習作200116B 失敗したタイムマシンの応用理論とその実際

 物理現象を解析するときに、空間を構成する縦横高さ3つの次元とあらゆる物理現象が進む方向である時間との4次元で捉える場合がある。


 これら4次元のうち、縦横高さ3つの次元のそれぞれは、2つの向きを持つ。例えば、高さの次元は、上向きと下向きの2つの向きを持つ。この2つの向きは、通常、どちらの向きにも移動できる向きである。


 しかし、時間は、未来に向かって進むのみで、過去に進む方法は、知られていない。



「えー、そのような背景がございまして、われわれ未来回帰研は、タイムマシンの研究を長年続けておりました」

「そして、このたび、次なるタイムマシンの成功につながり得る新しい応用理論を発見するに至ったのであります!」

「さっそく実演してご覧に入れましょう、さあどうぞ」



 未来回帰研のD教授は、どうだとばかりに演壇で胸を張っているが、何事も起こらない。


 3分間、5分間、10分間、待てど暮らせど何も起こらない。



 ついに痺れを切らした聴衆の一人が、挙手をして発言を求めた。



「はい、そこのあなた。『何も起こりませんが』という発言をどうぞ」

「D教授、何も起こりませんが……? ハッ!?」



 発言した聴衆は、狼狽して左右を見回した。ほかの聴衆たちが訝しげな顔で彼を見る。



「次に君は、『いかにも言いそうなことを言い当てただけで得意にならないでください!』と言うね」

「いかにも言いそうなことを言い当てただけで得意にならないでください! ええっ!?」



 聴衆は、ますます狼狽した。なぜD教授は、彼の発言を先取りできるのだろうか。



「これが新しい応用理論の成果です。もう三度も同じことが繰り返されている今週の出来事を、われわれは、忘れずに覚えていられるのです。さあ、みんな助けてくれ。土曜が終わったらまた終末がくる予定なんだ! 助けてくれ、もうシュウマツを繰り返したくないんだ!」

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