再創世記 ～その特徴は「天使の血筋」に当てはまらない～

第3話 森の旧友

『あ。そうだアグニ。この森にね、僕の友達が住んでるからちょっと様子を見に行ってもいい？』

森で採った草や野兎の肉の煮込みスープを食べ、片付けをしているところだった。

「え？全然いいけど。友達森に住んでるの？」

『うん。もうかれこれ何年になるかな～長いことずっと友達だね』

「へえ〜そうなんだ。でも森に住むのって危なくないか？」

シリウスは白金の髪を結びながら笑顔で答えた。

『んーそうだね。けど彼は強いから大丈夫。そもそも彼がこの森に住んでるから芸獣が出ないんだよ』

　　　ん？ゲイジュウ？

「ゲイジュウって何？」

『ああ、芸を出せる獣のことだよ。昨日僕が木を切ったりした時にやったようなことができるんだよ。それで人を襲うんだ』

　　　はあ？すごい危険じゃん。

　　　あんなの獣に出されたら即死だわ

「芸獣って普通にいるの？遭ったらどうするの？」

『全然いる。遭ったらまあ…戦うしかないかな。基本向こうは殺しに来るからね』

「ええ全然戦える気がしないんですけど…」

そんなの無理だろと思って文句を言うと、シリウスは楽しそうな笑顔で答えた。

『君にも芸を教えてあげるから大丈夫さ』

・・・・・・

初めての森の中は知らない景色でいっぱいで、シリウスに使える草や木などを教えてもらいながら森の奥に向かって歩いていった。

『さあ、この奥だよ』

森の奥

蔦がゆらゆらとカーテンのようにぶら下がり、その蔦の間に金の粒が漂っている。思わずこの幻想的な光景に辺りを見渡してしまう。

『何してんの。ほら、こっち』

シリウスが蔦の間から顔を出して、右の方に指を指した。

　　　あ、迷ってたわけじゃないっすよ。

・・・

蔦の間を抜けると、巨大な木で周辺を壁のように囲まれた空間に出た。

「すごいな。こんな場所があるんだなあ～」

『あ、ほら！彼だよ！わーい。元気～？」

上を見ていた俺は急いでシリウスが向かう方向を見た。

　　　え、、、彼、、、？

・・・青銀色の鱗と金の瞳をした巨大な竜の芸獣がいた。

「うえやああ！？シリウス！！待て待て！それが芸獣なんじゃないのか！！！」

『え？彼は違うよ～彼は単純に芸ができる竜ってだけだよ』

　　　それを芸獣って言うって先ほどあなたが言ってませんでした？？

「いやいや待って！芸ができる獣は芸獣なんだろ？！」

『あー言ってなかったね。芸獣は全部目の色が赤だ。だから彼は違う。』

　　　たしかに竜の目の色は金だ。

　　　え、でもほんとに大丈夫なのか？

「こいつうるせえな」とでも言いたげに竜がため息をついた。

『ね、竜ちゃん。あの子アグニって言うの。元気でしょ？若いよねー』

　　　くそっ！

　　　彼って言うから当たり前のように人だと思ってたぜ。

そんなことを思いながらも、少しずつ竜に近づいて話しかけてみた。

「あ、僕アグニって言います。あの、お名前は…？ってわかる？」

『竜ちゃんバカにしないでよお。ちゃんとわかるよね？名前はとりあえず……竜ちゃんで！』

「とりあえず？まあ、じゃあ竜ちゃん、よろしくな」

そう言って頭を下げると、竜は満足げな顔をして俺に頭を下げてきた。

　　　え、賢いこの子！

『アグニ、竜ちゃんから鱗貰っておきな』

「え、貰っていいの？」

シリウスに言われたことを竜ちゃんにそのまま聞くと、その竜はのそっと立ち上がり、大きな身体をゆすった。シャラシャラと光を帯びた青銀色の鱗が雨のように落ちてきた。

「これは……めちゃくちゃ使えるかも。」

鱗は分厚い上に透明度も高かった。

今度献上する祝いの剣の装飾に、これほどいい物はないだろう。

『その鱗には色んな効果がついてるから、飾り用の剣であってもたぶん国宝レベルで強くなるよ』

「まじで？！ちょっと詳しく調べたいな…」

『それはお家帰ってからね～』

「ああ！！楽しみだ！」

竜は再び座り、シリウスに顔を近づけて甘えだした。

『大丈夫。また会いに来るよ。いつもそうだろ？まったく、何歳になっても甘えんぼさんだなあ』

「なあ、竜ちゃんて何歳なの？」

『え？何？いきなり』

シリウスと竜ちゃんが一緒に俺の方を向いてきた。なんだか兄弟みたいだな。

「え？なんとなくだけど、竜ちゃん長生きしてそうなんだもん。シリウスは何年くらい前から友達なの？」

『ふふっ。ずっと昔からだよ。』

シリウスの笑顔は優しかったけど、とても遠くを見ているようだった

・・・・・・

竜ちゃんのお家（？）から出て再び森の中を歩いている。

「なあ、どこ向かってるんだ？」

『んーそうだねえ。少しこの森を出てみて、君のいた以外のところへ行ってみないかい？西に少し大きめの町があるから。それと、そろそろ「芸」を身に着けようか。』