第29話 <結果発表!>

 翌日、試験の結果発表があった。

 学校の中庭にある噴水広場に試験の結果が張り出される。そこには既に多くの人々が集まっていた。

 私、頑張って早く起きたつもりだったんだけどな。それでもこんなに出遅れてしまうとは。

 あれ? でも、受験していない大人が多いような気が……。


「――ごきげんようリリさん。あれはね、貴族の親よ」

「お、おはようございますリリ様!」


 後ろから声を掛けられてびっくりしちゃった。

 でも、この声はよく知っている。二人目は分からないけど、誰なのかは想像できるね。


「おはようエルサ。それと、キルアちゃんだったかな?」

「そうです! リリ様に名前を覚えていただけているとは……光栄です!」

「様とかなくていいよ。じゃあ、リリ=ペルスティア。これからよろしくね」

「イリヤ=コレットです。よろしくお願いしますね」

「あ、キルアです。家名はありません」

「よろしくね。……で、親ってどういうこと?」


 簡単に自己紹介を終えて、エルサに話を聞いてみる。

 私たちのことをうんうんと見守っていたエルサだったけど、きちんと私の質問には答えてくれた。


「貴族って見栄が大事だから。この結果で自分の家のステータスを決めているのよ。アホみたいでしょ?」

「ずいぶん直球に言うんだね……」


 さすがはエルサというかなんというか……。

 でも、確かにアホみたいな光景が繰り広げられている。

 ライバル視している貴族なのか知らないけど、めちゃくちゃ相手を煽っているみたいな人もいるし、今度はべた褒めされている人もいる。

 かと思えば、泣き出してしまう子や親に首を絞められる子、あげくに絶縁を言い渡されている子までいるしね。

 貴族とは違って、平民から試験を受けに来た子はそんなことにはなっていない。

 醜い貴族のやりとりにドン引きしている子もちらほらといた。うん、その気持ちよく分かるよ。

 さて、私も確認に行こうかな。


「あれ、どこに行くの?」

「え? どこって結果の確認に……」

「私たちはこっち。絶対に最優秀クラスに振り分けられているわ」


 エルサの案内で集まりとは噴水を挟んで反対側のちょっとした集まりに。

 そこにも張り紙があり、こっちが優秀な成績の人らしい。

 早速確認。一番上にあった名前に思わず笑ってしまう。


「エルサ=ギャスティック。まぁ、当然と言えば当然ね」

「あら。二番目もすごい名前よ?」

「え? ……リリ=ペルスティア。マジですか」

「マジね」


 まさか私が二番の成績とは……!

 そして、三番にセレイナが名を連ね、四番にイリヤの名前があった。

 で、次の五番目にケインがいたのは驚きね。てっきり五番目はユウゴかと思ったのに。

 ユウゴは六番の成績だった。そして、七番にケインが連れていたあの執事風の男の子がいて、八番にキルアがいる。

 ただ、私たち仲良し組は安定の好成績を出せているからいいね。同じクラスなら、学校での楽しみも多そうだし。

 その後、セレイナも合流した。

 キルアのことを簡単に紹介して仲良くなったところで、入学式はまた後日だから今日はこの後このメンバーでお茶会でもどうかって話になった。

 皆も賛同してくれて、場所にエルサの屋敷が選ばれたところで学校を後にしようとする。

 全員揃って門の近くまで移動したとき、怒声が聞こえてきた。


「ふざけんなよッ!! どうして俺が六番なんだよッ!!」


 声のする方を見てしまう。

 まぁ、見知った顔が暴れているよね。先生や、あれは……ケインか。

 とにかく数人がかりでユウゴを抑えようとしている。


「こいつが五番だなんておかしいだろ!! 俺は神に選ばれた勇者だぞ!」

「だが、これが現実だ。厳正な試験の結果だよ」

「君の場合、筆記試験のマイナスが少し大きかったようだ。もう少し精進していれば……」

「ざっけんな! 公爵の地位を利用した不正だろうがッ!」


 ユウゴがケインの連れている少女の頬を思いっきり殴った。

 それにはキルアが小さく悲鳴を漏らし、私とエルサとイリヤが自然と動いていた。

 いち早くエルサが接近してユウゴを背負い投げ。激しく叩きつける。


「その辺にしなさい」

「ッ! てめぇ……!」

「みっともないわよ。それに、気に入らないからって女の子に暴力なんて……」

「黙れぇぇぇぇ!! “プラズマスフィア”!」


 まさかの魔法行使!?

 使われた魔法は結構殺傷力のある電撃系の魔法。

 いくらエルサでも危ないと思ったから、即座に魔力をぶつけて相殺して発動を失敗させる。


「なっ!? 不発!?」

「あっぶな……。さすがはリリさんね」

「エルサくん。その辺で」


 先生に言われてエルサがユウゴを解放した。

 でも、少しエルサが離れるとユウゴが地面に手を置いた。魔法陣が浮かび上がり、中央から小刀が現れる。


「高速錬成術!?」

「あんな高度な魔法を!?」

「エルサ様危ない!」


 ユウゴの殺意は本物だ。

 ここは、イリヤを信じることにしよう。私だって高速錬成術くらいは使えるし。


「イリヤこれ!」

「はいっ!」


 槍を作ってイリヤに投げる。

 走りながら受け取ったイリヤは、鋭い突きで正確にユウゴの小刀だけを破壊した。


「てめっ!」

「ユウゴくん。さすがにこの行為は見過ごせないな」


 先生たちに体を押さえつけられている。あれは、かなり重い処罰が下るだろうね。

 にしても、どうしてこいつはこんなに自己中心的なんだろう。日本でどんな暮らしをしていたんだか。

 後は先生たちに任せて私たちは学校を後にする。


「てめぇら忘れないぞ! 覚えてやがれぇぇぇぇ!!」


 後ろから何か聞こえるけど、所詮は負け犬の遠吠えだから気にしたら負けよねぇ~。

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