第21話 メフィスト=サークリフ。

俺達はタレットさんに聞いたメフィストに会いに東の街外れにやって来た。

途中で靴屋のオヤジに場所を聞いた時も「あの偏屈に何の用だ?」と言われてしまった。


確かに一軒だけポツンと離れた場所に有った。どうやら此処がメフィストの家らしい。

屋敷と言っても差し支えない程広い大きな家だ。


俺は門を開けて中に入る。

すると石像だと思ってたのが動き出した。ゴーレムなのかよ!コッチにやって来たが俺はソイツに「俺はサルナス。メフィストに会いに来た。タレットさんから教えてもらった」と言うと動きが止まった。


「何の用だ?」


ゴーレムから声がした。遠隔なのかな?


「ゴーレムの核を入手したのでゴーレムを作って欲しい」


「一個や二個なら帰れ!!」


「30個だ。ミスリルもある」


「さ、30個だと??…よし、とにかく入れ。もし無かったら…」


「あるから安心しろ」


ゴーレムに俺達はそのまま屋敷に案内された。

扉の奥の部屋まで連れて行かれた。


「入れ!!」


ドアを開けて入ると白衣を着た長髪の男がデカい椅子に座っていた。歳の頃は俺より上で三十代ってとこか…イイ男だが顔色が悪いな。


「早速見せてもらおうか?」


俺はゴーレムの核を30個とミスリルを取り出した。

それを見たメフィストは驚いた様だったが、ゴーレムの核を確認しながらブツブツ言っていた。

じっくりと確認した後にやっと話し始めた。


「念の為に聞くが、これは…ダンジョンの58階か?」


「ああ、そこでゴーレムを狩りながら核を集めた。帰り際にミスリルゴーレムを倒してミスリルを手に入れた」


引き攣った顔をして俺の方を見る。


「はぁ…呆れた忍耐力だな…何十回潜ったのか知らんが酔狂な奴だ」


「いや、58階に行ったのは昨日が初めてだ」


「はぁ?ば、馬鹿言うな!これだけの数を集めるのに一回潜っただけだと?しかも討伐ドロップでミスリルが出るのもかなりの低確率だぞ!」


「俺は運が良いんだ。とにかく嘘は言ってない。何なら明日も行って持ってこようか?」


「…うむ…まあ、こんなに持ってきたヤツもそう居ないからな…まあ、良いだろう。それでゴーレムはどんな奴が良いんだ?」


「どんな奴?…ゴーレムってダンジョンに居る様なのばかりじゃないのか?」


すると呆れたような顔で俺を見ながら話し出す。


「良く誤解されてるが、ゴーレムはどんな形にも出来る。要は核が有って、その核に魔法陣をキチっと組めば如何にでもなる。複雑な動きも可能だが、その為には核の数量が要るわな」


するとドアが開いてプカプカ浮いた奴が触手にポットを持ってメフィストの方にやって来た。そして空のティーカップに紅茶を注いている。コレもゴーレムなのだろうか??


「コイツは海にフワフワ浮いてる魔物を参考にして造ったゴーレムだ。重力魔法の魔法陣を組み入れて空中に浮かせてる」


コレは驚いた…空中に浮く…コレは悪くないな。


「それならコレが良いな。もっと…そうだな…自分の意思を持っている様なのは出来ないか?大きさはこのくらいで構わない」


「な、何ぃ?…意思を持つだと…フフフ…フハハハ!!」


メフィストは腹を抱えながら大笑いしていた。何か面白い事でも言っただろうか?


「お、お前…フフ…中々面白い事を言う奴だな…うむ、気に入ったぞ。核がコレだけあれば…大丈夫だな。よし、やってみよう」


何かメフィストの琴線に触れたようである。とにかく引き受けてくれるようだ。


「他に要る物は有るか?」


「いや、これで良い。1ヶ月後くらいになるだろう。ギルトに使いを出すから引き取りに来てくれ」


「いくら位になりそうだ?」


「ああ、金は要らん。その代わり、余った核とミスリルが欲しい」


「了解した。宜しく頼む」


「サルナス…とか言ったな。俺はメフィスト=サークリフだ。メフィストと呼んで構わない。今後ゴーレム素材の収集を頼むかもしれんが宜しく頼む」


「もちろん引き受けよう。ギルトに指名してくれれば大丈夫だ。任せてくれ」


そう言って俺はメフィストとガッチリ握手をした。

後はメフィストに任せて、俺達は屋敷を出てそのまま宿に向かった。


宿に着くと受付でリリスがヒマそうにしていた。俺を見ると途端に笑顔になる。メリハリ効いてるねぇ〜。


「おかえりなさい!お部屋の鍵で〜す」


「ありがとう。今日の夕食のおすすめは?」


「今日は牛肉の良いのが入ったからローストビーフにしたの。お酒に合うわよ!」


「ソイツは楽しみだ。世話が終わったら後で行くよ」


「ハ〜イ、お待ちしてま〜す」


俺達は部屋に入りガッツの肉とラッキーの魔光石を用意した。

ガッツにはオークジェネラルの肉を出してやった。まだスパイダーの肉やら沢山有るから大丈夫だ。


世話が終わってから俺は食堂の方に行く。リリスは奥の席を取っておいてくれた。


「エールとオススメを宜しく」


「ハ〜イ、少しお待ち下さ〜い」


エールを飲みながらの香草とスパイスで絶妙に味付けされたローストビーフは格別に美味しかったな。

仕事か一段落したマスターやリリスと話をしながら飲む酒は楽しかった。


案の定、その日は飲み過ぎた。



翌日は少し遅くなったがダンジョンの58階に行く。

もしかするとメフィストの注文があるかも知れないと思ったからだ。


今回はボス部屋のミスリルが中々出なかった。

そんな状況だったので、ミスリルゴーレムの湧き待ちにかなりのゴーレムを狩った。


この時にガッツの新たな攻撃魔法を試す事にした。

ファイヤーブレイドは炎の斬撃を飛ばす事が出来た。横殴りに振り抜くと広角に広がる。中々便利だな…敵が多い時に大活躍しそうだ。

プラズマブレイドは雷魔法の斬撃である。使い勝手はファイヤーブレイドと変わらないが、近くの敵や倒し切れない敵が痺れて動けなくなるのはファイヤーブレイドより効果的だ。


結局、4回目でやっとミスリルが出たのでココで終了とした。

ドロップアイテムはゴーレムの核✕56個、ミスリル✕1、ミスリルの欠片✕2、ミスリルゴーレムの魔石✕4、ゴーレムの魔石が沢山…(宿で数えたら214有った…)

まあ、コレだけあれば、何とかなるだろう。


さて、レベルアップだが俺は10上がり、ガッツは4上がった。ファイヤーブレイドとプラズマブレイドのレベルアップも嬉しい。この階では流石に比較的上がり難くなった様だ。ラッキーは上がらなかったな…もう直ぐかな??


【サルナス】

職業:魔獣使役ビーストテイマー

ランク:D→C

レベル:148→158


HP:694/644→694

MP:311/291→311

攻撃力:664→704(+2030)《✕1.7》

防御力:561→601(+900)《✕1.25》

回避:168→178(+652)《✕1.75》

幸運:832→882

スキル:魔獣武装(ビーストアームス)Lv3、〔ステータス統合〕、鑑定Lv4、〔偽装〕、〔看破〕、《鬼道》、《金剛》、《疾風》✕2、《強奪》、《鉄壁》、《雷光》、ウォーターボールLv3、ヒールウォーターLv8、シャドーミストLv2

装備:剛腕の腕輪、ハイオークのブーツ、金剛の腕輪、疾風の首輪、剛鬼刀、将軍の鎧、ワーウルフマスターの指輪、雷光の指輪


【ガッツ】

種族:ハイトロルメイジ(唯一種)

レベル:35→39


HP:8350/8350→9310

MP:10805/9725→10805

攻撃力:3197→3557(+900)《✕1.35》

防御力:3267→3627

回避:831→923《×1.25》

幸運:101→109

スキル:超再生、状態異常耐性Lv6、筋強化Lv6、ファイヤーフィストLv10、サンダーフィストLv10、ファイヤーブレイドLv1→4、プラズマブレイドLv1→4、アイスブロッカーLv9、《オーガの怒り》、《俊敏》

装備:角の首飾り、ウラヌスナックル


次からは下を目指さないとレベルアップは見込めない様だな。取り敢えず目的は果たしたのでちょっと早いが地上に戻る事にする。



俺は昨日のお礼にとワインを買ってタレットさんトコに顔を出した。

流石にゴーレムの魔石は渡し難いので今回は止めにした。

メフィストの紹介にとワインを渡すと、警戒してた顔を綻ばせて喜んでいた。危ない危ない…やはり渡さなくて良かった…。


「しかし、良くあんな偏屈と話が合ったな?何を聞いてたんだ?」


「ゴーレムの事でちょっと…持って行ったゴーレムの核を見て喜んでいたみたいです」


「はあ?お前…まだ持ってやがったのか??ホントにお前は引きが良いな…」


コッチを見たタレットさんは、呆れた様な顔をしてそう言った。

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