは夕方六時頃。目的地までの移動時間はバスで凡そ一時間弱。せっかくだから一度も聴いた事がないアルバムを通しで聴きながら行こう。そう思った僕の目に飛び込んできたのが『POLY LIFE MULTI SOUL』でした。見れば収録時間は55分と長く、「これはceroを聴けってことだな」と直感した訳ですね。

 聴いてみればなるほど、これはいい。何故もっと早く聴かなかったのかと自問すると共に急いでアナログ盤を探しました。やはり人気が高く、最終的にはJET SETで在庫を発見してポチり事なきを得ました。


 さて今作。アルバムの目玉となるのが「魚の骨 鳥の羽根」という曲で、こちらはYoutubeとかでMVが公開されており目にした方も多くいると思います。オーガニックな音色で鳴らされるcero流ひねくれポップスという感じで、ceroらしい都会的なセンスと優れた技術から紡がれる名曲です。


 今回これを書くにあたって改めて聴き直した時に面白いなと思ったのは「Buzzle Bee Ride」と「レテの子」の二曲でした。

「Buzzle Bee Ride」 の面白いところはなんと言ってもビートですね。数年前にアフター6ジャンクションでJ Dillaの回がありその時にceroが引き合いに出されていましたが、なるほど確かにヒップホップを感じるドラムです。この曲はインスト・ヒップホップっぽさが強く、これは個人的には結構発見でした。

「レテの子」は、これもかなり個人的な印象ですがどこかMoodymannっぽさを感じたんですよね。デトロイト・テクノの鬼才・Moodymannの有機的でねとっとしたグルーヴ感、その感じがほんのりあるような無いような。

 当時気がつかなかったポイントなので再発見という感じです。やっぱり面白いアルバムって時間が経っても発見があって飽きない。いいっすわ。


 * * *


 本アルバムから「Waters」と表題曲「Poly Life Multi Soul」がシングルカットされ12インチ・シングルが出ていますね。これがまた憎い。

「Waters」にはヒップホップ/ハウス・ディスコのトラックメイカー・Sauce81がリミックスを提供しており、「Poly Life Multi Soul」にはドイツ在住のDJ・Keita Sanoがリミックスを提供しています。どちらも原曲の良さを保ちつつ両プロデューサーの「らしさ」が発揮された完成度の高い楽曲です。こちらも合わせて聴くことをオススメします!


■一曲選ぶならコレ 【PONY LIFE MULTI SOUL】


 

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