第11話 初めての特殊依頼。

俺はギルマスの部屋に連行…イヤイヤ、連れて行かれた。

鑑定スキルの登録の間にスキルの確認と鑑定スキルを使った依頼についての説明の為である。

水晶の手を置いて鑑定スキルの確認が始まった。


「間違いありません。鑑定Lv3ですね〜」


サリーさんが水晶による鑑定結果をギルマスに伝えた。


「じゃあギルド証を書き換えを頼む。ああそうだ、ランクをDランクに昇格だ。宜しくな」


サリーさんがそのまま俺のギルド証を下に持っていった。


「あのう…Dランクに飛び級…ですか??」


「あのデカいジャイアントスパイダーを一撃で斬り倒したんだ。Cランクでもおかしく無いんだぞ。だがギルド本部の方針でギルマス特例での飛び級が2つ上までしか認められんから仕方無しだ。それに鑑定スキルの仕事を斡旋するのにFランクじゃあ出来ないからな」


鑑定スキルの仕事はレベルも関係有るのか…。


「鑑定スキルの仕事は特殊依頼になりギルドからの指名制だ。指名は俺か副ギルド長がする事になっている。今は依頼が多過ぎて他のギルドに回したりしてるから、直ぐにでも仕事を斡旋出来る。本来ならCランクからなのだがオマエは実質Cランクって事で押し通す」


凄い事言ったな…ソレって完全にエコひいきだからね。それ程鑑定スキルの仕事は大事なのか。

ギルマスのその様な話をしているとサリーさんがギルド証を持ってやって来た。

ギルド証にはDクラスを表す青い色のカードに良く見ると左上に黒い星のマークが3つ入っている。


「Dランクは通称”ブルーカード”と呼ばれ冒険者ギルドでは一人前の証と言われてます。左上の星のマークは鑑定スキルのレベルを表しています。他人にギルド証を見せる時にそこを持って隠す人も居ますよ」


冒険者なら誰もが目指す”ブルーカード”を俺は手に入れた。俺にトカゲの尻尾切りをしたサハリが持ってたこのカードを手に入れて感慨深いものはある。

ちなみにCランクはレッド、Bランクはブロンズ、Aランクはシルバー、Sランクはゴールド、そして頂点に君臨するのは世界に7人しか居ないプラチナのSSランクである。


「じゃあ早速だが特殊依頼を受けてもらおうか。今からオレと依頼人に会って来よう」


「えっ、今からですか??」


「ああ…この依頼はもう1週間も待たせているからな…催促がキツいのさ。頼むぞ!」


ギルマスもかなり追い込まれて居たのだろう…仕方無い、行くとするか。


「…じゃあ行きましょうか」


ギルマスはニヤリと笑い、支度を始めた。

俺はサリーさんと下に向かい特殊依頼のカードを貰う。真ん中に四角い穴の空いたカードだ。


「じゃあ依頼終了時に依頼主から割符が渡されるので、こちらカードに嵌め込んで冒険者ギルドに提出して下さい。その時点で依頼終了となります。今回は依頼先の冒険者ギルドに提出して下さい。報酬はその時点で向こうから貰えます」


なるほと…四角い穴は割符の穴か。普通の依頼とはこういう所も違うのだな。


「そして、これが薬草とボーンラビットの依頼料です」


俺はᖴランクの依頼料である計50銀貨を手に入れた。

そして待っていたラッキーとガッツに「これからまた仕事に向かうぞ」と言うと二体とも嬉しそうな感じに見えた。

俺はポシェットから魔光石を出して俺の頭に乗ってるラッキーに、肉の塊を取り出してガッツに与える。俺は干し肉を噛って空腹感を満たす。


しばらくすると上からギルマスが降りてきて俺達は依頼人の所に連れて行かれた。


「ここって…」


「ああ、オマエも知ってるだろ?『リカルド商会』の名前くらいは」


リカルド商会はシーガルト王国だけで無く各国に支店を持つ世界最大の商会であり、各国の王宮御用達の店である。また、商会の会頭アレックス=リカルドは商人ギルド本部のグランドマスターを担っている重鎮である。

この街、レッドロックスにある支店は王都の本店にも劣らない程の大きな店である。俺の様な下っ端冒険者では中々入れない高級店であり、実際に店に入った事は無い。


ガッツを店の前で待たせておき、店に入ると商人と言うよりどっかの貴族の執事みたいのがやって来た。


「これはゴールドアイ様、いらっしゃいませ」


「よう、ケラルド。支店長は居るか?例の件で来た」


「それは良う御座いました…では、此方へどうぞ…」


広い店内を抜けて2階に上がった更に奥の部屋に通された。

商談用の部屋なのだろう、広くてキレイな装飾がされてる部屋である。俺の宿の部屋より広いな…などと考えていると恰幅の良い男がケラルドさんと早足でやって来た。


「やっと来たか!ゴールドアイ殿!待ちわびたぞ!」


「いやあ〜済まない。知っての通り鑑定持ちは少なくてな…今回は新人だが腕の立つのを連れて来た」


「サルナスと言います」


「私はネレイムと申します。以後お見知りおきを…早速ですがコチラの鑑定をお願い申し上げます」


ケラルドさんが持っていた箱を開けると中には金色の腕輪が二つ入っていた。

一つは装飾はさほどされてない古い感じの物である。

もう一つは装飾が綺麗で宝石を散りばめた金ピカの物である。

俺は早速、鑑定に掛けてみる。


テンペスト神の腕輪︰【レア度:SS級】テンペスト神のアーティファクトで魔石を装着すると一定時間速度が上昇する。〔レベルが500以下の者が着けると呪いにより腕輪が壊れる〕《✕10.0》


テンペスト神の腕輪︰【レア度︰D級】テンペスト神の腕輪という名の装飾品。実用的価値は無い。


俺は鑑定結果を全て伝えた。

するとネレイム支店長は満面の笑みでこちらを見ていた。


「鑑定Lv3の持ち主ですな。見事な鑑定結果です。コレを王都の本店まで届けて欲しいのです」


そう言うと偽物の腕輪を取り出してから箱を閉め、鍵をかけ俺に渡して来る。俺はそのまま箱を受け取った。


「では、行って来ます…あっ、ちなみに何時まででしょうか?」


「王都までは馬車で2週間以上は掛かりますから…1ヶ月の期限だったのですが既に1週間経ってますからね…大丈夫ですかね?」


オイオイ…マジかよ…俺がギルマスを睨むとギルマスは苦笑しながらこう言った。


「ウチで一番速い馬車を無料で出すから、それで行って来い!オマエらなら他に面子揃えなくても行けるだろ?」


「はぁ…仕方無いですね…何とかしましょう」


「おう!任せたぜ!王都の冒険者ギルドで例のカードを出せば金が入る様に手配しとくからな!」


「くれぐれも頼みます…本店で会頭がお待ちですので…」


「分かりました、任せて下さい」


ギルマスと俺は店を出てそのまま冒険者ギルドに戻ると馬車が用意してあり、そのまま出掛けられそうだ。


「それじゃあ頼んだぞ!」


「了解です…報酬弾んで下さいよ!」


「チッ!分かってるよ!早よ行け!」


俺はそのまま宿のアマルフィに行った。宿に今日分の支払いをして荷物を引き取らねばならない。受付にリリスが居たので挨拶をするとリリスはニッコリ微笑みながら言った。


「お帰りなさい。お早いお帰りですね」


「ああ、急な王都に行く仕事が入ったので宿を出なければならなくなった。荷物を引き上げるんで急で悪いのだけど精算しておいてくれ」


「あら‥そうですか、分かりました。これ部屋の鍵です」


俺は部屋に荷物を取りに行く…と言っても着替えの入ったリュックの荷物だけだ。受付に戻り精算を済ませた。


「1ヶ月後にはコッチに戻れるからまた来るよ。運良く泊まれると良いのだけどね」


「はい!お待ちしてますね!道中お気を付けて!」


「ありがとう、じゃあまた」


俺はアマルフィを出るとそのまま馬車で街を出る。俺は魔獣武装(ビーストアームス)で二体とも装着して、そのまま馬車を走らせる。こうすると何故か重さが軽くなるのだ。ガッツの重量がソコソコあるので馬の負担を減らす為である。


こうして初めての特殊依頼を請けて、俺は王都まで行く事になった。

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