第18話 <プレゼントを選ぼう!>
さてさて皆さん。私は今、非常に悩んでいます。
今、私がいるのは領内で一番物が揃う商業都市。ペルスティア領の東に位置する町。
んで、どうして私が悩んでいるかというと、それは明後日に迫ったイリヤの誕生日プレゼントをどうしようか分からなくなっているから。どうしようか考えていたら、ズルズルといつのまにか今日になっちゃった。二日前にもなって用意できてないのはさすがに困るから、現物でも見れば閃くと思って家を飛び出してきちゃった。
さて、どうしたものか。イリヤはあまり装飾品とか身につけないから、そういうのがいいかなと思っているのだけれど……。
とりあえずアクセサリーを扱うお店に入る。店の奥から若い女性の店員さんが出てきてくれた。
「いらっしゃいませ~。何をお探しですか?」
「それが、迷ってるんですよ。どういうのが似合うのか分からなくて」
「なるほどなるほど。では、少々お待ちください」
お姉さんが店の奥に引っ込んだかと思うと、すぐに紙と羽ペン、インクを持ってきてくれた。さすがはプロ。接客が丁寧ね。
近場の台に一式を置いて私の顔を集中して見つめてくる。これは、イリヤの特徴なんかを話していったほうがいいわね。
「では、その方がどのような方かお伺いしますね」
「ええ。えっとね、私に仕えてくれているメイドの女の子なんだけど……」
「……お待ちを。もしかして、貴女様はリリ様ですか?」
うわっ、バレた。せっかく正体がバレないように怪しさ満点のフードを深く被ってたのに。いや、ペルスティア領でメイドを雇ってる家なんて有名なのはうちくらいね。
どうせならと素直に認める。すると、お姉さんが困り始めちゃった。
「その、当店の装飾品では、リリ様がお求めになるようなものはないかと……」
「え~? でも、そんなことないかもしれないよ。ちょっと見せてよ」
「分かりました。では、リリ様のメイドさんということはイリヤ様でよろしかったですか?」
そんなことまで知られてるの!? 驚きなんだけど!
……って、思ったけどよくよく考えたら私もイリヤもこの町には冒険者として何度も来てたわ。そりゃあ、よく知られているわよね。
イリヤであることも伝えると、お姉さんがクスクス笑う。
「やっぱりお似合いのお二人……」
「え?」
「いえ、なんでもございません。それでは、少し探してきますね」
お姉さんがいくつか商品を持ってきてくれる間、私は指輪を置いてある場所に移動する。いつか、こんな指輪を嵌めてみたいって思うときがあるの。もちろん相手はイリヤね!
それにしても、案外安いわね。いまだに日本の女子高生の金銭感覚から抜け出せないから、私が今まで貯めてきたお小遣いと冒険者として稼いだ報酬の大半を持ってきたのだけど、お値段は十個くらい買ってもまだお釣りがくるくらい。これなら、ちょっとお高い宝石が付いたものを買っても大丈夫そうね。
そんなことを考えていたら、お姉さんがいくつか商品を持ってきてくれた。
「当店がお薦めするのはこちらの品々ですね。イリヤ様への贈り物ということで、宝石を加工した一級品を選ばせていただきました」
「ありがとう。ちょうど宝石付きにしようって思っていたから」
持ってきてくれたものを見ていく……と、思ったけどそんな必要なかった。だって最高にいいものを見つけちゃったからね!
それは、美しく輝くネックレスだった。アメジストと加工が難しいダイヤモンドを丁寧にカットして交互に散りばめている、素人目に見ても職人さんの腕が光る至高の一品。そのアメジストとダイヤが、イリヤの紫紺の瞳と白銀の髪色を想像させるようで言葉にならない声が漏れる。
これはもう即決以外の手はない! これにしましょうか!
「このネックレスをもらえますか?」
「はい、ありがとうございます! ……わざわざ仕入れておいて正解でした……」
「はい?」
「いえいえ。では、こちら金貨百五十枚になります」
代金と一緒にチップと感謝料として多めにお金を支払う。この小さな心遣いが領地を発展させるために大切なことだってお父さんが言ってた。ケチ貴族と違って、私の家はちゃんと出すところには出すの。
丁寧なラッピングもしてもらい、お礼を言ってネックレスを受け取って帰る。さぁ、これでプレゼント問題は解決だね。当日が今から楽しみになってきたよ。
誰の邪魔にもならないところで飛行魔法を使う。大切なネックレスを落とさないように異次元に仕舞い、勢いよく屋敷まで帰って行くぞー!
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