六話 異世界召喚

 六話 異世界召喚

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 国王の間、王座が置いてある謁見の間から奥に入った場所にある。

 王の一部側近を除いて、立ち入ることすら禁止されている部屋。


「私たちは、もう止まれない」


「……ああ、そうだな」


「後悔しているの?」


「いや、後悔なんてしていない。この手を取った以上、王国を必ず復権させて見せる」


「ええ、そうね」


 私たちは、王国の実権を握った。

 かなり無理やりに近い形で。


 ただでさえめちゃくちゃだった指揮系統にはもう目も当てられないし、支持者も少ない。

 でも、無理やりにでも進めないと、手遅れになる。


 だから、仕方なかった。

 昔の私なら取れない選択だっただろう。

 でもあの時はなぜか、正しいと思った時自然に行動に移していた。


「それにしても、国王にのみ伝わる秘密って何なのかしら?」


「わからない。秘密があること自体は聞いていたけど、教えるのは先だって言われていた」


「でも、知ったところで何か変わるの? もしそれが現状を覆すほどの何かなら、とっくに前国王が使ってたんじゃない?」


「ああ。ただ、国王になるなら、必ず知らなきゃいけないことらしいんだ」


「ふーん」


「あった、『異世界召喚』多分これだ」


「何かの魔術っぽいけど……召喚陣自体は、塗りつぶされて見えないわよ」


 一部見える部分からでもわかるぐらい、とてつもなく高度な術式だ。

 塗りつぶされてるのももちろんだが、資料自体がかなり痛んでいる。

 文字通り、代々国王に受け継がれてきたものなのだろう。

 どんな召喚陣かは図らないが、復元して使用できればそれなりの……


「付属資料がついてる。この術式の永久的な封印を宣言?」


「使えないの? なんでそんなものわざわざ受け継いできたのかしら?」


「ホモ族との遭遇と、種族としての敗北……」


「どういうこと?」


 ーホモ族との遭遇ー

 人類と魔族の生き残りをかけた種族戦争は膠着し、ただ無駄な犠牲を垂れ流すだけの日々が続いていた。

 我々は、起死回生の一手として研究していた、次元を超えた世界からの召喚術。

 異世界召喚の実証実験を行った。

 召喚陣から現れたのは、少年。

 我々と同じ見た目をした人類。

 しかし、お世辞にも強そうには見えなかった。

 実験は失敗したかに思われ、少年は召喚陣の改良のために調査を受けつつ同じ人類として城で暮らしていた。


 それ以上はわからない。

 ただ最後には戦争は終了し、少年は国王の席に座っていた。


 これはのちの発見だ、ホモ属は別世界の支配者だった。

 我々人類も、魔族も成し遂げられなかった、一種族での世界の支配。

 世界の頂点に座った種族であり、逆転の可能性を他種族の滅亡という形でつぶした種族だ。


 この時の人類統一国王家は、今は形が残っていない。

 ホモ属の血が薄れ、力が弱まったのだろう。

 ただ、確実にホモ属の血はこの世界に残っている。


 もし、先祖返りでも起こしたら、世界は再び……


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