第10話 依頼終了と鑑定スキル。

俺達は西の森に着くと直ぐに魔獣武装(ビーストアームス)をした。ガッツのステータスをスキルの〔ステータス統合〕で攻撃力に全振りしておく。魔獣武装(ビーストアームス)のレベルが上がった為にHP半分のマイナス補正が二体だと掛からないのでHPの心配も無くなった。正直、俺だけでも大丈夫なので、今の状態はかなりのオーバースペックなのだ。しかしダンジョン内での戦闘では常にこの状態だったのでいざという時に動けなくなるのが怖かった事もある。


薬草を採っていると早速グローウルフ達が現れる。グローウルフはᖴクラスに分類される魔獣であるがほとんど群れて現れる。しかもスピードが速いので非常に厄介なのである。その割に依頼主がケチなのでランクを上げれないのが不人気の一因でもあるのだ。

グローウルフ達は俺の周りを囲みながら音を立てないように近付く。俺は知らぬふりをしながら薬草を採り続ける。

するとグローウルフは一気に襲い掛かり俺を噛み殺そうとしたが、俺に傷一つ付けられない。防御力が高過ぎてグローウルフ程度ではかすり傷も付けられないのだ。

それでもグローウルフは俺に襲い掛かって来るので流石にウザくなってきた。俺は襲って来るグローウルフ達に背に担いでいる剛鬼刀をひと振りする…グローウルフ達は太刀筋が見えて居なかっただろう。3体のグローウルフが瞬間に口から胴体にかけて真っ二つに分かれていた。


「こいつ等じゃレベルアップもしないな…」


薬草を採り終わった後でグローウルフの牙と魔石を回収する。後はファイヤーブレスで焼き尽くす。

しかしながら血の匂いに惹かれてグローウルフが10体程現れた。まだ2種類の薬草採集が残ってるので早目に片付ける。

10体を始末するのも一瞬である…少なくともグローウルフ達にはそう見えただろう。自分が知らない間に斬られて居るので鳴き声も無く崩れ落ちる。俺は全てのグローウルフの牙と魔石を取ってから亡骸を焼き切った。


次の薬草を採っている時は何事も無かったのだが、その次の薬草を採りに行くと何か大き目の魔力を感じた。俺は気配を消して何者なのか見定める…するとキラーベアをむしゃむしゃと喰ってる魔獣が居る。俺はすかさず鑑定を掛ける。


種族:ジャイアントスパイダー


レベル:87

HP:3230/3490

MP:230/256

攻撃力:1460

防御力:1290

回避:467

幸運:61

スキル:毒、麻痺、出血、硬糸、粘着糸


これは厄介な相手である。本来ならこの地域には出て来ない筈のジャイアントスパイダーがやって来ていたのだ。

しかもジャイアントスパイダーは本来ならDクラスに分類される魔獣で有るが、この個体はデカいしレベルもかなり上位である。Cクラスは余裕で超えるレベルと考えられる。


ジャイアントスパイダーは俺に気付いた様でゆっくりと此方に血だらけの顔向ける。

するといきなり糸を吐いてきた!!俺はその糸を避けると、一気にジャイアントスパイダーの側まで移動して剛鬼刀を軽く振り下ろす!

ジャイアントスパイダーには一連の俺の動きは見えていなかっただろう…ジャイアントスパイダーの頭の部分が胴体とキレイに離れていた。

俺単体の攻撃力だけでもジャイアントスパイダーには勝てる数値なのだが、その上に〔ステータス統合〕でガッツのステータスを全部乗せしてるので攻撃力だけでも1万は楽に超える。これは完全にオーバースペックである。だから軽く振ってる剛鬼刀がまるでゼリーを斬る様な手応えで、硬い外皮のジャイアントスパイダーの頭を斬り落とせたのだ。


ジャイアントスパイダーは魔石を始め外皮や毒腺、牙や爪、肉など捨てるところの無い魔獣である。コレ専門で狩る中位の冒険者も居るくらい美味しい獲物なのだ。そんな訳で乱獲もあり中々これほどの大物には出会えない。俺はステータスの通り運が良いのだ。

とりあえずジャイアントスパイダーをマジックポシェットに入れた。肉以外の素材は全部売る事にしよう。肉はガッツの食料だな。


レベルの高いジャイアントスパイダーを倒したお陰で俺のレベルも二つ程上がった。

そして鑑定Lvが3に上がった。鑑定をしようとすると俺とガッツとラッキーの名が出てきた。俺の名前を意識すると俺の単体ステータスが出る様になった。


【サルナス】

職業:魔獣使役(ビーストテイマー)

ランク:ᖴ

レベル:102→104


HP:468/460→468

MP:203/199→203

攻撃力:434→444(+2030)《✕1.7》

防御力:377→385(+55)《✕1.2》

回避:122→124(+32)《✕1.2》

幸運:602→612

スキル:魔獣武装(ビーストアームス)Lv3、〔ステータス統合〕、鑑定Lv2→3、《鱗強化》、《鬼道》、《金剛》、《疾風》、《強奪》、ウォーターボールLv3、ヒールウォーターLv8、シャドーミストLv2

装備:剛腕の腕輪、鱗の兜、鱗の具足、鱗の篭手、鱗の鎧、ハイオークのブーツ、金剛の腕輪、疾風の首輪、剛鬼刀


こうして見ると攻撃力だけが剛鬼刀のせいで歪に見える。やはり防御力の底上げや速度を上げる事も考えて防具や装備品を考えないと駄目かもしれない。


そして俺はジャイアントスパイダーが食べていたキラーベアから牙と爪と魔石を手に入れる。本当は毛皮と肉も取れるのだが、変色した皮からしてジャイアントスパイダーの毒にやられてるはずなので焼く事にした。


そして3種類目の薬草もゲットしたので、ボーンラビットの居る森へ直ぐに向かった。西の森から数キロ離れている通称”ボーンラビットの森”の中で生活している。

此処はボーンラビットの隠れ家となるベリノークと言う蔦が大量発生しており、この蔦がボーンラビットが出入り出来る大きさで、くるくると巻きながら成長する為に隠れ家になるのだ。

その森を縦横無尽に素早く逃げるので中々捕まえられない。弓や魔法の使い手でも手こずる程の速度で中々難しいのに、他の職業の冒険者では捕まえるのはより困難な魔獣なのだ。だから不人気の依頼になってしまうのは仕方無いだろうな。

だが、俺はボーンラビットよりもはるかに速い為に、仕留めるのも容易である。ものの30分で予定の数の3倍仕留めた。とりあえずは依頼分だけ出して後は仕舞っておけば次に依頼が出た時に直ぐに出せるという寸法だ。


「さて、帰るとするかな。リムーブ!!」


俺はガッツとラッキーを解除して、街へ一緒に帰る事にした。


街に入るとそのまま冒険者ギルドに行く。昼前なので閑散とした感じである。受付に行くとサリーさんがアクビをしていた。


「ふわあ〜…!!サ、サルナスさん!!ど、どうしたんですか??」


「どうしたって…依頼終わったから帰って来たんだが…」


「はあ??そんな訳無いでしょう!一体何があったんですか?」


サリーさんは信じてくれない様だ。仕方ないのでポシェットから薬草とボーンラビットを机の上に出してやる。サリーさんはポカ〜んと口を開けている…。


「以上。依頼終了」


「…そ、そんな…まだ昼前なのに…」


「あ、そうだ…西の森でグローウルフとジャイアントスパイダーを倒したんでそれの査定と買い取りもお願いしたいのだけどね…」


「ジャ、ジャイアントスパイダー??ちょ、ちょっとお待ち下さい!!」


サリーさんが慌てて奥に向かう。慌てると転ぶぞ…と思ってたら案の定コケてた…大丈夫だろうか?しばらくするとギルマスがサリーさんとやって来た。


「よおサルナス!ジャイアントスパイダー狩ったって??向こうで見ようか!」


奥の解体場は俺の獲物だらけである。俺はギルマスに案内された奥の空いてる場所にジャイアントスパイダーをポシェットから出した。すると担当の人がやって来てため息をついた。


「オイオイ…また大物を持って来やがったな…」


「デカいですよね。確かレベル87でした。キラーベアを食ってましたよ」


「はあ??レベル87って…サルナス!お前鑑定スキル持ちなのか??」


「あれ?言ってませんでしたっけ?…」


「聞いてねぇよ!ったく…オマエは一体どうなってんだ…もっと早く言えよ…」


するとギルマスの後ろに居たサリーさんが俺に説明してくれた。


「鑑定スキル持ちは登録すればその手の依頼も受けれますよ」


「えっ?そうなんですか?それは知らなかった…」


ギルマスは呆れたようにため息をつきながら続ける。


「まあ、知らねえのは無理もねぇか。鑑定スキルは貴重だからな。特殊な任務を受ける事も有るのさ。そうだな…お宝の運搬は多いな。まず最初に鑑定して確認してからお宝を護衛を兼ねて持って行き、目的地で鑑定してから受け渡しするんだ。お互いに騙されない様にな。後は調査任務か…その場所の特殊な魔獣を調べたり、分布を調べたりと多岐にわたる。依頼は王宮から辺境伯などの領地持ちの依頼だから美味しい依頼だ。とにかく後で登録しとけ。レベル2も有れば結構良い稼ぎになるぞ」


「レベルは3に上がりました…ジャイアントスパイダーを倒して…」


「マジか??なお良しじゃねぇか!!ウチのギルドじゃレベル2以上は3人しか居ねえからな。依頼もこなせ無いから正直困ってたんだ。こりゃあツキが回って来やがったぜ」


なるほと…俺はどうやら貴重な戦力になる様である。やはり鑑定スキルは食いっぱぐれが無いんだな。


「それにしても綺麗な切り口だな…この大きさのジャイアントスパイダーだとかなり硬い筈だが…」


「この刀で斬ってますんで…斬れ味は抜群ですよ」


と俺が剛鬼刀を抜いて見せると担当の人が目を丸くしている。


「オイオイ…こりゃあ…剛鬼刀…『朱刃』じゃねーか?!こんなモンどうしたんだ??」


「ああ、コレはフロアボスだったオーガリーダーを倒した時の討伐ドロップアイテムですよ。罠で飛ばされたフロアがオーガハウスみたいなトコで…」


それを聞いたギルマスと担当の人の顔が引きつった表情になった。何かヤバい事言ったかな?


「オマエ良く生きてたな…それ完全に殺しに掛かってる罠だぞ…」


「しかし、この『朱刃』をドロップ出来たのは相当運が良いぞ…討伐のドロップでも滅多に出ないからな」


「えっ?討伐すれば出るんじゃないですか??」


「馬鹿言うな、普通はオーガリーダーの角が出るはずだぞ。運良く刀が出てもオーガリーダーの刀とかだ。この『朱刃』が出るのは何百回に一回とか…かなり稀なケースだよ」


「とにかくオマエのデタラメな強さとヒキの良さはよーく分かった。とりあえず登録して来い」


「後、他にあるなら獲物を出しておけよ。明後日にジャイアントスパイダーも片付けるからな」


俺は担当の人にキラーベアの魔石と牙と爪、グローウルフの魔石と牙を渡した。かなり顔が引き攣っていたが大丈夫だろうか…。


「あっ、ジャイアントスパイダーの肉だけは引き取りたいのでよろしくお願いします」


「ん?肉だけか?素材は良いのか?」


「ええ、お願いします」


「むう…それならジャイアントスパイダーの外皮は少し持っておけ。防具の素材になるからな」


「ああ、なるほと…ありがとう御座います。よろしくお願いします」


「おう!任せとけ!」


担当の人が気を利かせてくれて助かった。明後日には何か持って来ないとな。

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