第2話 異世界を探検。

 2つの巻物スクロールを吸収した俺は、コンパスを見て北へ進路をとることにした。


 それにしても…

 俺ってこんなに視力よかったっけ…


 かなり遠くまで森や丘が見えるのだ。


 暫く、歩くと結構遠いが、人がいることに気付いた。

 人とオオカミ?


 よく見ると子供2人が、少し大きな犬と木の棒で、対峙しているのがわかった。


 ナイフをリュックから取り出し、ダッシュする。

 新は、子供を助けようと全力疾走だ。


 すると。

「わわわわわ!」


 凄い速さで走る。


 ガルルルル‥


「こっちに来るな!」

「お兄ちゃん怖い」


 スダダダダ‥


「え?」


 子供もオオカミも、ダッシュしてくる新に気付いて、ぎょっとする。


「ちょ!」


 新は、慣れない速さでダッシュしたため、その場で足がもつれてオオカミにヘッドスライディングしてしまった。


 キャイーーーーン!


 オオカミは相当な距離飛ばされ、弱々しく逃げて行った。


 新はと言うと、シャチホコのような恰好で子供達の前で倒れていた。


「えっと…お兄さん…大丈夫ですか?」

「あいたた…だ、大丈夫。オオカミは?」

「えっと、どっか行ったよ」


 新は立ち上がって恥ずかしさを誤魔化し服の汚れを払っていた。


「君達はこの辺の子かな?俺は新、君達は?」

「う…うん、僕がリック、そしてこっちが妹のリーナ」

「そっか、えっと…この辺に町とかあるのかな?」

「もう少し北に行くと小さな町ホルンがあるよ」


 少し北に行くと町があるのか。


「お兄さん、冒険者?」

「冒険者?まあ、探検に来たから、そんなもんかな?」

「じゃあ、うちの父ちゃん雑貨屋してるから、冒険に役立つ物でも買ってよ!こっち」


 少年達は、こっちと言って北へ向かおうと言う。

 新は一緒にそのホルンと言う町へ向かうことにした。


「兄ちゃん助けてくれて、ありがとな!」

「ああ、うん、で…ここは何処なのか教えてくれる?」

「え?冒険者なのに知らないの?」

「ああ…来たばかりでね」


 リックは、じゃあ教えてやろうと胸を叩いて教えてくれた。


 ここはオブリシア大陸で、フェリオール領、フェリオール王国から南に行った所にある町、ホルンの近くらしい。


 さっきの祠は英雄の祠と言って、昔、あの場所で召喚した者達が国を救ったことがあるのだと言った。


 ここら辺は冒険者も多く、魔物もそこまで出てこないので、親孝行するため親には黙って薬草取りに来たのだと言った。


 暫く歩くと、ホルンの町であろう。塀に囲まれた町が見えてきた。


「兄ちゃん!あそこがホルンだ」


 ポツンと平原に塀に囲まれた、町がそこにはあった。


 門へ近づくと、槍を持った門兵が近づいて来た。


「ん?リックとリーナか、お前達いつの間に門の外に行ったんだ?そして誰だそいつは?」

「ああ、このにいちゃん冒険者だよ、さっき僕達をウルフから助けてくれたんだ。」


 あのオオカミはウルフって言うのか‥まあどっちも変わらんけど。


「名前は?」

あらたって言います」

「ふむ…で、冒険者カードを見せろ」

「冒険者カード?」

「なんだ…持ってないのか?怪しいな…」


 槍をこちらに向ける門兵。


「この兄ちゃん、この大陸に来たばっかりなんだってさ」

「ああ…はい、そうなんですよ、はは、ここに来たのも初めてで…」


 笑って誤魔化そうとする。


「ウルフから助けてくれたし、大丈夫だよ!通してやってよ」

「むう…面倒を起こすなよ、お前の顔は覚えたからな」

「は…はい」

「良かったな!にいちゃん」


 リックに助けられて、門兵に睨まれながら町へ入ったのだった。

 町は、中世のような街並みをしていた。


 石畳の道に、建物は木造か石作りだったが高い建物はそこまでなかった。


 ◇


「ここが、僕んちだ!」


 リックがそう言って指を差した所は、門からそう離れていない小さな2階建ての建物だった。


 1階には、いろんな物が置いてあるお店があり、父親であろう中肉中背のおじさんがいた。


「リック、リーナ!お前達何処行ってたんだ?」

「父ちゃん、ほら薬草」

「これは…お前達また町を抜け出して取りに行ったのか?…で、この方は?」

「アラタって冒険者の兄ちゃんだ、ウルフに追っかけられて助けてくれたんだ」

「ど、どうも…新って言います」

「そうか、それは申し訳ない…こちらでお茶でも飲んで行ってください、リックお前は後から説教だからな!」


 このおっさんは、リックとリーナの父親らしい、名前をカゼル・ブランドルと名乗っていた。


 俺は、お礼としてお茶を頂くことになった。

 お茶はこの世界でもあるらしい。


「あの…カゼルさん、俺ここに来たばかりでいろいろと教えて欲しいのですが」

「知っていることならなんなりと?」


 この世界の事を聞いた。


 ここはオブリシア大陸、8つの国があるらしい。

 そして、ここはフェリオール王国。大陸の右下にある国らしい。


 そして、通貨、親父の壺の中に入っていた金貨は、日本円に換算すると1枚1万円だった。


 銅貨1枚、100円。

 銀貨1枚、1000円。

 金貨1枚、10000円。

 大銀貨1枚、10万円。

 大金貨1枚、100万円。

 その他に白金貨ってのもあるらしいが‥多分1000万円だろう。


 そして、この世界はやはり、剣と魔法の世界だった。


 リックとリーナは基本になる魔法の勉強をすっぽらかして、薬草集めに行っていたらしい。


 後に、母のミーナさんが帰って来て、2階の住まいの方で強制で勉強させられていた。


「アラタさん、冒険者になるのなら、登録を済ませた方がいいと思いますよ?」

「冒険者に登録がいるんですか?」

「勿論要りますよ、それが身分証にもなるのですから」

「なるほど…」

「この町にも冒険者ギルドはありますので、そこで出来ますよ」


 冒険者ギルド‥通貨もそうだけど、益々、ゲームや漫画の世界だな。


「カゼルさん、いろいろと教えてくれて有難うございます」

「いやなに、良いのさ、子供の恩人だからな!」


 俺は、魔物がいる世界にこんな軽装で来たことを少し後悔したので、カゼルさんの店で中古の剣と木の盾を買うことにした。


 中古の鉄の剣が、銀貨1枚。

 木の盾も銀貨1枚。

 合計は日本円で2000円だった。


 どうやら、銅貨1枚以下の物はまとめて1枚って計算で売っているみたいだった。


「カゼルさん有難う、また来ますね、とりあえず冒険者ギルドへ行ってきます」

「ああ、こちらこそ売れない物を買って貰ったようで済まなかったな、ははは」


 そう言って、俺はこの町の冒険者ギルドへ向かったのだった。


 ◇


 冒険者ギルドへ着いた。


 たくさんの物々しい装備をした人達が行き交っていた。

 俺はと言うと…ツナギに中古の剣と木の盾。


 これぞ、旅立ちの村の装備って感じだった。


 冒険者ギルドの受付へ行くと、猫耳の女性が出てきた。

「猫耳…」

「いらっしゃいにゃ、冒険者ギルドに何かようですかにゃ?」

「ああ…いや、登録を」


 猫耳が自然に動いている…どうやら、獣人…本物っぽい。


「じゃ、この用紙に書いてください、それと登録料銀貨5枚ですのにゃ」

「はい…」


 登録料5000円もするのか‥たっか。


 えっと…名前…ここは外国ぽいからアラタ・イセと、男と。

 職業…剣士でいいか。

 使い魔…なんだこれ?

 従魔…これもわからん、無しで良いか。


 必要事項を多少埋めて、猫耳お姉さんの所へ持って行った。


「これでいいですか?」

「はい、じゃあ、少し待ってにゃ」


 暫くすると、銅の固いカードを持って来た。


「アラタさん、ざっと説明しますにゃ、このカードは身分証にもにゃります。魔法でちゃんとロックされて管理されてますので、貯金もできますにゃ、それから…」


 猫耳姉さんは、それから冒険者としての説明を続けていた。


 ・先ずはFから始まり、冒険者ランクはS,A,B,C,D,E,Fまであると言う事。

 ・依頼ボードから依頼を受けて、達成したという証拠になる物を持って来る事。

 ・魔物の肉や部位によっては買い取ると言う事。

 ・冒険者ギルドは、依頼によって死亡した場合や冒険者同士のいざこざなどは、一切の関与はしないと言う事。

 ・貯金もこのカードで出来る、商人ギルドと冒険者ギルドで出し入れ可能との事。


 以上を聞いて俺は、冒険者ギルドからカードを貰い外に出た。


 とりあえず…一度、元の世界に戻るか…


 新は一度、祠へ戻り、元の世界に戻ることにしたのだった。


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