第6話 グロック17

軍校に入ってから2週間程が経過した。

ここ1週間の兵科訓練ではランニング10キロを5セット、腕立て、腹筋、スクワットをそれぞれ1000回ずつ、体幹50秒を20セットというメニューをこなしていたよだがーー


「終わりましたよ。本当にこれだけでいいんですか?」


今日はなぜかランニング15キロ、筋トレそれぞれ300回ずつ、体幹も10セットだけでいいと北条先生に言われている。


「これで3時間なら結構いい感じですね。ええ今日は体力トレーニングはこれだけでいいですよ」


トレーニングを終えた俺が北条先生のもとに向かうと、先生が腕時計を見てそう言う。


「今日から本格的に戦闘訓練を開始しますよ。君の身体に毎日治癒魔術を掛けていたので、体力も筋力も十分付いたようですからね」

「なるほど、選んだ学科の訓練をするんでしたっけ」

「ええ、そうですよ。今日は格闘術と射撃術を教えますが流石に外では無理なので体育館に行きましょう」




グラウンドから第2体育館の地下2階であるSランクの訓練場に足を運んだ。柔道場の畳の様な床に置いてある、箱の中に数種類のハンドガンが入っている。


「格闘術を教えると言いましたが、厳密には自衛隊格闘術、デイフェンドゥー、CQC近代格闘術、合気道、柔道など混ぜたものを教えます。なので決まった流派などがあるわけではないですよ」


先生の口から語られる軍隊や諜報機関で使われていると言われている格闘術の数々、どんなものなのか詳しくは知らないが確かどれも実戦的な格闘術だった気がする。


「まぁ難しい技だったりは後からで問題ないです。まずは戦闘中に動ける様になる事が先決です」

「なるほど、でも戦闘中に動ける様になるにはどうすればいいんですか?」

「1番大切なのは慣れです。君は喧嘩が得意なんでしたよね」

「まぁ、そこそこ得意ですが。それが何か?」

「だったら私と喧嘩しましょう。戦闘慣れも出来る上に、君の動きに合わせて指導も出来るので一石二鳥ですから」

「なるほど・・・・・・本当にいいんですか?」

「大丈夫ですよ。私から反撃したりはしないので安心して下さいね」


先生はおれから数歩後ろに下がって微笑む。


「じゃあ・・・・・・行きますよ」


俺は先生との距離をダッシュで詰めて助走をつけた右ストレートを放つが、掌でスッといなされてしまう。


「フフ、どんどんきてくれて構いませんよ」


先生が余裕そうな表情で指でかかってこいというジェスチャーをしながらそう言う。




「ああ、疲れたぁ」


あの後先生に色々な攻撃を放ったが、いなされた時以外は先生に指一本触れる事が出来なかった。それどころか俺の体力が尽きて何度も休憩を挟んだ。流石んと言うべきか先生は1度も休憩らしい休憩を取っていないのに関わらず、息も上がっていないどころか汗1つかいていない。


「結構いい感じですよ。教えてる事がしっかりと出来てます、かなり才能ありますよ」

「そうっすかね」


俺の攻撃を完全に防ぎつつ、俺の動きに的確なアドバイスをくれるのだから頭が上がらない。


「格闘術はこのくらいでいいでしょう、そろそろ射撃訓練といきましょうか」


先生はそう言って箱に入っていたハンドガンを手に取る。


「君の選んだ学科的にハンドガンの方がいいと思ったんですが、短機関銃サブマシンガンの方がいいですか?」

「いや、ハンドガンで大丈夫です」

「そうですか。じゃあどの銃にするか選んでもらので試し撃ちして下さい。まずはこれから撃ってみて下さい」


そう言って先生から渡されたのはP226。ドイツのザウエル&ゾーン社製で9ミリ口径のハンドガンだ。


「分かりました」


俺は先生からP226を受け取りセーフティを外して両手でグリップ握る。銃の知識は結構あるのでこのくらいは出来る。

体育館の奥の壁にくっついている人型の的に向かって構えてトリガーを引く。


「うおっ!」


いくら筋トレしているとはいえ、流石にハンドガンと反動で両手が上がる。

撃った銃弾は当然的には当たらず的から斜め上に離れた壁に着弾する。


「大丈夫ですか?次はこれを撃ってみて下さい」


次に先生から渡されたのはM1911。アメリカのコルト社で開発された、通称コルト・ガバメントとも言われる45口径のハンドガンで威力と反動が大きい銃だな。


「ふぅ・・・・・・ッ!」


1度深く息を吸い込んでからトリガーを引く。先程より数段大きな反動が身体全体に伝わるが、なんとか持ち堪える。

当然今回も銃弾は大きく的から外れる。

その後も数種類のハンドガンの試し撃ちをした。先生曰く銃の性能も大切だがしっくりくる物を選ぶのが1番大切らしい。




「全部撃ち終わりましたが、いいのは見つかりましたか?」

「ええ、俺はこれにします」

「なるほど、グロック17ですか」


30分程試し撃ちをしてようやく決めたのがこのグロック17。オーストリアのグロック社製で口径は9ミリ、強度上問題の無いところにポリマー2というプラスチックが使われているため、他の9ミリ口径のハンドガンより軽量なのが特徴の銃だ。


「では次はこの銃を撃って見て下さい」


そう言って渡さられたハンドガンはさっきまでのどの銃よりも重い。


「なんですかこの銃?」

「それは訓練用の弾のでないレプリカです。どの45口径の銃より重く反動が大きく設定されています」

「なるほど、分かりました」


さっきと同じように訓練用の銃を構えてトリガーを引く。

音はしないが反動はかなり大きい1発撃っただけでもかなり腕にくるな。


「うおっ!!結構きついですねこれ」

「9ミリ口径の銃と同じ反動にしてもよかったのですが、実戦では色々な銃を使う機会ごあるでしょうから1番反動の大きいやつにしました」

「なるほど」

「それは相真君に差し上げます。自分の部屋でも訓練して下さいね。それと訓練では毎日グロック17を撃って下さいね、射撃訓練で1番大切なのは慣れる事ですから」


その後下校時間が終わるまでレプリカを使った射撃訓練をした。

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