第12話 旅の途中。

冒険者ギルドの馬車での移動は快適だ。この馬車には板バネが装着されており振動が少な目なのだ。ギルマスはかなり良い馬車を俺に貸してくれたのだな。


街を出てからしばらくすると俺達を包囲する様に追っ掛けてる奴等がいる事に気が付く。

盗賊の類いなのか?しばらく放っといて馬車を走らせていたが一向に襲って来ない。不思議に思ってたら前の方で道が塞がれていた。なるほと…そう言う事か。俺は馬車を停めて下に降りると一気に加速して道を塞いてた連中の一人を絞め上げた。


「答えろ、お前ら盗賊か?」


「!!て、テメエ…いつの間に…イテテ!!」


「早く答えないと腕が折れるぞ。まだ頑張るか?」


すると他の連中が剣を抜いて襲い掛かって来た。俺は一人を絞め上げたまま『朱刃』を抜き襲い掛かって来た連中を斬り捨てた。


「もう一度だけ聞くが…お前ら盗賊か?」


「う、うるせぇ!!積荷置いていきやがれ!!さもねぇと…ウッ!」


俺が威圧を放つとそいつは黙る。どうやら盗賊で間違いない様だ。俺はそいつを真っ二つに斬り捨てた。そして道を塞いでたやつらを全員斬ってから集まってきた連中も一人ずつ斬り倒してゆく。多分こいつ等は何が起きてるか分からないまま斬られている。俺の動きが速過ぎて見えていないのだ。


そして俺は高見の見物をしていた男に一気に迫る。俺は咄嗟に鑑定を掛けてしまった。


【デカルト】

職業:盗賊(斥候)

ランク:D

レベル:56


HP:350/350

MP:86/102

攻撃力:352

防御力:257

回避:174

幸運:58

スキル:索敵、無音、怪力、ファイヤーランスLv6、アースウォールLv5

装備:鉄の兜、皮の鎧、ブーツ、ブロードソード


へぇ…職業が盗賊って出るのかよ…じゃあ聞かずに鑑定を掛ければ良かったたんだな。無駄な事をしてしまった…。


「よお、デカルト。何で俺を襲ったんだ?」


「て、テメェ!何で俺の名を??」


「職業が盗賊って出てるぞ。さあ言え…何故俺を襲った?」


「オメェがギルドマスターとリカルド商会から出て来るのを見たからさ。それで俺はお前らをつけたのさ」


「なるほと…って事はお前、元冒険者か?」


「ああ、そうだ。さて、そろそろやるか…オレも盗賊の頭だ。仲間をやられて逃げる訳にも行かねえからな!!」


俺にデカルトは隠し持っていたナイフを投げつけた。しかし俺はゆっくりとコチラに向かってくるナイフを難なくはたき落として、一気にデカルトに接近して袈裟懸けに斬って捨てた。


「そんなプライド要らねぇよ…お前はたかが盗賊だろが…」


俺は盗賊の死体を集めてファイヤーブレスで焼いた。塞いでた障害物は道の横に全部ふき飛ばして道を開けた。

本当はこいつ等の遺体を街に持って行けば報奨金が貰えるはずだが、時間が無いのでやめたのだ。まあ、剣とか弓とかはマジックポシェットの中に突っ込んだので売れば金になるだろう。

しかし迂闊だったな…まさかリカルド商会から付け狙われてたとは…ギルマスは気が付かなかったのか?いや、それは無いな…あの人の事だ、気付いてるのにワザと放っといたのだろう。俺を試しやがったな…盗賊を噛ませ犬にするとはヒドイな。


そのまま暗くなるまで馬車を進ませて、本日はこのまま野宿にする。初日なのであまり無理せずに行くのだ。馬の餌しか入ってない空荷同然の馬車は結構速いから馬たちも元気だ。エサとウォーターボールで水をたっぷり与える。

リムーブして魔獣武装(ビーストアームス)を解除してから、火を起こして焚き火をする。馬車の周りに結界石を置いて魔獣避けにする。ラッキーに魔光石、ガッツに肉を上げてから俺も食事にする。

食事を終えたので俺はそのまま仮眠して、ラッキーとガッツは周囲を警戒してくれる。

コレが俺の魔獣使役(ビーストテイマー)としての有利な点である。普通だと何人かのパーティーを組んで行かないと旅は出来ない。だが、俺にはラッキーとガッツが居るので彼らに警戒させれば良いのだ。俺はゆっくり寝る事が出来る。ギルマスが急いで俺を行かせたのもこう言った理由があったからである。


朝、日が昇る前に起きて身支度をする。そして俺は魔獣武装(ビーストアームス)で装備した後、また馬車で街道をひた走る。


2日後、最初の目的地ローザニアに到着した。当初の予定日より1日早い。


ローザニアは街道の宿場町として成り立っている、さほど大きくない町である。王都へ行く者あるいは帰って来る者に都合の良い場所なのだ。湖の水辺に面した宿営地に適した場所に、一軒の宿屋が出来た事から始まったという町である。


俺は宿屋には泊まらずに馬車で過ごす事にする。ラッキーやガッツが泊まれるテイマー専用の宿が一杯だったのだ。馬と馬車の停めれるスペースを確保したら、馬車の中でラッキーとガッツに食事を出しながら待つ様にいう。


俺は食堂を探してそこで食べる事にした。小さな食堂だが、客がひっきりなしに出入りしている。俺は店の扉を開ける。


「いらっしゃい!お一人?」


「はい、一人です」


「じゃあコチラへどうぞ!」


ちゃきちゃきしたお姉さんが案内してくれる。手慣れてるな…。


「何にしますか??」


「お店のオススメは何かな?」


「ウチのウリは何て言ってもローザニアピッツァよ!エールにも合うんだから!」


「じゃあそれを頼むよ。エールは先に持って来てくれないかな」


「は〜い、かしこまりっ!」


お姉さんはスタスタと店の奥に向かう。しばらくするとエールを持って来てくれる。おっ、ここのエールは冷えてるな。珍しいが実に美味い。

エールを飲み終わる頃にローザニアピッツァがやって来た。意外と大き目だな。


「はい!もう切れ目は入れてるからそのまま食べてね!エールのオカワリは??」


「ああ、頼むよ」


「は〜い!かしこまりっ!」


他の客も相手をしながら本当に良く働く娘だなあ…などと感心しながらピッツァを食べる。こりゃあ…中々美味い。野菜と干し肉が入ってるがチーズとの相性が抜群だ。

冒険者になってから美味い料理なんてここ何年も食ってなったからな。『アマルフィ』で美味いものを食べたのが久し振りだった。

あっという間に平らげて料金を払う。うん、帰りもまた来よう…楽しみが増えたな。


店の名前は『湖の霊楽草』と書いてあった。霊楽草とは水辺に生えている光ゴケの一種で疲労回復の効果がある薬草だ。疲れを癒やす店って意味かな…。

俺はご機嫌で馬車に戻り、そのまま寝る事にした。


翌日も日が昇る前から用意をして町を出る。中々順調な感じだな。

それから3日間は何事も無く順調に進んだが、4日目に魔獣の襲撃を受ける…と言うか襲撃を受ける連中に出くわしたのだ。

オークの群れと戦闘になってる様だが、何せオークの数が多過ぎた。このままでは数の暴力で押し切られそうだ。


俺は馬車を降り、オークの群れに突っ込んで行く。


オークの群れはいきなり後方から悲鳴が起こり何事かと思っただろう。俺は『朱刃』を振り回しながらオークを一刀の元に斬り捨てて行く。オークはまた数的余裕があると見て逃げなかったが、それはオークにとっては悪手であった。


「サンダーフィスト!!」


ガッツの魔法を刀に乗せてぶっ放すと10数匹のオークが一気に黒焦げとなる。直ぐに反対側のオークに攻撃を仕掛ける。


「ファイヤーフィスト!!」


オークの群れは俺に半数以上を削られた。そしてオークの群れを率いていたオークリーダーが俺に挑んでくる。


種族:オークリーダー


レベル:72

HP:729/799

MP:120/120

攻撃力:684

防御力:283

回避:128

幸運:73

スキル:突進、肉の壁


正直、今の俺にはザコ魔獣だな…フロアボスだったオークナイトの方がまだ強かった。

俺はやって来たオークリーダーの側に一気に移動して、首を一瞬で斬り飛ばすと、その刀で近くのオークもそのまま斬り捨ててゆく。オークリーダーが死んだ事によりオークの群れは大混乱を引き起こし、一目散に逃げて行った。


結構な数を倒したが俺のレベルは2つしか上がらなかった。しかしながらガッツのレベルが1つ上がったので良しとするか。


俺は刀を鞘に入れ、襲われていた商隊に向かうと護衛の冒険者がやって来た。


「俺の名はヒュース、王都の冒険者だ。助けてもらい感謝する」


「俺の名はサルナス、レッドロックスの冒険者だ。ケガ人が居れば言ってくれ、ヒールウォーターが使える」


「おお!それは助かる!向こうにケガ人が居るから来てくれ!」


俺はヒュースと一緒にケガ人の元に向かう。かなりのケガ人が居たが重傷の人間は少なかった。俺はヒールウォーターを一人づつかけてケガを治していった。


「どうやらコレで終わりの様だな」


「本当に助かった。アンタが早い段階で来てくれたからケガ人がコレだけで済んだ。もし来てくれなかったらヤバかったよ」


「良いって事よ、冒険者は助け合いだからな。本当に間に合って良かった」


「しかしアンタ凄腕だな…Bクラス冒険者かい??」


「いや、俺はDクラスに上がったばかりさ」


「はあ??嘘だろ??俺と同じ訳が無いだろ!」


俺は仕方無いのでギルド証を見せた。ヒュースは目を丸くしている。


「いやあ、ありえねぇ…何か訳有なんだろ?その実力ならBクラスでもおかしく無い筈だが…アレだけ腕が立つのに魔法まで使えるんだからな」


「まあ、そんなトコだよ…もうオークは来ないと思うが念の為に出発までは見送ろう。急ぎの仕事で王都に行かなければならないから送っては行けないが…」


「気遣い感謝するよ。ところでどうする?オークの素材は?」


「そうだな…オークの肉が1頭分有れば問題ない。後は任せるよ」


「オークリーダーのは要らないのか?」


「貰ってくれて良いよ。ダンジョンとは勝手が違うから手間は取りたくない」


「そうか、なるほどな。じゃあこちらで全部引き取るよ」


ヒュースは他の連中とオークの素材を剥いでいた。流石に手早いな…俺も出来ない事は無いのだが面倒なのと、あまり関わらずに早く王都に向かいたいからである。


俺は周囲を警戒しながら待っていると馬車の方から女の子が執事みたいなおっさんと二人で此方にやって来た。年の頃は10歳かもっと上か?あんなに恐い目に合ったのに良く震えずに来る事が出来るなと感心する。


「貴方が私達を助けてくれた冒険者ね!貴方はレッドロックスの冒険者らしいわね?!」


「そうですよ、お嬢さん」


「そうなのね!じゃあ貴方はリカルド商会を知ってるかしら?!」


ん?何でリカルド商会の名前が出て来たんだ??

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