第14話 <毒の治療をしないとね!>
朝から体が重い。そして、頭が痛くて熱い……。苦しいぃ……。
風邪ってわけでもない体調不良。皆が心配してくれて、お医者さんも呼んでくれた。今、部屋にはお父さんとグラハムさん、それからルフレンさんとリリスとイリヤがいてくれている。
「先生。リリ様の容態は?」
心配そうにイリヤが聞いている。いや、心配そうなんじゃなくて本当に心配してくれているのね。昨日までは元気だったのに、今日いきなりこんな状態だものね。
お医者さんが唸っている。そして、席を立って結論を述べた。
「リリ様のこの症状は恐らく、天然毒によるものですね。妙なものが混ぜられていて、毒性が偶然強力になっています」
「なっ!? それは、誰かがリリを暗殺しようとしたということか!?」
お父さんが血相を変えてお医者さんに詰め寄っている。娘の命が狙われているとなれば、そりゃ焦るか。
でも、お医者さんは首を振った。
「もしリリ様の命を狙った毒なら、もっと本格的なものを使うはずです。この毒は偶然毒性が強くなっただけで、あまりにも弱すぎる。恐らく、何かしらの拍子に食物に紛れた毒が調理法によって強くなってしまったか、はたまた何らかの外的要因で体内に毒が入ってしまったかだと思います」
どうしましょう。心当たりがあるのだけれど……。
お医者さんが屋敷を出て行く。お父さんたちがその見送りに行っている間、部屋には私とイリヤが残った。
「ねぇ、イリヤ……」
「どうしました?」
「もしかしてこの毒ってさ。あのゴブリンの矢に塗られていた、なんてことはないかな?」
それくらいしか考えられないのよね。もし食事が原因なら、お父さんとイリヤが同じ症状に苦しんでいるはずだし、私だけってなるともうあれしかないでしょ。
イリヤがハッとした表情で私を見る。いや、まさか私もゴブリンの矢に毒が塗られているなんて思わなかったけどさ。
さて、問題は解毒よね。普通の毒物ならすぐに解毒できる薬草とかあるのだけど、こう、魔物が作った毒となると怪しいかも。
なんて思っていたら、お父さんとグラハムさんが部屋に帰ってきた。
「リリ様、もしかしての話なのですが、魔物由来の毒ではありませんか?」
「やっぱりグラハムさんは分かるんだ。多分、これはゴブリンの矢に塗られていた毒だと思う」
「暗殺ではなかったか……それは安心だが、その、大丈夫なのか?」
「ゴブリンの毒ですと、恐らく巣穴周辺の適当な毒薬草を混ぜているのでしょう。その分解毒は非常に困難です」
「そんなぁ……」
「あ、ですが、女神の恵みという薬草ならあらゆる毒を癒やしてくれるのでそれなら……」
女神の恵みかぁ……あれ、かなりレアな薬草なのよね。在庫、あったかなぁ?
「お父さん。うちに在庫あったっけ?」
「先日、騎士団の一人に最後の一つを使ってしまったな。どうしたものか……」
「その薬草、近くで採集できませんか!?」
「ふーむ。北にある森なら採れるかもしれないが……あそこは強い魔物も出やすいからなぁ」
確かに、お父さんの言うとおり北の森は危ないしね。なんでも、つい最近出現する魔物が強くなったみたいだし。実際、国の騎士団が何度か討伐に行ったけど結構ボロボロにされてたしね。
イリヤが俯いて部屋を出て行く。心配そうにリリスもついて行っちゃった。なんか、二人いないと寂しいな。
「おっとそうだ。確か……」
グラハムさんまでどこかに行っちゃった! 私とお父さんの二人が残される。
「まぁ、なんだ。もっと大人しくしろと神様に言われてるんだろう」
「えー。この矢だってイリヤを庇って受けたものだし、なにより村の人たち助けたんだけど?」
「それはまぁ、うん……」
どことなく困ったような返事をするお父さん。でも、これは暴れすぎたことに対する罰みたいな意味合いもあると思って……。
いや、ない! 私女神様に魔王倒してくれって言われてるじゃん! 怪我で落ち着けじゃなくて、もっと怪我するほど戦えとか言われそうだ!
女神様に唸っていると、グラハムさんが帰ってきた。その手には、黄緑色に薄ら輝く薬草が握られている。
「我が家の倉庫に眠っていました。どうぞこちらを」
「え! ありがとう!」
早速持ってきてくれた薬草を煎じて飲む。さてさて、これで治るかな?
お椀を持って一口……マッズ! なにこれマッズ! 下水道の水と生ゴミを混ぜて炎天下で放置して腐らせたみたいにマッズ! そんなもの飲んだことないけどマッズ!
吐きそうになりながらもどうにか飲み干す。体の不調は治ったけど、別の体調不良が起きている。具体的に言うと、ものすごく気持ち悪い吐きそう……。
見ると、お父さんがお腹を抱えて笑っていた。娘が暗殺されそうになってるかもとなってたときには心配してたのに、薬草で苦しむときは笑うとか鬼め……。
でも、どうにか毒は消えた。これで一安心かな。イリヤに報告しに行こう。イリヤ、どこに行ったのかなぁ?
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