第40話 <美味しいケーキ!>
プリン、パンケーキ、ジェラート。
たくさん美味しそうなものが並んでいて、ついつい買いたくなっちゃうけど我慢我慢。この後美味しいケーキを食べるんだし、それに甘いものの食べ過ぎはよくないからね。食べちゃうんだけど。
イリヤと並んで歩き、リリスとジェラートを分けながら一休みのため目的の店の近くでベンチを見つける。ここなら開始時間に人が集まってきたらすぐに移動できるからちょうど良い。
「ねぇねぇイリヤ。イリヤはケーキ何がお目当てなのさ」
「そうですね。私は……モンブラン? でしたか? マロガーをふんだんに使ったケーキを食べてみたいです」
そっか! イリヤはモンブランか! 確かにあれも美味しいよね!
ただ、美味しいのは間違いないのだろうけど多分私は地球のモンブランが好きかも。こっちに来てから食べたことないけど、使っているのがマロガーってのが少し不安。
説明しておくと、マロガーってのは見た目は栗そのものなのよ。でも、普通に茹でただけで栗の甘露煮みたいになるとにかく素で甘い栗なのよ。
そんなこと知らなかったから、ろくに調べもせずにこれで栗ご飯を作ったときにはまぁ悲惨だった。甘い栗ご飯とか正直美味しくない。
そんなマロガーを使っている訳だから、過度に甘すぎないか不安になってるのよね。私は違うもの頼むつもりだけど。
「リリは何を買うつもりですか?」
「私はね、ショートケーキにしようと思ってるよん。やっぱり王道は外せないからね」
「いいですね! 私もショートケーキに……いや、でもモンブランも……」
「あははっ。じゃあ分けっこしようよ。それだと解決でしょ?」
「そうですね。そうしましょう」
この流れであーんしてもらおっと。
しばらく休んでいたら、少しずつ人が集まってきた。そろそろいい時間帯かもしれない。
リリスも連れて店の前に移動する。ほぼほぼ最前列の確保に成功したわ。
すぐに人が大勢集まってきて後ろが大変なことになっている。
大注目の中、わっと歓声が上がる。イリヤが目を輝かせたのが見えた。
店の奥からお姉さんが出てくる。チラシよりもすっごい美人で驚いた。
「皆様っ! 本日はお越しいただきありがとうございます! これより、実演販売を開始します!」
待ってましたと言わんばかりの盛り上がり。私はそこまで声を上げなかったけど、店員さんが奥からスポンジを運んできたときにはもう他の人と一緒に盛り上がっちゃったよね。
店員さんが回って一人一人注文を取っている間に、目の前でお姉さんがクリームと果実を盛り付けている。
ショートケーキは純白にコーティングされ、チョコケーキはふわっとクリームが飾られる。イリヤの言っていたモンブランにもマロガーのクリームが螺旋状に巻かれて大きな実が乗り、フルーツケーキにはカラフルなフルーツがこれでもかと敷き詰められていく。
そして、ちょっと前から準備していたんだろうね。最後にタルトとアップルパイが用意されて実演が終わっちゃった。
「お待たせいたしました!! 以上、お召し上がりください!」
最後に一礼で、私たちは大きな拍手を送る。
美味しそうで芸術点も高い。これは中々期待させてくれるじゃないの。
注文していたショートケーキとモンブラン、それからリリスがおねだりしたフルーツタルトを持って噴水広場まで移動する。ベンチでゆっくりと味わおうじゃありませんか。
二人(私の膝の上にリリスも)並んで座り、フォークでケーキを小さく切る。さてさて、まずは一口いただきます。
「っ!! 何これ美味しいっ!」
「噂以上の……! 美味しいです!」
「ペ、ペルスティアに呼び込まなきゃ……」
ペルスティア家専属のパティシエになってくれないかスカウトを考えるほどの完成度。これはたまらない!
とろけるクリームは甘すぎず、イチゴはほんの少しの酸味とそれを包み込むまろやかな甘さがそれぞれの良さを引き立てている! 地球にはなかった品種のイチゴだからこそ生み出せる奇跡のマッチングね。そして、生地もふわっふわで軽いからしつこくない。
ホールでいっても飽きずに食べ切れそう。教えてくれたイリヤには本当に感謝。
イリヤも頬を押さえてケーキを楽しんでるし、リリスもとても嬉しそうにフルーツを囓ってる。柑橘類が特にお気に入りみたいね。
私ももう一口食べようとまた切り分ける。と、そこでイリヤがモンブランを差し出してきた。
「はいリリ。どうぞ」
「え、あ、ありがとう!」
分けっこするって言ったものね。
イリヤのモンブランを一口もらう。さて、どんな感じなのやら。
「っ! こっちも美味しい!」
「ですよね。リリのケーキも分けてくださいよ」
イリヤに今切り分けたケーキをあーんで食べさせてあげ、モンブランの味を楽しむ。
確かにマロガーは甘いけど、これ、多分完全に熟れる少し前のものを使ってるんじゃないかな? 栗ご飯で失敗したときよりも甘くないから。
全体的に砂糖の甘さも薄い気がする。元から甘いマロガーの素材の良さをしっかり活かした完璧なバランス。クリームはこの味から推測するにマロガーオンリーで作ったわね。
砂糖を最低限しか使わない。これなら甘すぎる食材を使っても事故が起きない。それをここまで綺麗なバランスで整えてくるとは、恐るべし……。
すっかりあのパティシエお姉さんのファンになっちゃいました。今度ホスティンに行くことがあれば絶対に立ち寄ろう。
リリスも食べたそうにしていたから、私たちで笑いながら食べさせてあげる。リリスご満悦の笑顔!
ゆったりのんびりした甘い時間。はぁ、幸せっ!
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