桜花と旋律のエレンスゲ…①
午前零時の金曜日。
ベランダから見渡す街は燦爛と輝いていて、光の反射ではあるが…ましろが虹色に輝いて見えた。
昨日の陰鬱とした雰囲気はどこへ行ったのだろうか…ベランダの柵を少し前のめりに上半身だけを乗り出して携帯電話を片手に真横から見えるましろは悩みの全てを葬り去ったかのように少し初々しく明るい表情に見えた。
俺はまさか隣の部屋がましろと思っていなかっただけに言葉が出なかった。
「えっ...賀陽君って隣の部屋だったの!?」
「うん、御覧の通り…でもましろさんが隣の部屋だなんて驚いたな」
「そうだよね…急になんだけど家のことは内緒にしてもらっても良い?」
ましろは真面目な顔でこちらを見つめてお願いをしてきたのだ…きっと何か人に知られてはいけない理由があるのだろう。
「分かった」
「ごめんね。迷惑かけちゃって…ちょっと個人で色々やっててなるべく家は知られたくないんだよね」
「そうなんだ...ところで今日はどこで何時に待ち合わせるの?」
「行くときになったら、インターホン鳴らすからゆっくりしてて…たぶん朝の8時ごろになると思う」
「じゃあインターホン鳴るの待ってるね」
俺は朝起きるのが苦手な<お寝坊さん>なので正直起きれるか心配だ。
ましろがこちらを見て口を開いた。
「いつも、これくらいの時間になったらベランダに出て夜景を見て心を落ち着かせてるから電話じゃなくて直接ベランダで話そうよ。ここ角部屋だし高層階だから何かオシャレじゃない?」
ましろはときめいていた。
確かにここはそこそこ高層階で20階以上あるので大都会の摩天楼を一望することができる為かとてもオシャレでドラマやアニメでもよくある展開なのだが、オシャレすぎて会話が長続きしなさそうだ。
俺は若干間を置いて口を開いた。
「確かに、オシャレだよね。ましろさんが時間的に大丈夫ならその時は一緒にここで話そう」
「ありがとう」
気付けば、時刻は午前一時を回っていた。
「じゃあもう寝るよ…また朝に会おう」
「うん…おやすみ」
俺は部屋に戻りアールグレイと言う紅茶をコップに注いで一日を締め括った…と言いたいところではあったが何か気持ちがソワソワして結局、就寝したのは午前の4時であった。
体感で一時間程度寝た後にインターホンが鳴った。
俺は大急ぎで身支度をして数分後に玄関の扉を開けた。
「もぉ~遅いよ。今起きたでしょ」
「ごめん、今起きたばかり」
「やっぱりね…寝坊助」
Vtubeドロップアウト!! 有栖川 黎 @Asaka_ray
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