第55話 須崎と照魔
雪代先輩は照魔くんが居なくなりブチキレた。
そして.....2日後。
ニコニコしながらもその恨みの笑顔のまま親族の元へ向かうと言い出して.....1人で行ってしまったのだが.....。
俺達も雪代先輩の為に手助けしたいとあれ程言ったのだが、親族間の争いだしねぇ、と雪代先輩は単独で乗り込んで行ってしまった。
どうする事も出来ず。
俺達はもどかしい気持ちを抱えていて顔を見合わせていた。
それから雪代先輩の新幹線に乗って行くその姿を見送った.....のだがその直後の事。
事態は大幅に急展開した。
きっかけはとある公衆電話からの俺への電話である。
その相手は.....何でか知らないが。
それは須崎だった。
俺は愕然としながら声を聞き続ける。
というかコイツが俺に電話?有り得ないんだが、と思いながら、だ。
電話番号は多分だが定森先生が教えたか何かだろう。
俺は警戒しながらも言葉を発する。
「.....お前。何の用だ」
『別に。アンタに用事は無い。だけどアンタに電話して欲しいって言われて縋って来た人間が居るから面倒だけど電話した』
「.....は?誰だよ」
『.....コイツ照魔とか言ってんだけどさ』
俺は愕然とした。
一体どういう事だ。
雪代先輩は今、新幹線で親族の元に行ったばかりなのに。
どうなっているのだ。
つうかそもそもコイツは何処に居るんだ。
まさかなんだが。
「須崎。申し訳ないけどソイツを迎えに行くまで一緒に居てくれ。ソイツは.....その」
『は?馬鹿じゃ無いのアンタ』
「.....良いから。頼む。お願いだ。誘拐されたんだよソイツ」
『.....アンタ。頼むったって私はアンタを恨んでいる。.....だから最悪な目に遭わせたりするかもよ』
「それをしない。お前は.....信じているからな」
その言葉に須崎は、馬鹿じゃないの、と言葉を発する。
しかしさっきの、馬鹿じゃないの、という言葉よりも.....何か変わっていた。
俺はその様子に笑みを浮かべながら、頼む、と言いつつ。
そのまま須崎に場所を聞き、迎えに行った。
その場所は.....定森先生と息抜きで遊んでいた場所で遊園地の前であり。
俺は照魔くんと無事、再会した。
その間、須崎は何もしていなかった。
変わったなコイツと思いつつ。
「.....雪代先輩が危ないな.....」
と思ってしまい夜空に必死に電話を掛けてもらっているが。
電話が繋がらない。
どうなっているのだ.....雪代先輩。
俺は不安で仕方がない、と思っていると。
須崎がだらそうに俺に向いた。
そして睨みつけてくる。
「山寺」
「.....何だ。須崎」
「アンタが今現在、何に悩んでいるか知らないけど。.....頭使えよ。アンタは私よりも頭が良いと思うし」
「.....お前.....」
何だコイツ。
結構変わったな.....、と思う。
俺は思いながら落ち着く。
随分と.....定森先生に鍛えられてんな、と、だ。
そして改めて電話する。
すると繋がった。
「もしもし!雪代先輩!大丈夫っすか!」
『罠だったね。.....どうやら』
「.....え?」
『親族は照魔の事はどうでも良かったみたい。.....私だったんだよ。出汁にしたんだ照魔を。それで私をこの場所に呼び戻したんだ』
「.....まさか.....」
『つまり親族は私に用だったんだ。.....すまないけど私は暫くそっちに戻れないかも。ゴメンね』
俺は青ざめる。
そして何か出来る事はないか.....と考える。
まさかこんな汚い真似をするとは.....、と思う。
それから.....ベンチに腰掛けた。
すると俺の真横に須崎が腰掛ける。
「.....何やってんだよお前」
「.....別に。何処に座ろうがアンタに関係無いし」
「はあ?鬱陶しいな」
「.....私さ」
「.....?」
少し考えたんだわ、と飴玉を舐めながら空を見上げる。
それから.....ほうっと溜息を吐く須崎。
俺はその姿に?を浮かべる。
何だよ一体、と思っていると。
「定森に出会ってから思ったけど。山寺がどんな悩みだろうが知ったこっちゃ無いけど。.....私はアンタにした事は償わないといけないって思い始めたんだ」
「.....お前.....」
「.....何だろうな。気持ち悪いっていうか。もどかしいっつーか」
「.....」
そして須崎は俺を見てくる。
汚物を見る様な目だが。
望みの有る感じだ。
俺は?を浮かべて見ていると。
アンタはそれで諦めるの?、と言ってくる。
「私はアンタを観察していた訳じゃ無いけど。アンタは頭が良いでしょ。頭が冴えていたわ。昔から。諦めんな」
「.....須崎お前.....」
「.....なんか大切なら取り返せ。無理矢理でも。これなんかヤバいんだろ?色々と」
「.....そうだな。ヤバイっちゃヤバいな」
「アタシにはアンタらのやっている事は知ったこっちゃ無いけど。.....アンタならやれるよ」
それから須崎は立ち上がってから照魔を、俺を、警戒している夜空を見る。
定森に教わったしな。
恩を返すのは当たり前だからな、と言い出す須崎。
俺は.....その姿に驚いて目を丸くしながら須崎を見る。
マジに変わってんなコイツ.....と思う。
人ってこんなに変わるんだな。
「.....じゃ。アタシは定森が待っているし」
「.....おい。須崎」
「.....何かまだ用?」
「.....サンキュー」
「.....ハァ?いきなり意味分から無いし。馬鹿なの?アンタ」
言いながらも少しだけ柔和になった須崎。
そのまま須崎はかったるそうに定森先生が待っているのはそこなのか遊園地の中にブラブラと去って行った。
俺は複雑なままその様子を見送ってから。
照魔くんに向いて見る。
何もされてないか?、と聞く。
すると照魔くんは、はい。むしろ飲み物を買ってくれました、と答える。
俺はまた見開いた。
「.....変わったな。須崎は随分と」
「.....そうだね。.....有り得ないね。.....お兄ちゃん。変わり過ぎて気持ち悪いかも」
「.....だな。.....それはそうと行ってしまった雪代先輩だ。取り敢えずみんなを呼んで考えよう。サークルとかに長谷川先輩とか呼んで」
「.....だね.....」
そして俺達は対策会議を開く事にした。
雪代先輩を奪還する作戦を、だ。
そうして.....サークルにみんなが集まる。
入館証を持ったりした奴らが、だ。
さて.....どうしたもんかな.....。
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