第46話 歪すぎる世界

そもそも夜空の母親は.....俺もあまり見てない。

その理由としてはそうだな。

真優さんがあまり話さないのもある。


それだけじゃ無い。

夜空もあまり話したがらない。

何というか夜空の持っているシャーペンポーチ。

それは.....母親が生前に将来の為にと買ったシャーペポーチだ。

俺は.....その事をふと話した夜空から聞いた。


それ以降、あまり話して無かったのだが。

夜空と千佳は話している様だ。

母親の事に関して、だ。


分かち合う友達が出来た様に.....話している様だ。

俺は.....その事に笑みを浮かべずにはいられないと同時に。

夜空に、有難う、という気持ちが湧いた。


「ただいま」


「お帰り。お兄ちゃん」


「お帰り。いー君」


目の前に風呂上がりの二人が立っている。

俺はそれぞれの姿を確認しながら、ただいま、と笑みを浮かべる。

そして真剣な顔になってから千佳を見る。

千佳。お母さんの容体は?、と聞く。


「.....うん。大丈夫そうだよ。一応だけどね」


「.....そうか。.....あ。そうだ。.....律子さんと容体が良くなったら病院内を歩かないか?一緒に」


「.....いー君.....でも私は.....」


「.....そうだな」


まだ母親に確執が有る様だが。

俺は.....その姿を見ていると夜空が、まぁまぁ!とにかく上がって。お兄ちゃん、と満面の笑顔を見せた。

ストライプのリボンのツインテールにして、だ。

その姿に、まあそうだな、と答える。


「.....千佳さん。.....私もずっと居るから」


「.....有難う。夜空ちゃん。そう言ってくれると心から嬉しい」


「良かったな。千佳」


「.....うん。優しい人達に恵まれてる。君のお陰だね」


昔は.....こんなんじゃ無かったからな。

本当に、だ。

だから少しはマシになったんじゃ無いだろうか。


思っていると.....千佳に電話があった。

それからこう言われる。

慌てた様子で、だ。


「なんかその.....長い黒髪の女性が.....病院の私の母親の病室に侵入したって.....須崎さんっていう」


「.....?.....え?」


眉を顰める俺。

俺達は顔を見合わせながら衝撃を受ける。

それから、病院の電話に話し掛ける。

どんな女性ですか?、と、だ。

すると.....病院の関係者はこう話した。


『あ。速水さんの彼氏さんですかね?相手のお名前、山寺さんと速水さんの知り合いの須崎、と名乗っています。お知り合いの方でしょうか』


「.....須崎?.....え.....」


「.....須崎って聞いた事ある.....須崎智子さん?」


須崎智子。

俺の.....いじめっ子である。

結構前に再会した様な.....女の子。

何やってんだよ!?

俺は驚愕しながら見ていると病院関係者が、重大な案件と判断して須崎さんを警察に引き渡しました、と話した。


「.....確かに.....それなりには知り合いですけど.....」


『お知り合いの方なのですか?.....そうなんですね.....警察に引き渡しましたが大丈夫だったでしょうか』


「.....」


いや大丈夫とか、どうって言うか。

そもそも須崎のアホは何をやっているんだ。

まさかと思うが、と顎に手を添える。

嫌な事が過ぎる。

それは.....また千佳の親父さんか?、と。


『そのお知らせでお電話しました。夜分に本当に失礼します』


「.....どうする?いー君.....」


「.....正直言って何を考えているのか分からない。だけど問い詰める必要がありそうな気がする。マジに何やってんだ、って感じだ」


「.....お兄ちゃんを嫌がらせして.....千佳さんに.....まで。最低」


歯を食いしばる夜空。

そうだな。

これはマジにどうしたものかな、と思う。

それから俺は.....洗脳されたのかアイツも、と思った。

頭が混乱している.....。



結論から言って。

須崎は実は今の職業はデリヘル嬢で。

しかも千佳の親父さんと知り合ったようだった。

それから須崎は度々、千佳の親父さんに会う様になり。


そして.....見事に妻の様に洗脳されていた。

それから須崎は病院を襲撃する様に教え込まれ襲撃した。

顔を見て思ったがヤバい。


須崎の顔が全てが死んでいる。


と言える。

警察署に向かって取調室から出た.....須崎を見てから。

俺はまた.....眉を顰めずにはいられなかった。


須崎は痩せ細り邪険な感じの滅茶苦茶になっている。

人はここまで堕ちるもんなんだな、と思うぐらいに、だ。

そう思ってしまった。


「.....信じられないね」


「.....そうだな。本当に有り得ない」


若いのにな。

須崎は。

しかもあんな感じでは無かった。

そんな須崎まで堕とすとか最早人間のする事じゃない。


ま俺のいじめっ子だった訳だが.....それでも相当に歪んでいるな。

しかし千佳の親父さん.....最悪だな。

本当に最低だ。


「お母さんの事.....死んでも良いと思ってる。でも殺されるとかそんな別れ方はちょっとね」


「建造物侵入罪などか.....。須崎は当分出て来れないかもな」


「.....須崎さん.....」


「.....アイツには配慮する必要は無いけど.....ここまで堕ちたら手を差し伸べたくなってくる」


「駄目だよ。いー君。それは分かるけど巻き込まれるよ.....」


まあそうなんだけど。

甘いけど。

でも.....何だろう。

心が痛いのだ。


仮にも千佳の親父さんに洗脳されていた事が、だ。

マインドコントロールされていた事が。

甘すぎるのかな俺。


「.....いー君。本当に彼女とは縁を切った方が良いよ。本当に可哀想だけど手を差し伸べるべきでは無いと思う.....もう無理だと思う。私が父親と縁を切る様に」


「まさかデリヘルでしかも.....洗脳されているとは思わなかった。まあお前の言う通りかもしれないな」


「.....だね」


そうしていると刑事さんがやって来た。

それから俺達に彼女の状態を説明してくれたが。

全て纏めると須崎に逮捕状が出たという。

そうなのか、と思いつつ。

俺達は帰宅した。


因みに.....後から聞いたが。

考えたくも無いが千佳の親父さんの手で別れた訳じゃ無いよな?何だか須崎は彼氏に振られ、その事でデリヘル嬢になり出会ったのが千佳の親父さんだった。

心から千佳の親父さんを心から信頼していて。

そして見事に洗脳された様だった。



完璧なサイコパスという言葉が似合っていると思う。

千佳の親父さんが、だ。

明らかに人の常識を超えている気がする。

もしかしたら


ただのパチンカスかと思ったのだが.....そうでは無い様だった。

ここまで来たら.....もう知能犯だ。

俺は.....その事に恐怖を感じながらも。

忘れようと千佳と共に千佳の母親に会いに来ていた。

律子さんに、だ。


「お母さん。大丈夫」


「.....元気よ。有難う。そしてイスカさんも」


「俺は大丈夫っすよ」


「.....大変だったわ。2日前は」


何だか知らないけど突然人がやって来て、と説明してくれる律子さん。

俺は.....その事に、ですね、と笑みを浮かべる。

因みに律子さんはこの事は知らない。

俺の知り合いである、という事を、だ。


「お母さん人気者だね」


「そうなのかしら」


「じゃ無いと人が来ないよ。アハハ」


誤魔化す様に説明してくれる千佳。

俺はそんな姿に感謝しつつ。

窓から外を見る。

千佳の親父さん.....勇。


何処で何をしているのか知らないが。

彼はいつか.....捕まらないと駄目だと思う。

自らは手を下さず。

人を操り人形の様に扱う。

これは絶対に許されないやり方だ。


「イスカさん。その、どうかされたのですか?」


「.....いえ。何でもありません。.....色々とすいません」


俺は謝りながら2人を見ながら複雑な顔になる。

この様な汚いやり方にはいつかは制裁が下る。

だけど.....それが何時になるかは分からない。


でも.....絶対に捕まえてやりたい。

警察は証拠が無ければ動かない存在だ。

被害届を出さなければいけない。

証拠を掴んでから、だ。

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