第13話 <レッツ農作業!>
連れ去られた人たちを連れて村まで帰ってきた。村長さんたちは私たちを待ってくれていて、姿を見るなり駆け寄ってきてくれる。
「おぉ! リリ様ご無事で!」
「たっだいまー! 皆助けてきたよ」
「な、なんとお礼を申していいか……!」
「お礼ねぇ……じゃあ、収穫の手伝いに来たことだし、村長さんたちが収穫した野菜とかもらっていいかな?」
「お安いことです!」
二人を村長さんの奥さんに預けた。さーて、やっちゃいますか! 袖をめくって首にタオルを提げて、農具を持っていざ畑へ! エリーさんっていう、弟くんと二人暮らしの女性の畑を手伝わせてもらおう。
たくさんの野菜が収穫時ね。あっ、今が旬のペルビーンズって豆がたくさん実ってる! この豆、とても美味しいのよね。
調理方法もいろいろあって、シンプルに塩茹でにしてもよし、ちょっぴり辛めのスパイスで炒めてもよし、お米と一緒に炊き上げてもよしの万能食材! お父さんも好きらしくて、よく夜にワインとペルビーンズの塩茹でを持ってベランダでグラハムさんと一緒に楽しんでるのを見かけるよ。
エリーさんが豆を収穫していくから、私はジャガイモでも収穫しましょう。
これ、名前も見た目も地球にあったジャガイモと同じなんだけど、細かなところでちょっと違うのよ。地球のジャガイモは、芽や緑色の皮の部分に毒があったけど、このジャガイモは全体に毒があるから毒抜きが必要ね。毒抜きと言っても皮剥いて茹でるだけでいいのだけど。手間の分味は保証するわ。
スコップで地面を掘り返していく。このやり方だと、地中に埋まったジャガイモを簡単に掘り返すことができるから気持ちいいの。ボコッて土が盛り上がるのは見てて楽しいしね。
収穫期に入ったジャガイモをすべて掘り返していく。切り離しの作業は後からでいいわ。今はとにかく引きこもりを太陽の下に引っ張り出すことを優先しましょう。
ん? 一つだけおかしなものがあるわね。でも、いっか。これも抜いちゃえ。
『――てめぇなにしてくれとんじゃあ! おんどらぁぁぁ!!』
うわ、最悪。オンドラゴラを抜いちゃった! てか、なんで畑にこんなものが生えてるのよ!
あっ、オンドラゴラってのは魔物と植物が意味分からない感じに混ざり合ったものね。引っこ抜くと厳つい怒声を発するから嫌いなのよ。
ちなみに、ファンタジーではお約束のマンドラゴラもこの世界にはあるらしいわ。私は処理されたものしか見たことないけどね。なんでも、特殊なやり方で引っこ抜かないと悲鳴を発して聞いた者を殺すか石にするかにするらしい。これを聞いたとき、どっちも死ぬじゃんって思わずつっこんじゃったよ。マンドラゴラに比べたら、このオンドラゴラがどれだけ平和的な植物か分かるね。
とりあえず、いまだに煩いオンドラゴラは締めちゃいますか。黙らせる方法は簡単で、口みたいに裂けたところのちょっと上を刺すだけ。そしたら、はい。黙った。
ちょっとしたハプニングはあったけど、すべてのジャガイモを引っこ抜くことができた。後は切り離しの作業だね。
小刀で一つ一つ切り取っていく。と、その作業中に背中に衝撃を感じた。
「リリお姉ちゃんだー! いらっしゃーい!」
「おっとと。元気だねエイルくん。ただ、お姉ちゃんが刃物持ってるときは危ないから急に抱きつかないでね」
「うん! ねえお姉ちゃん! 遊ぼう!」
腕を引っ張る男の子の名前はエイルくん。エリーさんの弟なんだ。百合を愛する私だけど、なんかショタにも目覚めちゃいそう……。
遊ぼうとせがむエイルくん。でも、そんな彼をエリーさんが引き剥がした。
「こら。リリ様に遊んでくださいなんて頼んじゃダメでしょ」
「別にいいよ。でも、ごめんねエイルくん。また今度いっぱい遊ぼう?」
「ちぇー。分かったよ。約束だよ」
残念そうにエイルくんが走って行った。その後ろ姿を見ながらエリーさんが頭を下げる。
「申し訳ありません。あの子、リリ様が好きみたいで……」
「子どもは元気が一番だよ。気にしてないから大丈夫」
そう言って、私はジャガイモの切り離し作業を続けた。
すべての作業を終える頃には、もう空が赤くなっていた。これはそろそろ帰らないと。
村の人たちからたくさんの野菜を分けてもらって、私たちは帰り道を歩く。いやー、今日は疲れちゃったな。
「お疲れ様でしたリリ」
「ありがとね。……ごめんね、魔物討伐に付き合わせちゃって」
「いえ。私こそ、本当に申し訳ありませんでした。腕、大丈夫ですか?」
矢が刺さった腕か。ちょっと痛むけど多分大丈夫でしょう。ただ、問題は……。
「イリヤ。帰ったら一緒に怒られてね?」
「もちろんです。ただ、私もお父様に怒られると思うので保証は……」
「私が弁明するよ!」
二人で笑う。のんびりと屋敷への道を歩きながら、リリスにとうもろこしをあげる。
ちなみに、屋敷に帰ると私はお父さんに三時間、イリヤはグラハムさんに四時間怒られたのは内緒ね。
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