第5話 授業と訓練

次の日ーー


俺は圭一と共に山の中を歩いて学校に向かっている。


「今日から学校かぁ」


校門をくぐりながら俺はため息をつく。

つい先日能力者になったばっかりの俺がやっていけるのか、半分引きこもりだった俺が授業や訓練についていけるのか、そもそも俺は能力を使いこなせるのか、不安要素を言っていったらキリが無い、だがその不安を解消する為には強くなるしか無いな。


『その意気ですよ。相真君もこちら側に染まってきましたね』

『出来れば染まりたくなかったんだが』


俺はルナとそんな話しをしながら昇降口から校舎の中に入る。

扉を開けて教室の中に入り自分の席ち向かう。

俺と圭一が窓際の互いの席に座ると、俺の隣の席の沙月が挨拶してくる。


「おはよう、相真君圭一君」

「よう沙月」

「おっす」


昨日入学式があったばかりで、訓練見学でも1人だった俺に挨拶してくれるのは沙月くらいのものだ。




数分後、3人で雑談していると北条先生がクラスに入ってくる。


「みんな、おはようございます」


時刻は9時になりチャイムが鳴る。さっきまでうるさかったクラスが一気に静かになる。


「今日から早速授業をしていきたいところですが、まだ色々やっていない事があるので今日はホームルームにします。最初は自己紹介からしていきましょう」

「自己紹介かぁ、緊張するよぉ」

「そうだな、俺もこういうのは苦手だわ」


自己紹介のように人前で話したらするのは昔から苦手なんだよな、さてどうしたものか。


『昨日の入学式に比べればたいした事ないじやないですか』

『あれは返事するだけだっただろ。自分で考えて話す自己紹介とは違うんだよ』

『そういうものですか?まぁ頑張って下さい』

『ぐぬぬ、他人事だからって適当に言いやがって』


「次、片桐 圭一君お願いします」


俺が自己紹介の内容を考えていると前の席の圭一の番が回って来る。次は俺の番か緊張するな。


「俺は片桐 圭一、生徒ランクはA。出身は北海道で特技は喧嘩と料理。好きな食べ物は牛丼、よろしくな」


圭一とは初日と自己紹介がてらの雑談をしたのでその時に大体聞いた。特技の料理は初めて聞いた時は耳を疑ったが昨日実際に作った料理を食べたのだがかなり美味かった、喧嘩については、まぁ言うまでもないなうん。


「次、黒木 相真君」

「はい」


遂に俺の番になり俺は黒板の前に向かう、クラス中の視線が集まる。


「俺は黒木 相真、生徒ランクはSで出身は東京。趣味はゲーム、好きな食べ物はハンバーガーです。これからよろしく」


手応えの無い微妙な反応、俺は苦い顔をしながら席に戻る。


「次、天宮 沙月さん」

「は、はい」

「頑張れよ沙月」

「うん」


隣の席の沙月が先生に呼ばれて前に向かう、その表情から緊張しているのが見て取れる。まぁでも沙月は美少女だしコミュ力も結構高いしなんとかなるだろ。


「私は天宮 沙月です。生徒ランクはAで出身地は宮城県、特技は料理とピアノです。よろしくお願いします」


沙月は両親と別居しており知り合いの老夫婦と暮らしていたらしい、両親もピアノもその老夫婦に教えてもらったらしい。

今日の授業はホームルーム4時間だけで終わった。自己紹介の他に授業の説明等をしただけだったのでかなり楽な1日だとこの時まで思っていたのだがーー




「・・・・・・マジですか」

「マジです。引きこもりだった相真君には体力作りからしてもらいます」


午後になり兵科訓練の時間になったのだが、北条先生からランニング10キロを10セットしろとかいうとんでもないトレーニングメニューを言いつけられた。

先生の天使の様な笑顔が心無しか悪魔の微笑に見えてきた。


「ああ分かったよ、もうやってやるよぉ」


俺は半分ヤケクソになりながらグラウンドに向かう。




「あぁ・・・・・・ハァハァも・・・・・・無理」


ランニング10キログラウンド10周をなんとか走り終えた俺はその場で仰向けになって倒れる。かなりいい素材で出来ているシャツも汗でびっしょりだ。


「大丈夫ですか相真君?」

「全然・・・・・・大丈夫じゃ・・・・・・無いです」


ぶっ倒れている俺に先生が笑顔で話しかけてくる。

これをあと9回とか絶対に出来る気がしない。


「はい、これでオッケーですよ」


そう言って先生は倒れている俺の手を握る、すると青色の光が俺の身体を包み込む。

青い光が消えると身体の疲労感は消え去り走る前と同等、もしくはそれ以上に身体が軽い。


「うお身体が軽い。え、何で?」

「治癒魔術の1つです。体力を回復しただけですけどね」

「マジっすか、やっぱ魔術って凄いですね」

「では後9本頑張って下さい」


北条先生が笑顔でそう言ってくる、このドS教師が。




「やっと・・・・・・終わった」

「お疲れ様です相真君」


ようやく10セット走り終えた俺に、北条先生はマラソン等でよく見るバスタオルくらいの大きなタオルを渡してくれる。

辺りもうすっかり暗くなっており、4月とはいえ汗だくの状況ではかなり肌寒い。

魔術で体力を回復してもらっているとはいえ、流石に100キロは体力的にも精神的にも流石にしんどいな。帰ってとっとと寝よう。




次の日ーー

「ああ、身体中が痛え!」

「相真君大丈夫?」


隣の席の沙月が心配そうに話しかけてくれるが、正直全然大丈夫じゃない。

昨日のとんでもない訓練のせいで、足どころか全身が痛い。

あまりの激痛に俺はここが教室だという事も忘れて叫んでいる。


「みんな、おはようございます。って大丈夫ですか相真君?」

「・・・・・・全然ダメです」

「筋肉痛くらいなら私が治してあげますから安心して下さい」


先生はそう言って昨日と同じように俺の手に触れて治癒魔術を唱える。

するとさっきまでの激痛は嘘だったように痛みが消える。


「他に筋肉痛の人はいますか?治してあげますよ」


先生がそう呼びかけるとかなりの生徒ご先生の元に歩いていく。どうやら筋肉痛に悩まされていたのは俺だけじゃないらしい。




「今日から本格的に授業しますよ。1時間目は軍事知識、将来みんなが入ることになる特殊部隊について教えます」


20人ほどの筋肉痛を治し終えた先生が教科書を手に持ちながら先生が授業を開始する。


「まずは公安ゼロについてですね。公表されている情報では公安ゼロは公安警察を取り仕切る管理組織とされていますが実際は実動部隊の方が中心です」


(へえ公安ゼロって実動部隊だったのか)


公安ゼロについては知っていたが他の公安警察を取り仕切る指揮官的なものだと思っていたがどうやら違うようだ。


「次にSATですね。これは知っている人も多いと思いますが"スペシャルアサルトチーム"の略で機動隊のエリート部隊です。軍校の卒業生以外も入っています」


SATはドラマとか漫画でよく見るな、俺のイメージ通りかは分からないけど。


「次は自衛隊のレンジャー部隊。レンジャー部隊は自衛隊の中でもトップクラスの戦闘能力があります。海外の軍隊の特殊部隊にも引けを取らないと言われています」


これもまぁ聞いた事がある。詳しい事は知らないがゲリラコマンドの能力があるとか。


「次が特戦群です。"特殊作戦群"の略で少数精鋭の公安ゼロと肩を並べる日本最強クラスの特殊部隊です」


特戦群も知ってはいるが、なんせ情報がほとんど公表されていないのであまり情報は持って無い。


「最後にCIROです。正式名称は内閣情報調査室と言う諜報機関です。日本版のCIAみたいなものです」


今度はCIROねぇ。諜報機関なんだしスパイとかだろうか。


「他にもSITやSSTなどがあります。詳しくは次のページですね」


その後も色々な特殊部隊についての説明をされたが、最初の5つ以外はほとんど公表されている情報通りだったので段々と睡魔が襲ってくる。青空に輝く太陽の光に照らされながらも俺は睡魔と格闘が始まる。

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