第48話 単位認定試験の対策

速水勇が捕まった。

この人物は千佳の親父さんに該当する人物である。

まさかこんなにいとも簡単に捕まるとは思わなかった。

あっけない最期だった気がする。

こんなもんなんだろうな、人生ってのは。


「千佳。親父さん.....捕まったな」


「.....そうだね。.....まさかこんなに簡単に捕まるとは思わなかったけどね」


「千佳さんには悪いけどこれでもう安心じゃない?お兄ちゃん」


「.....まあそうだな。一応はな」


俺達は家で会話しながら。

勇が捕まったのでこの先をどうするかを考えていた。

千佳の家の事とか、だ。

俺は顎に手を添えて考える。

それから.....千佳を見た。


「家に帰るか?千佳」


「.....そうだね。これ以上は迷惑は掛けられないと思うから引っ越そうかな」


「一応.....日常が戻って来るね」


「.....そうだな。確かにな」


思いつつ俺は.....千佳を見つめる。

千佳は、離れたく無いけどねいー君を愛しているから、と頬を赤く染める。

それから俺の頬にキスをした。


お、オイオイ.....。

俺は赤面しながら千佳を見る。

千佳は笑顔を見せる。


「私はいー君を愛しているからね」


「ふぉー!あつーい!」


「からかうなよ夜空.....んで千佳!いきなりキスをすんなよ!」


「アハハ」


頬を赤く染める千佳。

そして俺は盛大に溜息を吐きながら.....苦笑した。

それからじゃあまた運ばないとな、と言葉を発する。

夜空は、うん。そうだね、と笑顔を浮かべる。

その言葉に千佳は、有難うね、と笑みを見せた。


「さて.....そうなるとまた車を動かさないといけないな」


「ごめんね。有難う。いー君」


「早く動かないといけないかな。お兄ちゃん」


「まあ確かにな。.....取り敢えずは急ぐか」


にしても.....うん。

仮にも捕まって良かったな。

幸せが取り戻せるわけじゃ無いけど.....取り合えずは、と思う。


考えながら俺は.....天井を見上げる。

それから目を閉じて開いた。

頑張ろう。

そう思いながら、だ。


「取り敢えずは.....そうだな。何時運ぼうか」


「.....一応、科目単位認定試験が終わってからにしようか」


「そういやもう直ぐだな。急ぐか」


「それとテストがあるよ」


「そ、そうですね」


もー。いー君はちゃんと勉強しているの?、と問い詰めてくる千佳。

俺は、そ。そうだな、と曖昧な返事しか出来なかった。

そして冷や汗をかく。

夜空もジト目で俺を見てくる。


お兄ちゃん。そんなのじゃ駄目だよ。雪が悲しむから、と言う。

そ。そうですね。

何かみんなに出会ってからかなり疎かになっているからな確かに。

考えながら俺は改めて計画を立てる。


「でも千佳さん。お父さん.....の事。.....その.....」


「.....これからの事とか?そうだね。仕方が無いと思ってるから大丈夫。それに私に迷惑が掛かっているけどお父さんとは縁を切るつもりだよ。お母さんと一緒に生きていくから」


「.....ですね」


そして千佳は前を見つめる。

それから意を決した様に顔を上げた。

俺を柔和に見てくる。

そして立ち上がりながら拳を握る。

鼻息を荒くしながら、だ。


「もうお父さんの事は忘れよう。みんな。仕方が無い人は仕方が無いから」


「.....まあ確かにな。変わらないと思うから。.....取り敢えずはお前をサポートするよ。全力で」


「.....私も雪も明日香もね」


有難ういー君。

そして夜空ちゃん、と穏やかな顔をする千佳。

俺はその瞳に全てを込めている。

そんな感じがした。

俺は少しだけ笑みを浮かべて前を見る。


「ところでお兄ちゃん。千佳さんとデートしないの?」


「.....テスト有るしな。デートは出来ないよな」


「うーん。そうなんだ。じゃあ.....」


そこまで言い掛けると。

また突然の様に夜空のスマホが鳴った。

それから.....夜空は画面を観てビックリしながら後にする。

俺は?を浮かべながら千佳と顔を見合わせた。

何だろう、と思いつつ。


「いー君。次デートするなら何処が良いかな」


「.....まあ簡単に言えば.....ショッピングモールだろうな。そこら辺なら時間潰せるし」


「そうだねぇ。お互いに似ているね。やっぱり考えは」


「だな。お前と俺は一心同体だ」


そして笑みを浮かべて千佳を見ていると。

夜空が戻って来た。

それから顎に手を添えている。

お兄ちゃん大変、と、だ。

また何かあったのか!?、と思ったが。


「春香ちゃんだった。告白したって。.....照魔くんに」


「.....ふぁ!?マジで!?」


「うん。.....それで.....照魔くんは頷いたって」


「凄い!」


え?でもアイツ雪さんが好きだったんじゃないのか?

考えながら俺は.....目を丸くする。

その答えを直ぐに夜空は言ってきた。

笑みを浮かべて、だ。


「照魔くんは雪さんの事を諦めたみたい。.....なんて言うか.....無理と思ったみたいだね」


「そりゃまためでたいのかめでたくないのか分からないな」


「でも何で夜空ちゃんに相談したんだろう?」


「携帯小説みたいな感じで想いを繋ぎましたからね。フフフ.....」


怪しい笑みを浮かべる夜空。

そんな事をしていたんかコイツは。

夜空は相変わらずだな。

俺は苦笑いを浮かべながら夜空を見る。

夜空はニコッとしていた。


「有難うな。夜空」


「.....これぐらい朝飯前だよ。うん」


「.....やれやれ。でも人の恋愛に干渉するなよ?あまり」


「そうだね。確かに。もう止めるよ」


夜空は反省した様に俺に舌を出す。

俺はその事に対して、やれやれ、と思いつつ千佳を見た。

千佳は涙を拭いながら、でも良かった、と呟いている。

相変わらず.....心が綺麗な奴だ。


「私達も恋も勉強も頑張らないとね」


「まあ恋愛イチャイチャ具合なら負けないしな」


「そうだね。アハハ」


それから俺達は笑い合いながら。

この先のテストの事などを考える。

また単位認定試験期間に突入するのだ。

やらなければいけない事はやろう。

先の道は何も分からないけど。


嫌気はするがまあやれる事は全部やれる筈だ。

考えつつ俺は.....改めてまた勉強をする決意を固めた。

千佳の父親の勇が捕まって随分.....幸せになっている気がする。

気のせいかもしれないが、だ。

取り敢えずは.....これまでの勉強を復習しなければ。

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