第9話 金も依頼も使いよういよう。

おっさ…いや、ローラはしばらくするとギルド証と何かを持って戻って来た。


「ハイ、コレがギルド証よ。大事にしてね〜。無くすとお金掛かるわヨ!」


何処のギルドでもギルド証は最初は無料…と言うより登録料に入ってるのだが、再発行はペナルティーを課す場合もある。それはギルド証の偽造を防ぐ為だ。


「で、ガッツ君にはコレ。ラッキーちゃんはコレよ。着けてみてちょうだい」


ガッツにはテイマーギルドの使役魔獣の証である紋章のネックレス、ラッキーには紋章シールである。これを着けていれば野良魔獣と間違えられる事は無く、街に自由に入れるのだ。


「ありがとう御座います。コレで安心です」


「良いのよぉ〜。コッチこそ貴重な魔獣が見れてとってもハッピーでウレシイわ。何かあったらアタシに言ってネ!」


とローラはウインクした。良い人だが慣れるまでは時間が掛かりそうだな…。

そして、ローラは更に話し始めた。


「これ程レアな魔獣でもテイマーギルドでは中々仕事は回せないわ…ゴメンナサイね」


「それは仕方無いですよ。此処の仕事には向きませんからね」


「理解してくれてるのネ…此処では荷物運びが主力だし、やはりワイバーンやレッサードラゴンが花形なのヨ…」


テイマーギルドでは荷物運びが主力で、中でも空中を人や荷物を運べる魔獣が花形なのだ。逆に戦闘に使える魔獣は冒険者ギルドで重宝される。ウチ等はかなり冒険者ギルド寄りだから、此処からの仕事は皆無と思った方が良い。いや、むしろ此処の仕事する位ならば冒険者ギルドの仕事の方がよっぽど儲かるのだ。

だからテイマーでもテイマーギルドには登録だけという人間は多いのである。


「まあ、稼ぎは冒険者ギルドで出来ますから問題有りません。また魔獣の事で何かあったら相談に乗って下さい」


「もちろんヨ!アタシ、こう見えて此処じゃあ頼りにされてんのヨ!」


と、ローラはまたウインクした。


「ローラさんの魔獣に対する扱い方を見れば、テイマーなら誰でもそうなりますよ」


「あら、ウレシイ。個人的にもウエルカムよ!」


「そっちはちょっと…」


「まあ、冷たいのねェ〜まあ良いわ!また何時でもいらっしゃい!」


「ありがとう。あっ、魔獣と一緒に泊まれる宿って心当たりあります?」


「もちろんヨ!このギルドを出た右の方を少し行った先に『アマルフィ』って宿が有るけど魔獣オッケーよ!テイマーに人気の宿で食事がとっても美味しいの。アタシの紹介だって言えば大丈夫ヨ!」


「ありがとう。行ってみるよ」


俺達はローラに見送られてテイマーギルド出た。ローラに教わった宿屋に行ってみる。入り口がデカい…魔獣専門の宿なのかな?


「いらっしゃいませ〜」


「こんにちは。テイマーギルドのローラの紹介なんだが3日ほど宿泊したいのだが…」


「あら、ローラから?珍しい!一階の奥の部屋ならそのコとも大丈夫ですよ〜」


「それは助かる。いくらかな?」


「一泊3人分で銅貨30枚になります。ウチは人も魔獣も同じ額なの。それでも大丈夫?」


「いや、それで良いよ。思ってたより安いから助かる」


俺は銀貨1枚を出して


「釣りは取って置いてくれ。また世話になるかもだから」


「ありがとう御座います!お食事もやってますので是非いらして下さいね!」


「ああ、もちろん。ローラからも食事が美味いと聞いてるからね。楽しみにしてるよ」


「私はリリスって言います。何かあれば何時でも言って下さいね!」


「ありがとうリリス。じゃあまた」


俺はラッキーとガッツを連れて奥の部屋に入った。入り口も大きくガッツも無理なく入れる部屋だ。中に入ると荷物をおろして早速、ガッツとラッキーに食事を出す。二人の食事用の肉と魔光石はたっぷりと中に入ってる。

俺は後で食堂で飯を食うのでここでは食べない。


「ココニ、ズットイルノカ?」


「う〜ん、ギルドの換金が三日後だからなあ…ギルドで依頼でも受けるかな。俺もランクを上げないと」


「オレ、ガンバル」


「そうか、頼むぞ。もちろんラッキーもな」


ラッキーも任せろとばかりにぴょんぴょん跳ねていた。


夜になって俺は宿の食堂に行ってみる。ラッキーとガッツは部屋でゆっくりしている。食堂は人気なのか大勢の客でごった返していた。俺がしばらく待とうかと思ってたら奥の方から声を掛けられた。


「お客さ〜ん、コッチどうぞ〜!」


呼んだのはリリスだ。コッチでも働いてたのか。俺は言われるままその奥の席に座った。


「何になさいますか??今日のオススメはボーンラビットのシチューですよ!」


「じゃあ、オススメを貰おうかな」


「は〜い!少々お待ち下さいね〜」


しばらく待ちながら食堂内を見ていると宿の客よりも食べに来ている人間の方が多い。やはり評判の店なのだな。


「お待たせしましたぁ〜」


リリスが持って来たボーンラビットとのシチューはかなり大きな器に持って出てきた。


「大盛りはサービスですよ〜」


とリリスが小声で言ってきた。中々商売上手だな。俺は「ありがとう」と小声で返して食事を頂く。

うん、これは美味い。ポーターの頃はコチラ方面には来なかったから知らなかった。こんなに美味しい食堂ならもっと早く来てれば良かった。

食事を終えた後でリリスにお代とは別に銅貨を少しだけ渡す。


「席の予約代だよ。ありがと」


リリスは嬉しそうにポッケにしまってた。お金が稼げるとこのくらいの事は出来る。良い宿だしリリスを味方につけるのは悪くない。


部屋に戻るとガッツはもう寝ていたが、ラッキーが起きていて俺の所に飛んで来た。テイムした時とは姿が大分変わったけどこう言う所は相変わらずである。


翌日、俺達は冒険者ギルドに向かう。

俺はFランクの請けれる仕事を探した。有ったのはいくつかの薬草採集とボーンラビットの間引きだった。

俺はそれを剝して受付のサリーさんの所に持って行った。


「サリーさん、これを請けたいのだけど」


「サルナスさん、依頼請けるなら朝一番で来ないと良いのは持って行かれちゃいますよ〜」


「知ってるよ。んで、この依頼がずーっと貼りっぱなしになって困っちゃうんでしょ?」


「うう…まあ、そうなんですけどね…」


「そういうのを請けて貰えるとサリーさんは嬉しくないですか?」


「もちろん助かりますよ!依頼主からは催促来ますし…」


「って事はギルドへの貢献になりませんかね?」


「まさか…それを狙ってですか??」


「正直、この前のドロップアイテムが結構な額になりそうなので、割の良い仕事をぶん取らなくても良いですからね。そうしたら割に合わなくてもギルドに貢献出来る依頼の方が先々を考えれば良い依頼なのですよ」


「なるほど…考えあっての事なのですね…でも正直助かります」


「この3枚の薬草採集は値段の割には危険も有るからね…これじゃあ皆やりたがらないよ。ボーンラビットは逃げ足早いから中々捕まえられないしね」


「そうなんですぅ〜。だから皆やりたがらないんですよねぇ〜」


「とにかくしばらくはこのスタンスで依頼を請けるよ。何か面倒なのが有れば相談して。悪い様にはしないよ」


「ありがとう御座います!じゃあコレよろしくお願いします!」


「了解。じゃあ行って来ます」


俺達は冒険者ギルドを出て、薬草採集に向かう事にした。この3枚の薬草採集をする為には、西の森に入らないと採れないのだが、此処にはFクラスには少々キツい魔獣が居る場所なのだ。だから皆やりたがらないのである。

俺は薬草採集の場所を把握している。ポーターの頃に節約の為に自分で集めていたのだ。


西の森にはたまにグローウルフとキラーベアが出る事がある。両方ともDランクの魔獣なので出会うと厄介だ。

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