第11話 キミの檻
静かな風が開けた窓から吹き込んで、ゆるりとカーテンを揺らす。
男は一人、この揺らぎを眺めていた。
ここが檻になって幾星霜、見ることのできなかった景色である。
ふかふかの絨毯の上、足を引きずって歩く。あの子はこの感触が好きだったのだ。
カーテンを開け放つ。窓の外は快晴で、吹く風が肌をくすぐるような、穏やかな日。
あの子がその足で真っ直ぐ立っていたときのことを覚えている。
遠い昔のこと。
あの子のまろい頬がピンクに色づいて、日差しを受け入れたことを知っている。
まだ、今のうちは。
キラキラした声で笑い、乱れる髪を覚えている。
覚えているのだ。
風が吹く、部屋を通り過ぎていく。
ここはキミの檻。
ただの空箱。
超短編集 草木 一 @Soumoku_Hajime
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
フォローしてこの作品の続きを読もう
ユーザー登録すれば作品や作者をフォローして、更新や新作情報を受け取れます。超短編集 の最新話を見逃さないよう今すぐカクヨムにユーザー登録しましょう。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
関連小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます