第41話 体育祭と再会と

雪代先輩と照魔くん。

その2人は.....途轍もない関係性であったのを知った。

俺はかなり衝撃を受けながら.....ホルスで書類を整理してから仕事をしていると眉を顰めていると大谷さんが心配げな感じで俺を見てくる。

俺は?を浮かべて大谷さんを見る。


「どうしたんだい。悩みでもあるのかな?君は」


「.....大谷さんにご迷惑をお掛けする程じゃ無いですよ。有難う御座います」


「そうかい。.....君は相変わらずだね。.....何時か相談出来る時が来るかな。こんな俺だったら相談に乗るから」


「有難う御座います。感謝です」


大谷さんは俺を見ながら笑みを浮かべる。

俺はその姿にゆっくり頷く。

でも少なくとも大谷さんに相談出来る事じゃ無いと思うなこれは。

とにかく。

雪代先輩に色々と聞かなければいけない。


「.....」


照魔くん。

そして雪代先輩.....か。

首を突っ込むべきでは無いとは思うんだけど.....どうしても首を突っ込まなくてはいけない気がする。

思っていると千佳からメッセージがきた。

俺は目を丸くしながら見る。


(お仕事は大丈夫そうかな?)


(ああ。そうだな。千佳。大丈夫だ)


(良かった。何も問題無いよね)


(無いよ。これ以上は何も起こらないって)


(だったら良いけど.....ね)


千佳は心配そうな顔をしているだろう。

考えながら俺は前の書類を見つめる。

デスク上の、だ。

そして眉を顰める。


「.....」


照魔くんは何も分からない様だったから。

俺は気配を消す様に雪代先輩にメッセージを送る。

おや。どうしたの?、と直ぐに返事がきた。


そんな雪代先輩に、雪代先輩。今は悩みは無いですか?、と送る。

しかし送ってから考える。

あまりに直球過ぎたか?、と。

だけど雪代先輩は、うーん。強いて言うならバーベキューパーティーの件かなぁ、と冗談交じりで返事をしてくる。


(相変わらずですね。すいません。変な事を聞いてしまって)


(うんや。大丈夫だけど.....何でそんな事を聞くの?)


(最近、悩みを押し付けている気がしまして。申し訳無いです)


(.....そうかな?.....あの男の人の件ならどうしようも無いよ~。もう忘れよ。どうしようもからね♪)


そんな感じでメッセージをくれた。

そのメッセージに俺は目を細めながら天井を見る。

相変わらずだな雪代先輩は。


隙が本気で無さすぎる。

そうだな。

簡単に言えば.....セキュリティが頑丈すぎる、と言った所か。


(雪代先輩)


(何かな。イスカ君)


(.....また今度です。すいませんでした。仕事が入りまして)


(仕事?あ。成程ね。.....家庭教師のね。分かった。じゃあまた明日ね)


雪代先輩はそのままメッセージを閉じた様だ。

俺はそれを見つつ、仕事をしないとな、と思い仕事をする。

謎とか疑問とか考えとか本当に頭の中がぐちゃぐちゃだけど。

今はそんな事を考えている暇は無い。

仕事をしないといけない。


「雪代先輩.....。何かあったら言ってくれたら良いけどな.....」


そしてそんなこんな事があり少しだけ時間が経過した。

モヤモヤは相変わらずのまま、だ。

それから5月も終わりに突入してから。

俺達は雪さんと夜空の体育祭の応援に向かった。



「今日は応援の為に!!!!!」


「おうぃえぇーーーーー!!!!!」


雪代先輩が叫ぶ中。

というか目立つんだが。

何故この場所に遠山まで居るのか分からない中。


考えながら俺は溜息を吐く。

俺達は今現在。

雪さんと夜空の高校に居る。

応援の為である。


そしてこの場所に丁度、雪代先輩、遠山、俺、草薙さん、明日香さん、健介、千佳が集まった。

他のみんなは忙しいのと都合が合わず、である。


俺は、応援団、と書かれた衣服と。

靡く鉢巻を着けている雪代先輩を見る。

目を輝かせていた。


「よし!そーれ!」


「雪さん頑張れ!夜空さん頑張れ!!!!!」


「追い出されるぞオイ.....」


「アハハ。楽しそうだね。いー君」


遠山も喧しい。

考えながら目の前を見ると。

そこには並んでいてこっちに苦笑いを浮かべている雪さんと夜空が居た。

周りもジト目で俺達を見てくる。


「でもちょっと恥ずかしいかも」


「それは確かにな。雪代先輩は相変わらずだな」


「確かにな.....」


これは追い出されるのは待ったなしだな。

その事を思いつつ見ていると応援席に腰掛けた。

どうやら種目が始まるらしい。

見つめていると最初はリレーの様だった。

そして雪さんが.....マジか!?


「雪さんリレー走るんだね。ビックリ」


「それで隠していたんだな」


「可愛いから良いよね。走っても絵になるし」


「まあそうだな。確かにな」


草薙さんが一生懸命に写真を撮る。

俺は千佳を見ながらスマホで撮り始めた。

取り合えず.....何か記録に残したい。

と考えながら見ていると。


パァンと音がしてリレーが始まった。

鉢巻を揺らしながら雪さんが全力疾走する。

というか。

かなり速いな!?

俺は驚愕しながら目を丸くしていると明日香さんが笑顔を浮かべた。


「なんかその。この前のいっすー先生のデートの時、足が速いって言ってました。雪ちゃん」


「そうなのか!?それであんなに速いのか!」


「へぇ。凄い特技だね.....」


「羨ましいですね。私は特技が無いですから」


雪さんの全力疾走を見ながら落ち込む明日香さん。

俺は溜息を吐いてから前を見つつ言葉を発する。

それは無いな、と。


「.....それは間違っているぞ。明日香さん。君の特技は.....人とのコミュニケ―ションが得意じゃないか。誰とも仲良くなれる」


「.....相変わらずだね。いっすー先生は。そういうお褒めの言葉は愛している千佳さんに言ってあげて」


「おいおい。子供の癖に何を上から目線で言っているんだお前は」


ん?私。子供じゃ無いよ~。だって女子高生だもん、と答えてはにかむ明日香さん。

俺はその様子に、まあ.....確かにそうだが、と苦笑気味に回答する。

すると千佳が、有難うね。明日香ちゃん、と笑顔を見せる。


「当たり前の事をしているだけです。でも千佳さんが愛してくれなかったら即刻奪います」


「いや、お前.....何を.....」


「アハハ。それは無いよ。心から愛しているからね」


「おい。お前達。何処を見ているんだ。雪さんが1位になったぞ」


健介が苦笑してから話してきた。

何!?、と思いながら撮った映像と目の前を確認する。

確かに1位になっている。

そして雪さんは笑顔を見せていた。

俺と千佳は、凄い.....、と呟く。


「.....成績優秀じゃなくて体育も優秀なんだな。雪さんは」


「お前の生徒は流石だな。イスカ」


「.....俺は何もしてないだろ」


「いや。雪さんもかなり鍛えられたんじゃないか。お前に」


「.....そうかな」


ああ、と答える健介。

俺はその言葉を受けながら目の前を見る。

雪さんは俺達にもピースサインをしていた。

そうなのかな、と思う。


「しかし1位か.....凄いもんだな」


「そうだねぇ。こりゃ同好会のパーティーのバーベキューも盛り上がりそうだ!アッハッハ」


「うお!?雪代先輩.....」


そこまで言い掛けてから。

姉ちゃん、と声がした。

俺達は驚愕して背後を見る。


そこに.....何故か照魔くんが立って居た。

真剣な顔で、だ。

俺は驚愕して青ざめる。


「な.....どうなって.....」


「雪さんに聞きました。.....雪代先輩が来るから、と。.....だから来ました」


みんなポカンとしている。

それはそうだ。

俺しか知らないのだから、だ。

すると雪代先輩が、君は誰かな?、とぬらっと立ち上がった。

それから笑みをゆっくりと浮かべる。

体育祭の.....歓声が消えた。


「またそうやって上手い事、逃げるのはもう止めよう。姉ちゃん」


「うーん。何の事?.....それに私、君の事。知らないしね」


「.....姉ちゃん.....」


相変わらずのおちゃらけた感じで雪代先輩は接する。

俺はその姿を見ながら、あちゃー、と思う。

どうしたものか、と。

そして作戦を考え始めた。

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