第7話 魔力操作
入学式から数えて約1ヶ月の月日が経過した。
今は授業の真っ最中なのだが、軍校に来てからそれなり間がたったこともあり授業も結構難しくなってきた。
「魔術は本来"術式"という魔法陣を書き、その術式に魔力を注ぎ込んで魔術を発動します。しかしそれでは戦闘する時に不便なので鍵言や詠唱する事で術式を"書く"訳です」
北条先生は魔術師であることもあり、熱心に魔力学の授業をする。
なるほど魔術に術式かぁ、うむ全く分からん。
単語自体はもう習ったので分かるが魔術が使えない俺ではイメージが湧かない。
『簡単に説明すると、鍵言や詠唱は術式を書くという行為と同じ効果があるって事です。まぁ色々例外はありますが』
『つまり鍵言や詠唱したら魔術が発動するって認識でオッケー?』
『正確には鍵言や詠唱した後出来上がった術式にに魔力を注ぐ必要がありますが、相真君は魔術を使うわけではないのでその認識で大丈夫です』
「私達が基本的使う魔術は属性魔術や科学魔術と呼ばれおり、火水風地雷氷光闇陽陰空の11の属性に分かれています。この属性は1人1つの属性の魔術しか使えません」
ルナと念話しているといつのまにか先生は属性の説明を始めている。俺は慌てて教科書のページをめくる。
「火水風地雷氷はなんとなく分かると思いますが、光闇陽陰空は魔術科の生徒でも無い限りは聞いた事がないと思います。なので後の5つについて少し説明しますね。光と闇は科学的な要素と思想的な要素が合わさったものです。陽と陰は日本版の魔術である陰陽術が元になっており正と負のエネルギーを司っています。空については思想的な要素である天や星と科学的な要素である空気や空を司ります」
そこまで聞いて俺の頭はオーバーヒートした。俺には難しすぎる魔力学の授業に白旗を上げて夢の中に落ちる。
現在の時刻は19時30分で辺りはすっかり暗くなっているが、体育館では特に問題はない。
今はアップがわりの体力トレーニングと、北条先生との1体1の喧嘩形式の格闘術訓練、訓練用のハンドガン(レプリカ)と本物のグロック17を使った射撃訓練を全て終えたところだ。
「今日の訓練では君に次のステップに進んでもらいます」
いつもならこの後ブレードやらサバイバルナイフやらで近接戦闘の訓練をするのだが、どうやら今日は違うようだ。
「次のステップ?」
「ええ、今日は魔力による身体強化を教えます」
「・・・・・・俺、魔術は使えませんよ」
「分かってますよ。魔力強化は相当魔力量が少なくない限り相真君の魔力量は人並み程度なので問題ありません」
「へぇ、俺は魔力量は雑魚だと思ってたんで何か驚きです」
「そうなんですか?まぁとりあえず私が魔力操作をやってみるのでしっかり見ていて下さいね」
先生はそう言って目を瞑る。すると白色の光が先生の身体を包み込む。
「おお、凄え!それが魔力ですか?」
「ええ、そうです。まぁ今回は君にも見えるように視覚作用を付けました。なので普通は身体強化をしても他人には見えません。相真君これ出来ますか?」
「無理っす」
「そうでしょうね。むしろ出来たら困りますよ、私の教える事が無くなってしまいますからね。少し失礼しますよ」
そう言って先生は俺の胸の辺りに触れる。
「先生、セクハラですか?」
「ち、違いますよ」
俺がからかうような軽口に先生は頬を赤らめる。
そんな話をしていると急に心臓の辺りが熱くなるのを感じる、高揚感ようなものが湧き出てくる。
「これは相真君が魔力を知覚出来るように魔力操作で君の魂に触れました」
「はい」
先生に何かとんでも無い事を言われる。魂に触れるとはどういう事なんだろうか?
「魔力操作をするには魂が魔力に触れる必要があるんです。まぁ本当は専用の道具を使うんですけどそれだと時間ぎかかるので私が強引にやっちゃいました」
「な、なるほど」
「それで特殊な熱のような感覚があると思いますがそれが魔力です。その魔力を操って全身に巡らせるんです」
「どうやって?」
「大切なのはイメージです。魔力は精神的、思想的な事に大きく作用されます。魔力が全身に巡るイメージをして下さい」
「分かりました。・・・・・・ふぅ」
俺は先生の助言を受けて目を瞑り、心臓の辺りにある魔力が身体全身に駆け巡るのをイメージをする。
するとさっきまで心臓辺りにしか感じなかった魔力が全身に伝わってくるように感じられる。
「いい感じですよ。次は身体を循環する魔力量を増やし、流れる速さを上げて下さい」
「循環する?」
「ええ、魔力は魔力操作をしなくても少ないながら血液のように常に身体を循環しているんです。身体強化は身体を循環する魔力の量と速度を上げることで出来ます。今の相真君は魂から魔力を押し出してるだけの状態です」
なるほど今の感覚は魔力を送り出してるってことなのか。
(だけど循環っどうすればいいんだ?)
俺が悩んでいると、北条先生がそれを察したらしく口を開く。
「こればっかりは慣れるしかありません。毎日魔力操作の訓練をしていればその内感覚は掴めてきますよ。なので授業中寝てるなら魔力操作をしていて下さいね」
「ハハハ・・・・・・」
中々に痛い所を突かれて俺は苦笑する。
「はぁ、なんか凄え疲れたなぁ」
訓練を終えてマンションに向かい真っ暗な道を歩く。
身体は別に疲れていないのだが、なんというか精神的に疲れた。
『魔力操作の影響でしょうね。相真君は魔力操作に関しては初心者ですからね。これもその内慣れますよ』
俺の思考を読んでずっと黙っていたルナが念話で答える。
『なるほどねぇ。・・・・・・なぁルナ、魔力の身体強化と(
俺は訓練の時から疑問に思っていた事をルナに聞いてみる。
『魔力の身体強化は単純に魔力で身体能力を強化しているだけです。能力は存在の強化、魂の上書きです。分かりますか?』
『いや、分からん』
魔力学の授業でもそうなだが最近超常的な事な説明をよくされるのだが、ほとんど理解出来ないのは俺の想像力が乏しいからだろうか。
『超簡単に説明すると魔力の身体強化は自分自身の力を上げている、潜在能力を引き出しているんです。それに対して能力はいわばドーピング、外から力を得ています』
ふむ、なるほど。簡潔な説明のお陰でなんとか理解出来た。
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