第3話 従魔。

 ホルンを出て、俺は一度英雄の祠へ戻った。

 祠には立て札が立っており、ちゃんと英雄の祠と書いてあった。


 恐る恐る中を確認する。


 何もいないな…

 さっきの大きな犬のような影は見当たらない。


 ダッシュで、魔法陣へ駆け寄り手を添える。

 魔法陣は青白く光り、手が中へ沈む。


 中へ入ると、ちゃんとそこは俺の家だった。

 ふう…と溜息をついた。


 家に戻ると、時間は18時だった。

 時間は、異世界と日本はどうやら同じくらいみたいだ。


 探索は明日にしてまた就寝した。


 ◇


 次の日、朝から冒険で必要になるかもしれない物を、買いに動くことにした。

 勿論の壺のお金でだ。


 なんか、これだけ札束があると、凄くお金持ちになった気分だな‥

 30万もあればいいか…


 30万を持って、車を動かし、近くの大きな百貨店へ行った。

 カセットコンロ、鍋、ガス、キャンプに使うような用品を買って、駐車場へ移動すると。


「あ、新!」

「ん?ああ…瑞希か」

「何?あんた、そんなもの買ってソロキャンでもするの?」

「え、ああ…まあ、そんなとこだ」

「瑞希こそ、大学はどうしたんだ?」

「大学は休み!今日は、今からここでバイトよ、知らなかったっけ?」

「え?そうだったのか…」


 よく見ると、瑞希は店員の制服を着ていた。

「hey!」


 客の外人さんが瑞希に質問して来た。

「そこの可愛い店員さん、肉の売り場はどこかな?」

「あ…えっと私英語は…えっと…ノー、スピーク…」


 瑞希、何、慌ててんだ?この外人、普通に日本語喋ってんじゃないか?


「あ、えっと肉売り場なら、その入り口から入ってまっすぐ行って突き当りを、右に行くとありますよ」


 そう俺は答えた。


「オー!イエス!青年、ありがとう!」

「いえいえ」


 瑞希がきょとんとして俺を見ていた。


「なんだよ?」

「あんたさ、英語出来たっけ?」

「は?出来るわけないだろう」

「じゃあ、なんでそんなに上手く英語で話せるの?」


 ん?英語で話せるの?何言ってんだこいつ…

 ん?…まさか、翻訳スキル…


「あ…はは、多分、知っていた単語だっただけだろ?はは…」

「変なの、とりあえず私は遅刻するからもう行くね!なんかあったら言いなよ、新!」


 手を振って、瑞希は百貨店へ入って行った。

 車に荷物を積み込んで、俺は少し考えた。


 翻訳スキルが使えると言う事は、マジックボックスも使えるのではないだろうか?と。


 意識して手を伸ばすと、空間に穴があいた。


 やはり地球でも…

 ためしに、弁当を買ってマジックボックスへ仕舞って見た。


 そして、家に戻り、弁当を取り出してみると…

 なんと、温かい、買った時のままの状態を維持していた、時間停止と言うのは本当のようだ。


 家に戻った俺は、荷物などを全てマジックボックスへ仕舞いこんだ。


 早い昼食を食べて、さあ、異世界探索へ、いざ行かん。


 魔法陣に手を触れて中へ入る。

 さてと、またホルンへ行かなきゃな。


「ふむ、お主、ふっふー」

「ぎゃああああ!!」


 口を開いたのは、隅の大きな影だ。

 そう、あの時いた影だ。


 驚いて俺は走り出しそうになるが、躓いて転んでしまう。


 ノソノソと近づいてくる。

 よく見ると気品溢れた大きな犬だった、尻尾はくるんと巻いていて、深緑の毛並みでフワフワだった。


「お主は、ツヨシの息子じゃな?ふっふー」

 え?ツヨシって親父の事か…


「えっと…そ、そうだけど…」

「そうか、我はクイン、クー・シーのクインだ、ふー」


 クイン?…あ、そう言えば、親父の手紙に書いてあったな?確か…クインに宜しくって言ってたか?


「クインさん?親父の知り合いでしたかね?」

「ふむ。お主とは、まだ赤子の頃にあっておるぞ、ふっふー」


 俺が赤ちゃんの頃ってことか?

 この犬、親父の知り合いってことか、ビビってコケてしまった‥恥ずかしい。


 俺は、立ち上がった。


「ふむ、お主に聞きたい、ツヨシとの契約が切れた…何か知らぬか?ふー」

「ああ、親父は…死んだよ…交通事故で」

「ふむ。そうか…では、お主と契約しよう、名は何と言ったかな?ふっふ」

「契約?名前は新です」

「ふむ、アラタよ、ツヨシの事は残念だったな…我はツヨシの従魔をしてた、いつも一緒におったのだがな、ツヨシが地球に戻ってからは、この辺にずっと住んで居ったわ」


 従魔?ずっとってどのくらいここにいたんだろう…

 ちょくちょくこの世界に来てたってことなのかな?


「ふむ、それで、早く手を我の額に乗せるのじゃ、ふー」

「え?いや‥従魔って何?よくまだわからないんだけど?」

「我は、お主の父ツヨシに永遠の契約を交わしたのだ、それが無くなったのなら次はツヨシの息子のお主と共に行こう、ふっ」


 よくわからないけど…親父が従えていたのなら別に大丈夫なのかな?


「クインさん、どうすればいいのですか?」

「クインで良い、我の額に手を添えるだけで良い、ふっふ」


 新は、手をクインの額に乗せた。

 すると若干お互いが光ったように見えたがすぐに、おさまった。


『これでこうやって、念話と言うのも出来るのじゃ。』


 頭の中で声が響いた。

「おわ!びっくりした」


 へー、念話ねぇ…

 それから、少しクインと親父の亡くなった経緯や、クインの話をして、ホルンへ向かうことにした。


 クインは、よくは知らないが、魔物ではなく犬の妖精らしい。

 数少ない、クー・シーという種族らしいが…


「ねえクイン、この世界にちょくちょく親父は来ていたの?」

「ふむ、いや、お主が生まれて、ある時に地球へ戻ってそのままよ」

「なんでさ?」

「お主と違って、この世界に自分で来ることは出来ぬからだろう、ふっ」

「俺と違って?」

「お主には、母の血つまり、あの魔法陣を描いたハイエルフの血が入っているからあの魔法陣が発動するのだ、ふっふ」


 ハイエルフの血?…へ?…俺にエルフの血?


「えーーーーーーー!俺、エルフの血が入っているの?ってことは‥ハーフエルフじゃん!」

「ふむ、そうなるな、ふー」


 俺ハーフエルフ?耳尖ってないし…

 身体も普通だし?

 髪も真っ黒で日本人だし?

 顔もブサイクとは思っていないけど、エルフって容姿端麗なイメージが…


「お主は、地球人の外見の方が濃いだけじゃろう?魔力はそれなりに高いと思うぞ?」

「魔力?」

「うむ、この世界には魔素がある、その魔素をエネルギーにして魔法が使えるのだ、ふむ、確か地球には魔素はないとか言っていたな」

「え?でも、親父が残してくれた、翻訳とマジックボックスは向こうでも使えたよ?」

「ふむ、それはスキルよ、ツヨシに聞いたが地球でもそういう能力を持った人間がいると聞いたが違うのか?ふっふ」


 能力を持った人?

 それは…超能力の事かな?確かに、念動力、未来予知など不思議な能力使う人はいるけど…


「ふむ、スキルとは能力の事、そして魔法とは、イメージを魔力を使って具現化する事を言う、そして、お主には大きな魔力を感じるぞ、ふっふ」


 魔法を使えるのか…面白そう。


「俺にも魔法使えるって事だよね?」

「勿論だ、地球では魔素がないがこの世界ならな、しかし、ツヨシには魔力は無かったから魔法は使えなかったがな、ふっ」

「え?…あ、俺はハーフエルフだからってことか…」

「ふむ、ツヨシは、生粋の戦士だったからな、そう言えば地球人は身体能力がこの世界では5倍以上になるかもとツヨシは言っておったぞ?」

「え‥5倍以上?」


 あー…だから、目がよくなったり、走った時にあの速さがでたのか‥

 しかし5倍って…ある意味スーパーマンじゃないか。


 親父は魔力は無かったけど、その力を使ってこの世界にいたって事か。

 そして、母のエウロラって人と…


 それから、クインからいろいろと俺の両親について聞いた。


 親父達は、こっちでクランと言うのは、つまり、ゲームで言う所のパーティだ。

 親父は、クラン【ティグニティ】のパーティのリーダーだったらしい。


 他にも母エウロラと、数人のメンバーがいて、クインも従魔として魔法の使えない親父のサポートをしていたらしい。


「ふむ、所でアラタ、地球の甘い物は持って来ておらんのか?ふっふー」

 え…甘い物好きなの?


「沢山、買い込んできたからあるよ?」

 歩きながら、それをマジックボックスから取り出すと凄く尻尾を振っていたが…

 まさか、それが目的で親父の従魔していたんじゃないだろうな…


 そうこうしているうちにホルンへ着いたのだった。



-----------------------------------------------------------------------------

後書き。

クインの喋りでふっ、ふっふ、ふー、など言っているのは鼻息ですw


2/1

少し、その回数を修正を行いました。


  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る