第15話 サントーンの街で

 洞窟の魔石も回収したので、またくっきーに乗ってサントーンの街へ急ぐ。


『もうすぐサントーンの街へ着くくまよ』


「うん。くっきー頑張って!」


 でもサントーンの街へもうすぐ着くというのに、ドロップ品の数が増えている気がする……。街のみんなが無事でありますように!


「くっきー様……サラ様を連れて行って大丈夫でしょうか……」


『そうくまね……』


「えっ、もちろん行くよ! 待ってても不安なだけだもん!」


「でも、サラ様……良くない物を見るかもしれません」


「うん、ジークさんの言っている事も分かるし、この感じはそれもありうると思う……だけど、何もしないでいるわけにもいかないよ。私は私が出来る事をやらないと!」


「サラ様……」


 うん、みんなが心配してくれるのもとても良く分かるし、有難い。確かに、見るのが怖い……だけど、だからと言って1人安全な所で待っているなんて出来ないし、したくない。


『サラ、ダメだったらぼくに抱き着いていいくまよ。絶対に一緒にいるから無理しすぎないでくまよ』


「うん、くっきーありがとう。一緒にがんばろうね!」


『くまっ!』


 そんな話をしていると、サントーンの街へ着いたけど、門は閉じていた。これだけ魔物がいたなら閉じてるよね。大丈夫かなぁ?


「誰か! 誰かいるか!」


 ジークさんが大声で中の人に声を掛ける。なかなか返事がない……。


「外にいるのか!?」


 中からの声が聞こえてちょっとホッとした。


「もうここら辺の魔物は居ないから開けられるか?」


「なにっ!? 倒してくれたのか!!」


 そういうと、門をそぉっと開けてくれた。だけど、中にも魔物が居たんだろう……街が壊されている……。


「あんなに大量の魔物よく倒せたな……だがまだ中にもいるかもしれん」


「分かった。街の人達はどうしている?」


「大体は冒険者ギルドと商業ギルドの地下へ逃げている」


 そう聞いてホッとした。だけど、街の中にも魔物が来ているだなんて……。くっきーの浄化が500メートル以内だから大体浄化出来てそうな気がするけれど、まだ分からないね。


「各門で2名ずつ門で守っていたが、街の中を魔物が歩いていたから分からないんだ」


「では、街を確認してきます」


「よろしく頼む!」


 そういうと門番さんは頭を下げた。でもこの門番さん達も命がけでここを守ってくれたんだろう。凄くホッとした表情をしていたのが印象的だった。


『ぼくとサラで街を見て回ってくるくま。ジークとレイナは商業ギルドと冒険者ギルドを頼むくまよ』


「分かりました!」

「はっ!」


 ジークさんとレイナさんが凄い速さで駆けて行った。私も大きくなったくっきーの背中に乗って街を走り回る。


「くっきー、街の中も大分壊されているね……」


『そうくまね』


「でもほとんどは地下に逃げているんだよね。生きていれば街は直せるよね」


『そうくまよ! だからきっと大丈夫くま!』


「そうだね。よし、私達の出来る事をしよう!」


 壊された街の中を走りながら、浄化されてない魔物が街の中にいないようにくまなく走っていく。ルートはくっきーに任せているので、私は目で見て確認している。


 どうか、どうか……無事でありますように……。


 聖女って言うなら回復の魔法くらい使わせて欲しかったよ……。何も力のない自分が悔しい……。


 

 くっきーと町中を走り回り、商業ギルドと冒険者ギルドの前に着いた。くっきーから降りて、小さくなったくっきーを抱っこして冒険者ギルドへまずは入ってみる。冒険者ギルドも大分壊されているけれど、なんとか地下へ行く事が出来た。


 そぉっと地下へ下りてみると、怪我人がすごく沢山いた……。手が震えそうになったけど、がんばれ私! そういえばポーションってどうやったら出来るんだろう? 早くくっきーに薬草を出して貰わなきゃっ!


「くっきー、薬草を出してあげなきゃ!」


『そうくまね』


(心が痛い……みんなを助けたい……どうしたら良い?)


「くっきー、ポーションってどうやって作るの?」


『くま? ポーションだったら薬草と水を煮出して作るくまよ』


「それってスープにしたらどうなる?」


「くま?! そ、それはやった事ないからわからないくまね。でもやってみてもいいと思うくま。スープを飲んだらきっとホッとするくまよ」


「そうだよね。大きいお鍋を借りてくるね! 薬草少し残して置いてくれる?」


『任せてくま!』


 くっきーをその場に残して私は近くの動ける人に大きなお鍋を借りたい事を伝えて調理場にも案内して貰うけど、材料がもうほとんど残っていない……。


「くっきー! 材料を出して欲しいの!」


『分かったくま!』


「サラ様、一体何を?」


「スープを作ります。薬草を入れて作ってみます!」


「そんな事が!?」


「分かりません! だけど、少しでも元気が出せたら……」


「分かりました、何かお手伝いは必要ですか?」


「ジークさんとレイナさんはこのまま皆さんのお手伝いをお願いします。スープは私だけでなんとかなります。くっきーも薬草を出したり、お手伝いをお願いね」


『ぼくは荷物を出し終わったらサラの所へ行くくまよ』


「うん、ありがとう」


 それぞれ役割が決まったので、私はくっきーに材料を出して貰ってからスープを作り始める。薬草を入れたスープが少しでも効けばきっとみんな少し元気が出せる気がする。


 今は何も考えない。出来る事をやる……がんばろう!


 大きなお鍋2つにスープを作っていく。お野菜を色々入れて、ハーブも薬草も入れて煮込んで行く。味見してみると味も薬草で苦くなることもなく、逆に美味しくなった感じがする。味を調えて完成!


「うっ……さすがに持てない」


『サラ、大丈夫くま?』


「あっ、くっきー! ちょうど良い所に来てくれたよ!」


『どうしたくま?』


「スープが出来たんだけど、持てなかったの~」


『くふふ、任せるくまよ!』


 そう言うと、アイテムボックスに仕舞ってくれた。私はお玉とカップを大量に持って地下のみんながいる所に戻った。


「サラ様!」


「ジークさん、スープが出来たので配りたいので、お手伝いを誰かにお願いしたいのですが?」


「お任せ下さい!」


 そういうと大きな声でスープがある事、お手伝いを頼みたい事を言ってくれた。近くに居た怪我をしていない人達がお手伝いに来てくれた。


 次々と並んでくれたので、スープを配っていく。食べた人達から色々な声が聞こえてきたけど、よく聞こえない。なんだろう?


「怪我が治った!」


「元気が出たぞ!」


「これは一体!?」


「そんなっ……あんなに大怪我だったのに?!」


 どうしたのか不思議に思っていると、くっきーが教えてくれる。


『サラ、みんなの怪我が治っているみたいくまよ!』


「えっ!?」


 くっきーにそう言われて、周りを見回してみると……さっきまで怪我をしていた人達がにこやかにスープを飲んでいる。大怪我している人達も起き上がっている!


「どうして……?」


『サラの気持ちが通じたのくまね。みんなに治って欲しい、元気になって欲しいって思ってたからきっと治ったのくまよ』


「本当? だったら凄くすごく嬉しい!!」


『本当くまよ。これはサラの力くまよ!』


「くっきー、ありがとう。良かった……本当に良かった。ずっと心が痛かったの……」


『ふふっ、さすが聖女くまね~』


「ふふっ、聖女なら癒しの力くらい使わせて欲しいって思ってたよ」


『そうくま。まだ商業ギルドにも持って行かなきゃくまよ!』


「あっ、そうだね! また作ろう!」


 空っぽになった大きなお鍋でまたスープを作りに行く。今度は商業ギルドに居る人達の分を作らなきゃね! 怪我を治せるのが分かったから頑張るぞー!


「サラ様、お手伝い致します」


「ジークさん!」


「サラ様のおかげでみんな元気になりましたからね」


「あっ、でも商業ギルドの方は?」


「そうですね、そちらの様子を見に行ってきますか」


「はい、お願いします。その間にスープを作っておきます!」


 ジークさんが商業ギルドの地下の状況を見に行ってくれている間にスープを大きなお鍋2つに作っていく。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る