東インド会社が欲しい〜の♪

 日本と交易するためには、どうすれば良いのか考えた俺は、まずは日本と交易するための勅許会社が必要だと気付いた。イギリスやオランダの東インド会社みたいなのだな。

 プロイセンの歴史を遡ってみると、過去に勅許会社はあったものの、失敗に終わっている。初めは、ブランデンブルク選帝侯国の時代にブランデンブルク・アフリカ会社なるものが出来て、西アフリカにグロスフリードリヒスブルクなる要塞と植民地を築いた様だが、失敗した様だ。

 2回目は、大伯父のフリードリヒ大王が1752年にエムデン会社を設立している。1744年にエムデンと言う港町を獲得したことで、北海に港を得たからだ。エムデンはユトランド半島より西に位置するため、遠方との交易には都合が良かったのだろう。

 大伯父は、プロイセンにイギリス東インド会社やオランダ東インド会社と同じ様に、貴重なアジアとを交易するために会社を設立したのだ。エムデン会社の主な事業は、清国の広東と交易することであり、小さいながらもそれなりに成功を収めていた様である。

 しかし、1757年に始まった七年戦争中に、エムデンがフランス軍に占領されてしまう。その際、エムデン会社の事業は大きく失われ、船などは売却することとなった。フリードリヒ大王は事業の再開は困難だと判断したのか、七年戦争後の1765年にエムデン会社は解散させている。


 俺は、父フリードリヒ・ヴィルヘルム2世に大伯父に勅許会社設立を提案することにした。


「勅許会社作ってもらって」


 父上も俺の簡素な要求に困惑してしまう。俺の簡素な話し方には大分慣れているが、なかなか理解しきれていない様子だ。


「エムデン会社再建」


 俺は続けてエムデン会社の再建を願うと、父上も漸く理解してくれた様だ。


「オランダの東インド会社の様な勅許会社を設立する様に、伯父上に進言しろと言うことか?確かに、伯父上はエムデン会社を設立していたが、解散してから勅許会社は出来ていないな」


 父上は、俺の要求に対して考え込む。七年戦争が終結してから10年以上経っており、大伯父が内政に注力していることもあり、戦争の傷跡は癒やされつつある。父上は再び勅許会社を設立して、東洋と交易することを大伯父に進言してみるのも良いかもしれないと考えているのだろう。


「一応、伯父上に進言してみよう。しかし、其方が好きな日本との交易は出来ないぞ?日本はオランダとの交易しか認めていないからな」


 俺は父の言葉に頷く。父に日本と交易出来るかもしれない可能性があることを伝えても良かったが、プロイセンとオランダとの関係から、オランダを出し抜いて日本と密交易することが出来ると伝えるのはマズいと思ったからだ。



 その後、父は機会をみて大伯父に再び勅許会社を設立してみてはどうかと提案した。

エムデン会社で小さな成功を収めていたものの、七年戦争によってフランスによって事業を破壊されたことを思い出し、苦い表情をしたそうだ。また、七年戦争が終結して10年以上経ったとは言え、まだまだ内政に注力して国内に投資したいと言う思いは強い様である。

 しかし、小さな成功ながらも、東洋の交易で得た利益を考えると、プロイセン王室が莫大な金額を投資するのは難しいが、国内外の商人に出資を募ってみて、その反応次第で再建することとなった。エムデン会社自体もオランダの商人が多く出資しており、それに次いでフランスの商人や国内の商人が出資していたのだ。

 この勅許会社の再建の出資話については、七年戦争終結から10年以上経っていることもあり、また大伯父が内政に注力しているこや、フランスやロシアとの外交関係を改善していることなどから、大きな戦争が今後起きる可能性が低いと判断された様で、商人たちからは好意的に受け止められた様だ。

 こうして、数年後に小さいながらもエムデン会社は再建されることとなる。

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