習作200321 VRMMOで行われたある実験結果について

〈表題〉VRMMOで行われたある実験結果について


〈日時〉別記


〈場所〉第19A15計算機群


〈実験責任者〉Akiba Kayahiko


〈目的〉疑似転生体験が時間識に与える影響の調査


〈手法〉被験者オムニス(ユーザID:omnis)に対して転生プロトコルを実行した後に神経パルス導入部から中枢神経系に疑似α波を導入し、脳波との同調確認後に疑似α波の周波数を徐々に高める変調を用いた脳波周波数引き込み処理を行う。引き込み処理が完了した後にダミーエネミーを用いて被験者の時間識に関する諸元を計測する。


〈報告〉

実験失敗。

本報告書に基づき、疑似α波を変調する全ての実験を中止すること。

被験者及び実験者の双方において、時間識の変調が確認された。

実験の影響を受けた参加者たちは、平均して約三分間でダミーエネミーを撃破し、ダミーエネミー撃破までの出来事を平均して約一時間の出来事として認識した。


〈考察〉

疑似α波の変調を用いた引き込み処理は、実験前に想定されたとおりの効果を挙げた。

すなわち、疑似α波の周波数を高めるにしたがって脳の処理速度が向上し、VRMMO空間における時間がゆっくり流れているかのように感じるようになった。

これにより、被験者の実質的な反応速度及び対応速度が向上し、被験者本人のベストレコードよりはるかに短い時間でダミーエネミーが撃破されたものと考えられる。

実験者においても、同様の機序によって、短時間でのダミーエネミー撃破が行われたものと考えられる。

被験者のみならず実験者においても時間識の変調が確認されたことに関し、ユーザIDとデータベース処理における対象指定子との間にコリジョン(衝突)が生じた可能性が考えられる。

本実験における被験者オムニスのユーザIDはomnisであった。

転生プロトコルとそれに続く一連の処理を実行する対象を被験者「オムニス」のユーザIDにて指定した結果、実験対象がラテン語のomnis、すなわち「みんな」であるものとして受理されたものと考えられる。

これにより、当初予定していた被験者オムニスだけでなく、我々全員が転生プロトコルの影響を受け、戻れなくなった。


〈結論〉これを読める人が残っていたら、早くなんとかしてくれ。量産型転生ものの世界はもういやだ。帰って日曜朝の番組を見たい。


〈参考文献〉

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