第17話 <私が主役のパーティー!>

 招待した貴族が全員やって来た所でパーティーが始まった。我が家はそこら辺のケチな貴族とは違うからね! ちゃんと貴族の護衛やお世話のために一緒に来た騎士さんや侍女さんにも参加してもらう。

 皇帝陛下が表彰を行うまでは、皆料理を片手に思い思いの時間を過ごしている。今回の主役は私ということで、さっきから大勢の貴族に周囲を取り囲まれていた。


「おめでとうございますリリ様。新時代の英雄ですね」

「お若いのにお強い。帝国の未来は明るいですね」

「いやはや実にお見事。ところでリリ様。もし興味がありましたら我が家が管轄する魔法研究所などいかがでしょう?」


 ただ、ね? 普通に話している分にはいいけど時々面倒な勧誘もあるのよ。それが本当にめんどくさい。

 そして、それだけじゃない。勧誘以上に面倒なのもあるからほんと嫌なのよ。


「さすがリリ様。魔王軍の幹部を倒す貴族令嬢など初めて聞きましたな」

「素晴らしいです。ところで、リリ様はまだ婚約者がおられませんでしたな。どうです? 我が息子は腕の立つ騎士です。騎士と魔法使いでいい夫婦になると思いませんか?」


 こう、嫌味全開の相手や自分の利権を一番に考える面倒なぶた……じゃなくて、貴族がちょくちょくいるのよね~。こんな連中の相手も軽くとはいえしなくちゃいけないのがだるい。ホント貴族ってロクなのいないわね。人のことはあまり言えないんだけど。

 適当にあしらったり、苦笑いや微笑で軽く話を流していく。と、そろそろ救世主が来る頃合いかな? あの子がいると、こういう時に助けてくれるから嬉しい。


「失礼皆様。わたくし、少しリリさんとお話ししたいの。譲ってくださる?」

「「「はっ。セレイナ皇女殿下」」」


 そう、救世主セレイナ皇女様! いっつも空気を察して私を連れ出してくれるありがたい人なの。

 セレイナ様に連れられて人混みを抜け出す。貴族連中は、早速お父様のところに移動した。あの顔ぶれ……さっき私に婚約話を持ちかけた連中ね。お父様に話を通す作戦かもしれないけど……無駄な事よ。

 セレイナ様が私を連れ出してくれたのは、会場の端の方。そこでイリヤとリリスが仲良く戯れていた。イリヤが持つお魚をリリスが必死に追いかけている。


「ただまー。リリ連れてきたよ」

「あ、ありがとうございますセレイナ様」

「そういうのいいって。友だちなんだから様付けとかなしにしてよね」


 セレイナ様……って言うと気に入らないのよね。じゃあ、遠慮なくセレイナって呼ばせてもらいましょうか。


「セレイナありがとね。あんな貴族相手にするのちょっとめんどくさくて」

「その気持ち分かるぅ~! 楽しい場に政治やら利権の話を持ち込むなってんだ馬鹿野郎めぇ!」


 ジュースが入ったグラスをブンブン振り回すセレイナ。中身が零れそうなものだけど、遠心力を巧みに使っているのか、魔力を操作して干渉しているのかジュースは零れない。

 なんと無駄に高度な技なんだろうと感心しちゃう。すると、グラスを振り回すのをやめたセレイナがクスッとした。


「そういえば、リリは準備は順調?」

「準備?」

「入学試験。ほら、もうすぐ時期でしょ?」


 ……しまった。かんっぜんに忘れてた……。もうすぐ国立学校の入学の時期じゃないか……!

 入学は義務だから試験の点数が悪くても落とされることはない。ただ、クラス分けの時に点数が低いと扱いも下なクラスにいれられちゃう! それが本当に怖い。

 学校は基本的に身分なんて関係ないとはいえ、やっぱりいいクラスに入りたい。お姉様の話だと、平等とはいえ自然と上位クラスの言うことは聞いた方がいい、みたいな空気があるらしい。

 だからこそ試験でいい成績を取らなくちゃいけないのに、今の今まで完全に忘れていたよ……。


「その顔は、今思い出したって感じだね」

「うん。どうしようイリヤ……!」

「リリの場合、魔力は桁違いなので実技は楽でしょう。後は座学でどのくらい取れるかですね」

「うぅ……不安だ……」

「しっかり勉強しましょう。私もサポートしますから」


 うん。頑張る。

 来る試験に向けて強く意識を向けていると、皇帝陛下が連れてきた騎士さんがやって来た。


「リリ様。そろそろ」

「分かりました。ありがとうございます」


 皇帝陛下の準備ができたみたいだ。じゃあ、私も行くとしましょうかね。

 騎士さんの案内に従って他の貴族たちの前へ。そこで、皇帝陛下から直接表彰を賜る。


「リリ=ペルスティア。そなたは見事魔王軍の幹部を打ち倒す快挙を成し遂げた。その功績を称え、ここに称すると共に勲章を与える」

「ありがたき幸せ。私の力、より一層陛下と帝国に捧げることをこの勲章に誓います」


 勲章が渡されると、会場に拍手が鳴り響いた。あー、肩こるわ。堅苦しいのが苦手だから、こういう拍手もちょっと苦手かな。

 授与が終わると、私はまた貴族たちに捕まって話の相手をする羽目になる。私の苦労は、あと数時間は続くだろうなぁ……大変だ。

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