Epilogue

Epilogue

 バチバチと激しい音を立てて開いた時空の歪みは、ひとりの男を放り出した。


 ドンッ!!


 男は地面に投げ出され尻餅をつく。

「いてて・・・。本当に突然現れるんだな」自分を吸い込み、そして吐き出した穴がなにものであったかを、男は知っているようだった。男が振り向いた時にはもう既に穴は閉じ、消えてしまっていたが。

「ご先祖様に感謝感謝・・・いや、俺が自分で書くことになるんだよな?」急な展開にも関わらず、男は至極冷静であった。「カッコいい着地の仕方もちゃんと書いておけってんだ。あ、ハイ、書きますね」どうやらここは森の中のようで、人の気配はしない。男は寂しさを紛らわせる為に、自分で自分に突っ込みを入れるしかなかった。


「あいつらには本当に申し訳が立たないな。もう会わす顔もねえ。実際、会えないんだけどさ」冗談を言ってはいるが、男はこぼれ落ちそうな雫を堪える為に、笑うのを我慢していた。「でもこの日の為にちゃんと準備はしておいた。あいつらならきっと上手くやってくれるだろう。母さんをよろしくな。カネヴィン」


「さて、と」男は気を取り直して、ひと先ず集落を探すことにした。

「これが俺の冒険、第二章の始まりってわけだ」


 男は未だ見ぬ世界へと旅立つ。もしかしたら、昔本で読んだことのある世界かもしれない。誰かが導いてくれた世界かもしれない。でも人は皆、自由だ。『お前の人生は、お前がやりたいように自由に生きろ』そう自分に言い聞かせて、男は歩き始めた。



  ―完―



 男がこの地を去った十年程後に、同じ森で幼い兄妹が発見されるが、それはまた別の物語――。

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遠い未来の君に (The Present From The Past) 白石 俊太 @futuristix

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