悪魔の化身の最後

第47話 速水勇、逮捕される

千佳と一緒と言うか。

恋人同士になってから1ヶ月は経つと思う。

この間に.....本当に色々な事が起こってしまった。

そして幾度となく絶望したが。

取り敢えずは.....今は落ち着き始めているのでそれは良かったと思う。


地に落ちた奴も居たが、だ。

考えながら俺は.....雪代先輩とカフェのパラソルの下に一緒に居た。

相談相手に雪代先輩が良いと思ったのだ。

雪代先輩は、そうか。君も大変だね、と言ってくれる。

そして俺を見てくる。


「.....私が手助け出来る部分があったら言って欲しいね。例えば金銭面とか。心配要らない.....ああ。そういえば今困っているんじゃ無かったっけ?」


「.....大丈夫です。自分達で何とかしますよ」


「.....でも何かあったら言ってね。お金あげるから。君達には本当に感謝し切れないぐらいに感謝があるから」


「.....雪代先輩は上手くいっていますか。長谷川先輩と」


「私はそうだね.....まあそれなりだよ。しかし長谷川君という奴は.....全く」


そりゃそうだ。

あんな事をするとは思わなかったしな。

考えながら赤面して額に手を添える雪代先輩。

俺はそれを見ながら笑みを浮かべてコーヒーを口に含む。

それから.....雪代先輩をまた見た。


「やり過ぎだよね。でも.....嬉しかった。正直。でもねぇ。君達には参るよ」


「俺は、助けて下さい、って言っただけっすよ。本当に」


「その時点で計画的じゃない。全くね」


「ハハハ」


そういえば照魔くんとはどうなっているのだろうか。

考えながら俺は雪代先輩を見る。

四角い眼鏡になっている雪代先輩はそれを外しながら、照魔との事かい?、とニヤッとする。

俺は苦笑いを浮かべながら、そうっす、と隠さず話した。


「.....相変わらずだよ。.....照魔は帰って来てと言うだけだ。.....でも私は帰るつもりは無いけどね。そう言ったら何か知らないけど.....私の口座に3億円振り込まれたよ。何を目的にしているか知らないけどね。.....でもまあ金なんて使わなければ紙屑だけど」


「.....相変わらずっすね。そういう事を平然と言うの」


「私は本音を言っているだけだよ。だってそうだろ?お金は汚いしね」


「.....確かにです」


「だから自由に使って良いという意味だと思う。.....汚いお金だけど君達を助ける事が出来たらそれは汚くなるのが避けられると思う」


雪代先輩は目線だけずらして苦笑する。

俺はその言葉に、そうっすね、と返事した。

そして雪代先輩は笑みを浮かべる。

それからこう話してくれた。


照魔は.....可愛いよ。

私はもう会うつもりは無かったけどね。

だけど照魔は私に接触してくれた。

照魔は諦めなかったんだ。

だから好きだね。彼の事は、と笑みを浮かべる。


「この恩義は忘れないよ。イスカくん。君は変わらずに居てね。私を助けてくれた君で居てね」


「.....そうですね。大丈夫です」


「私は君の味方だから。何があっても君を守るよ。だけど.....それでも限界があった時は.....私(達)が守るから。言ってね」


「.....有難いっす」


俺は笑みを浮かべつつ。

雪代先輩を見る。

すると雪代先輩は、さて。この後どうしようか?、と笑顔を浮かべた。

俺は、そうですね。どうしましょう、と話す。


「まあ取り敢えずは.....遊ぼうか。アハハ」


「でも暇じゃ無いんじゃ.....」


「私は暇だよ。今はね。だけど忙しくはなるよね。.....大学もそうだけど勇さんを探さないといけないしね」


「.....ですね」


今。

何をどうしているのだろうかあの男は。

須崎を破壊しそして俺達を壊したアイツは。

考えながら俺は.....空を見上げる。

それから.....眉を顰める。


「.....しかし君にも迷惑を掛けているね。本当に。私は.....私自身が勇さんと一緒にシャーロックホームズの弟子の様に巻き添えで滝壺に落ちるつもりだったんだけど。それも失敗したから。ごめんね」


「分かります。.....でもその。1人で抱え込まないで下さい。俺達が居ます」


「アハハ。そうだね。助かるよ」


「俺達はもう貴方から知らんぷりはしませんから」


「.....そう言ってくれる君は本当に.....」


そこまで言い掛けた所で突然、雪代先輩の携帯が鳴った。

それから雪代先輩は、すまない、と立ち上がって会話する。

俺はその言葉に右手を上げながら答える。


それから外を見た。

そして雪代先輩は、もしもし?、と会話し始める。

すると。


「.....え?」


「.....?」


「.....ちょっと待て。それはどうなっているんだい?」


「.....どうしたんすか?」


俺はクエスチョンマークを浮かべながら.....雪代先輩を見る。

すると雪代先輩は、大変かもね.....勇さんが捕まったよ、と答えた。

俺は、え.....、と思いながら驚愕する。

そして続きを聞いた。


「.....覚醒剤使用、無免許による現行犯逮捕だそうだ」


「.....マジですか?」


「.....マジだね。.....車を運転していたら警察に聴取されて捕まったそうだ。.....照魔がニュースで知ったって」


「.....!」


驚愕どころか愕然とした。

そして.....顎に手を添える雪代先輩。

まさかこんな結末になるとはね.....、と眉を寄せる。

それから.....俺も唇を噛む。

雪代先輩は苦笑いを浮かべる。


「.....良かったのか良くないのか分からないけど。.....結末はこんなにあっという間で最悪だとはね」


「.....まさか話している途中にこんな事になるとは思いませんでした」


「.....あの男も多分何かに追い詰められたりしていたんじゃないかな。多分。.....だから覚醒剤に手を出したんじゃないかな。覚醒剤って追って追われての感じだからね」


「.....成程です。.....え?雪代先輩って.....」


「.....あの男に麻薬を嗅ぐわされたからね。大麻を。性的暴行をしようと思ったみたいだよ。滅茶苦茶だねアハハ。でも酔っ払ったとあの男は周りに説明したから.....私は逃げるしか出来なかったけどね」


警察にもまあ散々訴えたけどバレなかったしね。

幸いにも中毒にはならなかったけど。

今現在って世の中に大麻は当たり前に流通している。


とにかくあの男はやりたい事は何でもやるし計画的だよ。

何たって罪を平然と踏み躙るから。

今回は油断したんだろうけど。


と説明してくれた雪代先輩。

信じられない、と思いつつ俺は目を開いた。

雪代先輩は苦笑いを浮かべる。

そして.....真剣な顔になる。


「若者の間では大麻が当たり前の時代だからね。でもそれでも君は君らしく生きてね」


「.....」


「さて.....どうしたもんかね。勇さんは何か知らないけど捕まった様だし。これからどうなっていくのか。でもまあ.....何も変わらないだろうけどね。.....取り敢えずはバーベキュー祭りを成功させる事を考えよう。それだけだ。君と千佳ちゃんをイチャイチャさせるのと.....周りのみんなを呼ぼう。.....それなりにはマシになっただろう。これで」


「.....ですね」


俺は雪代先輩を見る。

しかし本当に色々な経験をしているんだな。

雪代先輩は、と思う。


考えながら俺達はカフェを後にしてニュースを見た。

確かに捕まっていた。

速水勇(58)と名前も出ている。


しかし本当にあっけないもんだな。

こういうのって.....だ。

これから多分.....明るみに出ていくだろう。

全ての悪事が、である。

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